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TC Disruptをふりかえる―地味なSolutoが聴衆の大声援を受けたUJAMに勝った理由

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CEOのDennis Crowley曰く「foursquareはまだ完成形からみれば10%」(インタビュー動画)



先週のTechCrunch Disruptで私が非常に嬉しかったことはそこでサービスをローンチしたスタートアップのうちトップの2社が海外からの参加者だったことだ。優勝したSolutoがイスラエルに本拠を置いているし、準優勝のUJAMはドイツの会社だ。われわれのイベントにはこれまで多数の外国からの参加者があったが、優勝者はすべてアメリカのチームだった。今回、イスラエルとドイツのチームが勝ったことには個人的に大いに満足している。

審査員は大差でSolutoを優勝者に選んだ。この会社の製品はコンピュータをモニタしてトラブルを監視し、さらに解決策を教えてくれる。開発チームは過去に成功の実績があり、十分な資金を調達し、2年間もかけて開発を行ってきたという。審査員は会場の聴衆の投票も参考にして意見を述べたが、結局最後には大きな議論もなく優勝者が決定した。スタートアップというのは蓋を開けてみるまではどうなるか分からないものだ。たとえば検索エンジンのCuilは優秀なチームが巨額の投資を受けて開発したサービスだったが、リリース後、すぐさま失速してしまった。しかし、今回のSolutoは大ヒットするはずだと多くの審査員が確信した。ビジネスモデルも素晴らしかった。そういうわけでDisrupt杯を受けるにふさわしいチームだったことは間違いない。

しかし、音楽制作のUJAMが優勝者となるべきだと感じた会場の参加者、ライブストリームの視聴者が多かったことも事実だ。UJAMは誰でも驚くほど簡単に音楽を作れるとてもエキサイティングなサービスで、音楽制作のプロセスに破壊的革新(disrupt)をもたらす可能性が大いにある。ステージ上でプレゼンを行ったときには、会場から自ずと喝采や声援が飛んだ。上にその模様をエンベッドしておいたので、まだだったらぜひ見てほしい。

審査員のChris Saccaなどは、自ら立っていってメロディーを歌って試してみたくらいだ。これには聴衆は大喜びした。

UJAMを優勝者にすべきかどうか審査員の間で多少の議論があった。しかしUJAMはまだ公開ベータにさえ達していないなど、開発があまりにも初期段階だった。またビジネスモデルもはっきりしていない。たぶんそういうことはないと思うが、それでもUJAMがしくじる可能性はまだ十分残っている。

Soluto対UJAMというのは2008年のTechCrunch50でYammerが優勝したときの状況にそっくりだった。Yammerは企業向けのプライベートなTwitterクローンで、これに対抗したのがSwypeという携帯タッチスクリーン向けの画期的なテキスト入力方式だった。

YammerはSolutoと同様、一見地味な会社だった。しかし両社のサービスには大きな需要があることが明らかだった。その後Yammerは四半期毎に売上を倍増させるなど快調にビジネスを成長させている。買収なり株式上場なりで巨額の現金化を迎える日も遠くないだろう。

一方、SwypeはUJAMに似て、聴衆の心を捉えた。デモの後で審査員全員がSwype入力を試そうと 立ち上がったくらいだ。聴衆は興奮して立ち上がって声援を送るありさまだった。その模様はこちらで見られる

Swypeはファウンダーたちは素晴らしいチームで、TechCrunch50の後、大成功を収めた。現在、Swype入力ソフトは何百万台もの携帯電話に搭載されており、その台数に応じたライセンス収入を得ている。.

しかしTC50でのデモの際にはそれはまだ未来に属していた。大口のライセンス契約もまだ取れていなかったし、審査員がYammerを優勝者にふさわしいと考えるのも無理はなかった。そして今回のUJAMの場合同様、聴衆の中にはSwypeが優勝しなかったことに腹を立てる人たちが相当数いた。.

TechCrunch Disruptでは1千万ドルの投資を受け2年も開発を続けてきたチームとポケットマネーで開発を始めたばかりのチームが正面から競うという点に不満を感じる聴衆も多かったようだ。「競争を公平にするために、参加チームが調達した資金額その他に条件を設けるべきだ」という声もあった。

結論を言えば、われわれはそのような条件を設けるつもりはない。

TC Disruptの本当のメリットというのは、イベントに参加して大観衆の目の前で製品をローンチすることそのものだ。今回Disruptは会場に1700人の聴衆を集め、さらに10万人がライブストリームでビデオを見た。スタートアップがこれほど大規模かつリアルタイムで注目を集めるチャンスは世界中で他には存在しないはずだ。

これほどの観衆(その中には主要なマスコミがすべて含まれている)が集まる理由はわれわれがこのイベントを組織する方法にある。つまりマスコミを含めて、十分な資金をバックにした強力なスタートアップが製品をデモするのを見たいのだ。こうしたホットなスタートアップを締め出してしまったら、Disruptへの興味は大きく低下してしまう。もちろん一般観衆とマスコミの参加の動機は一方ではIT界の著名なリーダーや投資家の話を聞きたいためでもある。われわれのイベントはスタートアップのデモと著名人のディスカッションという両輪のバランスの上に成りたっている。そこでスタートアップの参加資格を細かく制限してしまうと、あっというまにこのバランスが崩れてしまう危険性がある。

そこで初期段階のスタートアップを支援するためには別の方法を考えざるをえない。たとえば、その場でプログラミングを行うハック・デイ(Hack Day)をイベントの最初にもってくるのもよいかもしれない。こうすれば初期段階のチームにステージに上がり、またその後のイベントにも無料で参加できるチャンスを与えられる。ハック・デイだけがなければ参加していなかったはずのエンジニアが最低300人はいたと思う。こうした中には将来のTechCrunch Disruptで製品のデビューを果たそうとかんがえているエンジニアも多いだろう。

はっきり言ってしまえば、「最優秀賞」というのは聴衆に満足感を与えるためにあるのだ。実際には最終的に誰が成功するか誰にも予測が付かない段階であっても、聴衆は「優勝者」を名指ししないでは
いられないものだ。そこで審査員に最善を尽くして優勝者を決めてもらう必要が出てくる。ときには聴衆が立ち上がって拍手喝采したチームが勝てないこともある。しかし、そうしたチームは現実世界で最終的には必ずや成功を収めることだろう。

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(翻訳:滑川海彦/namekawa01