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Guy-Kawasaki

MBAはスタートアップにとってプラスかマイナスか?

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その昔、私は本当に苦しい選択を迫られた。ニューヨーク大学のMBAに投資するか、大卒資格で何とかするか。当時の私は結婚したばかりで妻のおなかには子どもがいて貯金もあまりなかった。MBAには何万ドルという費用が必要で、取得までには何年もかかる ― 特にパートタイムだと。しかも私には生活のためにコンピュータープログラミング以外のことをすることが想像できなかった。それならどうして金融やマーケティングや業務管理を学ぶ必要があるのか疑問に思った。結局私は、ビジネスの世界に対する理解が浅かったこと、そして可能な限りの教育を受けたいという根深い願望から、入学を決意したのだった。妻とふたりでニュージャージー州ノースベルゲンの小さな1ベッドルームのアパートに越し、何とかやりくりした。

ビジネス修士を取ってから数年の間、私は果たして自分が正しい選択をしたのか思い巡らせた。CS First BostonのIT部門で立派な職を得たものの、私はそこでコードを書いたりシステムを設計するだけだった。たしかに私はBusinessWeekやWall Street Journalを嬉しく読み始めた。しかしあの経済的犠牲と家族から奪った時間は本当にその価値があったのだろうか。そうは思えなかった。

時が過ぎ、私はIT部門で昇進し始めた。プログラマーからプロジェクトリーダーへ、やがてバイスプレジデントへと進んだ。私は自分がユーザー部門や上司たちとうまくコミュニケーションを取れていることに気付いた。プロジェクトの期日を守れた。従業員たちを管理し意欲を引き出すことができた。そして私は経営幹部や取締役たちに自信を持ってビジネスプロポーザルを提示した。さらにはIBMを、私のチームが開発したテクノロジーに$20M(2000万ドル)出資するよう説得することさえできた。私たちはスピンオフしてSeer Technologiesという会社を立ち上げ、私は最高技術責任者(CTO)に就任した。そしてそれが、私の教育が真の配当を支払い始めた時だった。

スタートアップの世界は、とにかく適者生存である。ビジネスのほぼあらゆる面において自分を適応させ、持てるスキルのすべてを使わなければならない。私は開発、予算管理からマーケティング、営業、採用、企業戦略制定の手助けから法務文書のチェックにまで関わった。同時に、テクノロジーを生み出し、スタートアップにふりかかるあらゆる不確定要素と失敗にも対応しなければならなかった。

私の受けたMBAクラスの数々は、われわれのビジネスニーズに、まるでジグソーパズルのごとくはまっていくように思えた。企業財務などというわかりにくいテーマでさえ、後の投資銀行家たちとのIPOに関する議論や、自社の資本調達の役に立った。

だから私は自分のMBAが生涯最高の投資であり、私の受けた教育が成功に役立ったことに何の疑いも持っていない。それがこのTwitterでの、Guy Kawasaki(Garage Technology Venturesのマネージングディレクター)との議論の発端だった。Kawasakiはスタートアップの世界にMBAは不要であると主張している。マイナスであるとさえ言っている。彼は、私が数年前Kawasakiが書いたForbesの記事に反論すると、私が現実を見ていないと言い張った。

企業を立ち上げようという大学卒の若者にとって、今日のMBAの価値は何か? おそらく25万ドルの損失(私はMBAを持っているし、かつて大卒の若者だった)。私には会社を立ち上げるためにMBAが重要だとは思えない。それよりもっと重要な資格はエンジニアリングの学位だ。MBAならいつでも雇えるが、製品のコンセプトを作り出荷する能力がなければ、何も出来ない。

メールのやり取りの中でKawasakiは、彼にとってのMBAたちの問題は「困難な部分は分析であり洞察力に満ちたソリューションを作り出すことだと教えられていること」だという。つまり、実装は簡単で分析は難しい、と。「しかしこれは現実にスタートアップが遭遇することとは正反対だ。実装はスタートアップにとってすべてだ」。Kawasakiは、MBAはスタートアップには不向きであり、エンジニアリング系卒業者の方が合っていると確信している。

エンジニアリングの資格が重要であることには同意する。テク系スタートアップの世界に必要な一定水準の技術知識と分析能力を与えてくれる。しかし、誰もがエンジニアである必要はない。創造的なマーケティングキャンペーンを考えつく人たちや、財務管理や商品の販売をする人たちが必要だ。そして、CEOやCTOはあらゆる分野に精通していなければならない。

私の経験によると、最も成功している起業家は、強力な技術的経歴を持ち、何らかの「finishing school」に行った人たちだ(ビル・ゲーツやスティーブ・ジョブズのような大学中退者の話は別。彼らは例外中の例外)。工学士は非常に専門的な場合があり、その人の視野を狭めてしまうことがある。革新のためには、顧客と市場を理解する必要がある。成功する ― 実際に売れて影響を与える ― 製品を作るためには流通と金融も理解する必要がある。だから、技術系の下級層においてさえ幅広い教育はプラスになる。

MBAはエンジニアにとって最良の資格か? おそらく違うだろう。Duke大学で私が教えているコースの方が適していると思う。Dukeのa href=”http://memp.pratt.duke.edu/”>Masters of Engineering Managementコースは1年間のプログラムでマーケティング、金融、知的財産権、ビジネス法、経営を教える。ミニMBAのようなものだ。エンジニアは、例えばブラックショールズモデルでオプション価格を決める方法を習う必要はない。新しいタイプの金融商品を作る方法を習う必要も全くない。他にもエンジニアに必要な不足知識を得られる資格はいろいろある。テクノロジーや経営指向に限らない。心理学のような異種の学問でさえプラスになる。視野を広げ「洞察力に満ちたソリューション」を見つける方法を教えてくれるものであれば何でも。重要なのは、人がなしうる最良の投資は教育であるということだ。株式や債券と異なり、教育は決して価値を失わない。そして経験を積んだ時、その価値はさらに増すのである。

編集部より:ゲストライターのVivek Wadhwaは起業家出身の学者である。現在UCバークレー客員教授、ハーバード法科大学院上級研究員、およびデューク大学起業・研究商用化センター研究担当ディレクターを務める。Twitterでは@vwadhwaでフォローできる。】

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(翻訳:Nob Takahashi)