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起業の目的は出口だけなのか?

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David ParkとEric Bahnは、Beat The GMATと呼ばれるスタートアップで、それまで2人が企業の世界で得た総額よりも多くを稼ぎ出している。事業収益は1セント残らず彼らの銀行口座に直接入る。自分自身がボスであることを喜び、営業、マーケティング、カスタマーサポート、コンピュータープログラミング、グラフィックデサインのエキスパートになり、学生がビジネススクールに行くのを助けて気分を良くし、自分たちの時間を何かを議論するためではなく何かをするために費やせる ― なぜなら誰に答える必要もないから ― ことに感謝している。どうして会社を売って、IntuitやMcKinsey & Co.などのような会社に戻って働く必要があるだろうか、と彼らは自問する。

Ryan Sit、Picclick.comというサイトを運営しているこの人物もまた、同じことを感じている。彼らのビジュアルセールサイトは月間30万ユニーク訪問者を集めて、eBayとEtsyの売り手のために何百万ドルもの販売機会を生み出し、その結果6桁の健全な収入を得ている。彼は自宅で働き、妻と2人の小さな子供たちと十分な時間を過ごしている。Ryanは何でもやりたいことができる自由を大切にしている ― 新しいウェブサイトのアイディアを実験してみることなどだ。一番やりたくないことは、資金調達や大企業との合併だ。「資金を受ければ奴隷になるし、多くの従業員を抱えるのは面倒なだけ」とRyanは言う。

ビジネススクールで教え、シリコンバレーで社会通念とされているのは、テク系スタートアップは明快な出口戦略を持ち、全エネルギーをこの最終ゴール到達のために集中することだ。言い換えれば、起業とは出口がすべて ― 会社の上場するか大企業に売ることで富を築く必要がある。どのエンジェル投資家もVCも、企業に投資する前には必ずその出口戦略を評価し、まちがっても起業家が「ライフスタイルビジネス」(究極の罪である)を構築しようと考えていないことを再確認する。VCは投資契約書の中に「証券登録請求権を要求する」などという条項を含める。こうした条項によって会社を強制的に上場させる権利が与えられる、たとえファウンダーが出口を目指すよりも、企業の利益で食べて行こうという誘惑に屈した場合でも。こうして、成長は利益よりも重要になる。目的地 ― 出口 ― が、旅よりも重要になる。そして従業員は終点に達するための手段に過ぎなくなる。

しかし、そうあるべきなのだろうか。テクノロジー起業家で戦略コンサルタントのSramana Mitraが重要な疑問を提示している。「方程式の中から、出口という発想を除いたらどうなるか … 投資家と起業家がもっと違うモデルに合意したらどうだろう ― 配当を分けあうモデルに」。彼女によると、計算は単純だ。50万ドルの投資によって、年商1000万ドル利益率20%を続ける会社の設立を手助けすることができれば ― これは十分可能である ― エンジェル投資家は数百万ドルの配当を手にすることができる。そして起業家は、長い期間にわたって育て、「楽しむ」ことのできる会社を築くだろう。

これは、私の知っている多くの起業家にもあてはまることだ。たしかに、友人の中にはきわめて野心的で、GoogleやZyngaを作ろうと試みる必要のある人たちもいる。しかし、その殆どが、生活に困らず、学び、成長し、起業の旅を「楽しむ」ことのできるライフスタイルビジネスを作ることに喜びを感じるだろう。投資家に新しいCEOを連れてこられたり、会社を誤った道に導かれたりする恐怖と共に生きることよりも、ゆっくりと着実に富を築くことの方を好むだろう。このZapposのTony Hsiehの暴露的インタビューを見れば、最も成功している会社のファウンダーでさえ直面するプレッシャーがわかるだろう。

Sramanaは1M/1Mと呼ばれるプログラムを開始した ― これは100万人の起業家が収益100万ドルを実現するべく、自己資金集め、顧客選び、ポジショニング等の基本を教えるものだ。これを、一連のオンライン戦略会議を通じて行う ― 一種のリアリティーショウ番組のようなもので、1セッションにつき5人の起業家をコーチし、それを最大1000人が視聴する。また、Sramanはエンジェル投資家に対して、利益を上げ配当を出すことができるが次のGoogleの規模になることはないだろう会社を、もっと注目するよう説得しようとしている。

「楽しむことのできる」会社がすべて、Sramanaが育てている会社のように小さくなければならないのか。もちろんノーだ。Hannon Hillの例を挙げよう。この会社は、Cascade Serverというウェブコンテンツ管理システムを開発している。David Cummingsが会社を起こしたのは、彼がDuke大学の学生だった2000年代終りのことで、収益600万ドル以上の会社へとスピンオフした。従業員は51名。設立以来毎年成長を続けている、と彼は言う。共同ファウンダーはおらず、出資者もなく、出口を見つける意志もない。Davidはその利益の大部分を成長のための投資しているが、それは1億ドル企業を作る可能性考えているからだ。そして「最高の企業カルチャー」を持ち、自分に「立派な」給料を払い、楽しいプロジェクトで仕事ができる会社を作ることが目標だ。

そして、ノースカロライナ州CaryのSAS Instrituteである。Jim GoodnightとJohn Sallが1976年に設立した統計・顧客管理用ソフトウェアの会社は、収益性の高い$2.3B(23億ドル)企業へと成長した。数年前Jimが会社のキャンパスを見せてくれた時、同社が収集してきた稀少な芸術作品と並んで、SASが従業員に提供している福祉制度 ― 敷地内保育所2ヵ所、従業員用健康管理センター、5万8000平方フィートのリクリエーション&フィットネスセンターを含むウェルネスプログラム、従業員の両親のための「高齢者介護」プログラム、全休憩室にある飲み物やスナック菓子等 ― に大いに誇りを持っていた。SASが全米で最も働きやすい会社としていつも評価されるのも当然である。Jimは、従業員の福祉を利益に優先させることに関して、誰に謝る必要もない。その結果、従業員たちは勤勉と献身でそれに報いる。SASの離職率は業界最小だ。

私は、ライフスタイルを必要以上に美化しているかもしれない。利益を上げる会社を作ることは決して容易ではなく、そこには多くのリスクがある。耳をそばだて続ける抜け目のない投資家の介入がなければ、会社は急速に時代遅れとなる恐れがある。テクノロジーの変化は非常に速いので、一夜にして頂点からどん底に落ちることもある。David ParkとEric Bahnが、競合GMAT試験対策会社のKaplanやThe Princeton Reviewなどから、まともな買収交渉を持ちかけられたなら、私は売ることを薦める。銀行口座に何百万ドルかあれば、万が一失敗した時に家族を犠牲にすることなく、新しいビジネスを立ち上げるぜいたくができる。経済的安定が得られた時には、Jim Goodnightの道をたどればよい。

さらに私は、起業家たちの野望を削ぎたいとも思っていない。望みは高く持つべきだと言いたい。私が指摘するのは、正しい価値を持った会社を作れば、出口だけに焦点を合わせるよりも、成功して旅を楽しめる可能性が高いということ ― そして、少しばかりの野望を幸福と引き換えても構わない、ということだ。

編集部より:ゲストライターのVivek Wadhwaは起業家出身の学者である。現在UCバークレー客員教授、ハーバード法科大学院上級研究員、およびデューク大学起業・研究商用化センター研究担当ディレクターを務める。Twitterでは@vwadhwaでフォローできる。】

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(翻訳:Nob Takahashi)