スタートアップは製品開発を外注すべきか

次の記事

Web 2.0ライブ情報:マイクロソフトがSpindexを発表、「あなたのソーシャルな個人用インデックス」

スタートアップ諸君から製品開発をアウトソーシング(外注)すべきかどうか聞かれた時、私は概ね反対する。どうしても節約が必要な時に、テストの一部や補助的製品の開発を外注するのはよいが、コア製品はいけない。これは、革新技術の開発者は互いに交流し、顧客や市場の近くにいる必要があるからだ。私の考えでは、アウトソーシングは企業のIT部門や海外部門を持つ大企業のためのもので、小さなテク企業のためにはない。ことことは3年前にBusinessWeekのコラムに書いた。また、テクノロジー業界がアウトソーシング市場で15%以上を占めたことがないことにも言及した(銀行、その他金融、保険が40%、通信が17%、製造が12%)が、これにはMicrosoft、Adobe、Ciscoなどが海外拠点で実施している製品開発も含まれている。

これをBusinessWeekに書いた時、アウトソーシング会社、GlobalLogicのCEO Peter Harrison ― 実は私の親友で何年かにわたる教え子でもある ― が怒鳴りこんできた。彼は私が間違っていると言い張り、それを証明するために彼の顧客に私を紹介すると言った。私は相手にしなかった(よくあることだ)。しかしPeterは執拗だった。先週私に縄をつけて彼のユーザー会議に連れて行き、GlobalLogicの出資者であるSequoia CapitalのMike Moritzとディナーを共にした。Peterは私を彼の顧客にも何人か引き合わせた。

MoritzがGlobalLogicやアウトソーシングについてやたらと強気であることに驚かなかった。VCはいつも自分の行った投資を吹聴するものだし、ポートフォリオ企業にはアウトソーシングで経費を節減するよう圧力をかけることで知られている。しかし、小さなシリコンバレー企業が、ウクライナのキエフやインドのバンガロアといった場所で研究開発を行うことによって、生産性向上やコスト削減を実現していることを自慢していると聞いて少々驚いた。そして非常に驚かされたのは、GlobalLogicがこの不況の中でいかに急速に成長しているかだった。同社は世界中で3000人のソフトウェア開発者を雇用し、つい最近トップクラスの投資銀行から中間投資を受けた(通常これは会社がIPOまであと一歩という意味である)。

それでもなお私は、スタートアップにとって中核となる開発業務をアウトソーシングすることが良い戦略であるとは納得できない。私が技術者だった頃、ロシアのセント・ペテルスベルグとノボシビルスクに研究開発を外注した。しかし、このFastCompanyの記事を読めばわかるように、私のテクノロジーはそこで生まれ、そこは私の開発チーム全員が住む場所だった(そして私は他では決して見つけることのできないスキルを持つ優秀な元KGBの数学者を雇うことができた)。一つのプロジェクトで働く開発チームが違う場所にいると、イノベーションを起こすのがずっと難しくなる(もちろん、これがオープンソースのやり方だということは知っているが、それは別の話だ)。これから私の理由を詳しく述べると共に、GlobalLogicのCTO Jim Walshに、なぜ彼が私は間違っていると思うかを語ってもらう。

これがアウトソーシングが理にかなっていないと私が言う理由の数々だ。

1)コミュニケーションと顧客ニーズ。商品開発には顧客ニーズの深い理解とユーザーとの多大なインタラクションが必要である。研究開発メンバーを顧客から離しておくことは、市場ニーズに合った革新的商品を開発する能力を制約する。

2)部品はぴったり合う必要がある。複雑なソフトウェアは、肉切り包丁よりもスイスアーミーナイフに似ている。刃と栓抜きとネジ回しは精密にかみ合っていなければならず、別々に作ることはできない。同じように、ソフトウェア開発チームのメンバーは密接に繋がって仕事をする必要がある。

3)マネージメントの帯域。複数の場所、異なる時間帯に分散したチームのマネージメントは、一箇所に集まったチームのマネージメントよりもずっと困難である。追加のマネージメント層が必要となることも多い。

4)少人数の方が多くを生むことがよくある。技術の世界では、開発チームの規模拡大が生産性向上に繋がらないことがある。小さなチームが最も革新的で生産的であることが多い。

6)スキルの稀少性。テク企業が探し求める専門化したスキルと思考は概して見つけにくい。例えば、インドにはコンピューターゲームの複雑さを身をもって理解できるプログラマーがいない。なぜなら高速インターネット接続を使える人が少ないからだ。インドでは優秀なプログラマーは、InfosysやWiproなどの有名企業に集まり、小さなスタートアップには行かない。

6)知的財産権の保護。これは特に中国では重要な問題である。海賊行為が横行する当地で企業秘密を守ることがほぼ不可能だ。従業員が会社を辞め、外国人である雇い主と直接競合するベンチャー企業を立ち上げることは珍しくないが、法律はほとんど守ってくれない。執行されないからだ。

以下にJim Walshからの反論を載せてある。公平のためにお断わりしておくと、これは彼の会社の宣伝のようにみえるかもしれないが、それは私がGlobalLogic社のビジネスモデル全体をこき下ろしたからである。というわけで一つの意見として読んでほしい。

「アウトソーシング」という用語を、サードパーティーに丸投げするという意味で使っているなら、これをコア技術の開発に使うことを私は弁護しない。しかし、自社に不足していたり探すのが困難あるいは非常に高価である特殊スキルを持つ会社と協同で作業をして、共通する成果に向けて目標を設定するのであれば、私ははっきりと推奨する。研究開発のグローバル化に失敗する会社は、パートナーの選択を誤るか(研究開発思考に欠け、中核技術に特化していないなど)、仕事を丸投げして、真の研究開発が必要とする密な協業や目標の一致に注力しないからだ。多くのITサービス会社が開発パートナーに恵まれないのは、コンプライアンスや効率を重視するために、革新を遠ざけているからだ。対照的にGlobalLogicは、一流の優秀で革新的なソフトウェア思考の持ち主からなるグローバルな革新ハブのネットワークを持っている。当社のソフトウェア専門家たちは、アジャイルな協業をサポートし画期的製品を市場に送り出すことに特化したプラットホームによって繋がっている。当社ではこれを、テクノロジー業界の非常に小さいものから非常に大きいものまで含む「人名録」として、運営に成功している。以上を踏まえて、ご指摘に一つずつ答えていこうと思う。

1)コミュニケーション: すばらしい製品を作るためには、顧客に関する深い理解と優れたコミュニケーションが必要であることについては全く同意見だ。私たちは、製品のオーナーを中心メンバーとした小回りのきく小さなチームを作るのが一番だと考えている。そしてチームを分散される場合には、次のことか必須となる。(a)チームを分割して各地域ごとに製品オーナーを置く、あるいは(b)製品オーナーが毎日数時間技術チームと時間を合わせ、成果物のレビューや定期的なフィードバックを行う。従来これを行うことは困難だったが、最新のコミュニケーション手段と開発プラットホームによって、遠距離協業がやりやすくなった。時には、同じ場所にいるチームよりもコミュニケーションの質が改善されるケースもある。

2)統合:密に結合した製品を分散したチームメンバーで開発することは、かつては難しかったが、最新の開発ツールとアーキテクチャーによって、最も複雑な製品を分散チームで開発することさえ単純明快になってきている。オープンソースプロジェクトの多くが、この発展の生きた証拠である。

3)マネージメント:分散チームを管理するマネージャーは新しいスキルを身に付ける必要がある。しかし、一たび熟達すれば、一箇所に集中したチームより高い成果を上げることが多い。例えば時差を利用して、昼間に開発して、そのコードを夜(現地では昼間)テストすることが可能になる。あるいは、一箇所では揃えられない特殊スキルを活用するなど、通常では集められないような高度なスキルを持ったチームを構成する機会が生まれる。重複した時間を作るのが大変なら、米国の時間帯で働く中南米のチームを活用すればよい。

4)才能:一人のすごい開発者が多くの並みの開発者より成果を上げることが多いのは十分承知している。だからこそ私は、チームメンバーの質は妥協しない、とりわけ新製品の開発において。しかし、今日ではアルゼンチン、中国、ヨーロッパ東部、インド(いずれも当社がイノベーションハブを置いている地域)で、シリコンバレーと同等の才能、時には同等の経験を持つ革新的な開発者を見つけることが可能だ。重要なのは、設定を高く置き、地元で開発するのと同じように一人ひとり選んでチームを作っていくことだ。

5)スキル:かつては、専門スキルを海外で見つけるのが困難であった時代もあったが、もはやあてはまらない。私が25年前にこの業界に入った時、英国でのスキルは米国より10年遅れていた。今日ではスキルの時間差はない。むしろ、バンガローラやキエフで、多くの米国都市よりも前を行くスキルの持ち主が見つかることさえある。

6)知的財産権ごくわずかの製品を除いて、知財権のリスクは現状を守りたい会社によってまかれた囮である。当社が200社以上の企業向けに1000を超える製品を開発してきた歴史の中で、知財権盗難に遭ったことは一度もない。会社にとっても従業員にとっても、これが意味のあるリスクとなるのは容易なことではない。結局多くの企業が下した結論は、自社の知財権を本当に守るためにはライバルより速く動くしかないということであり、当社はもちろんそれを支援している。

最後に、今やスタートアップ企業でさえグローバルな思考を持ち(マイクロ多国籍企業になる)、世界中で使える製品を作る機会をつかむことが必要な時代となったことは紛れもない。つまり、アメリカの消費者の要求に焦点を合わせるだけでは十分ではない。グローバルなチームを持つことは、グローバルなニーズに答える製品作りを保証する上でもすばらしい手段である。

最後のグローバリゼーションの部分は全く同じことをMike Moritzが講演で言っていた。私も同意する。しかし、Jimは他の問題については私を納得させていない。もっとも、私がCTOやCEOだった頃とは時代が変わっているので、私の情報が古い可能性がある。だから読者のみなさんの成功談、失敗談、そしてこの話題をどう思うかをコメント欄で知らせていただくのを楽しみにしている。

編集部より:ゲストライターのVivek Wadhwaは起業家出身の学者である。現在UCバークレー客員教授、ハーバード法科大学院上級研究員、およびデューク大学起業・研究商用化センター研究担当ディレクターを務める。Twitterでは@vwadhwaでフォローできる。】

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)