Pandoraに見るインターネット音楽ビジネスの厳しい経営構造–海賊サイトが流行るのも当然?

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このゲスト記事を書いたMichael Robertsonは、デジタル音楽ビジネスを12年経験しているベテランだ。彼はデジタル音楽サイトの草分けMP3.comのファウンダ/元CEOである。現在の彼は、音楽ロッカー企業MP3tunesのCEOだ。彼のGizmo5がGoogleに買収されてから以降、最近まで彼はGoogle Voiceのアドバイザーだった。

Pandoraは、とても人気のあるWebラジオサービスだ。同社の公開情報によると、採算に乗ったのが2009年の第四四半期だ。下の表は、Pandoraの情報と、すべてのWebキャスター(Web上のブロードキャスター)が必ず払う使用料、そしてカリフォルニアのテク系スタートアップの標準経費から計算した、Pandoraの2010年の業績予測だ。

収入
売上 $100,000,000 Pandoraの2010年の売上予測
営業コミッション $15,000,000 標準営業コミッション15%
純売上 $85,000,000
経費
録音使用料 $49,100,000 下記*の録音使用料の計算を見よ
パブリッシャー使用料 $2,000,000 総売上の2%
人件費 $18,000,000 社員180×100,000/年(下記**を見よ)
データセンター $6,000,000 500,000/月
資本支出 $6,000,000 データセンターと社員用機器
$6,000,000 保険、報道、マーケティング
経費合計 $87,100,000
純売上 $85,000,000
経費合計 $87,100,000
利益/損失 $2,100,000

Pandoraの2010年

Pandoraが無駄のない経営に努めた結果としての2010年は、損益ほぼとんとんという予測になる。売上が上の倍以上になれば、とんとん、またはわずかに黒字だ。財務状況に最大の影響を与えるものは音楽の使用料であり、それが売上の大半を食う。2009年にPandoraは3000万ドルの使用料を払ったが、それは総売上の約60%に相当する。今年は、一つの曲を一人のユーザに提供するたびに使用料が発生するから、昨年よりは相当高い額になる。ただしそれは単純なパーセンテージでもなく、一定の金額でもない。ユーザ数の増大に比例して使用料の支払いも増えるから、2009年から2010年にかけて売上が倍増という、この規模の企業としては偉大なる成果を上げたとしても、明確な採算ラインには到達しない。

2010年以降

Pandoraが合意しているユーザ一人当たりの使用料率は、今後の4年間で各年に10%上がる。これは1曲あたりのレート、つまり、1曲を一人のユーザに対し1回再生したときのレートだ。ラジオの場合の音楽使用料率には’スペクトルバイアス(spectrum bias)’という不条理な制度がある。すなわち曲を聴取者に送信するために使う周波数帯によって、料率が大幅に違うのだ。30–300 MHz (FMラジオ)なら料率はゼロ、2,332.50-2,345.00 MHz (XMのような衛星ラジオ) では総売上の15%、インターネットの2.4 GHz、WiFiの5 GHz、あるいは携帯電話なら料率は50-60%だ(これがPandoraのケースに該当する)。

今すでに唖然とするほどの格差があるにもかかわらず、レコード会社の団体SoundExchangeはCopyright Royalty Boardに、PandoraのようなWebキャスターに対する2011-2015年の料率を倍以上にすることを申請している。Pandoraの場合は料率が年に10%ずつ上がるという契約になっているから、この期間には影響を受けないが、それ以降になるとレートの大幅アップを迫られるだろう。

インターネット企業の多くは、成長とともに、より効率的な経営を身につけるものである。大きくなると、規模の経済(顧客の増大)の恩恵に与る。また、コンピューティングもネットもストレージも、相対費用が下がる。Pandoraも技術関連の経費についてはこの恩恵に与るはずだが、音楽の使用料があまりにも大きいからそれほどのメリットはない。

Pandoraの経営は巧妙である。同社はこの業態をほぼ10年経験し、その間に1億ドル近くの資金を調達した。しかし、経済の現実から自由になれたわけではない。それどころか同社は、議会に”rate parity”(平衡レート)の法制化を要請したほどだ。古くからのラジオも、衛星ラジオも、そしてWebラジオも、レートは同率にすべき、という要請だ。これが実現したら、どの周波数帯で操業していても使用料は同額になり、スペクトルバイアスはなくなる。

ビジネスとして見た場合には、Pandoraにはポジティブな属性が数多くある。登録ユーザが5000万人いる。ブランドは有名かつ好評だ。サービスはその使いやすさで誰からも賞賛され、顧客の満足が利用の増大に結びついている。2010年に同社は、数十億分(ふん)の音楽をWebキャストするだろう。しかしその一分(いっぷん)一分で経費も累積していく。Pandoraが長期安定的な黒字企業を築くためには、この使用料の総額を下げる方法を編み出す必要がある。

* 使用料の計算: Pandoraは2010年に、曲のごくわずかな部分をかけただけでも0.097セントを払わなければならない。音楽使用料の構造分析がmichaelrobertson.comにある。Pandoraは’放送’した曲数を公開していないが、2009年に支払った使用料は2800万ドルだと言っている。2009年に同社の1曲あたりの使用料は0.093セントだから、送信した曲数は298億曲だ。Pandoraの2010年の前年比成長率を70%と仮定すると、同社は506億6000万曲を再生し、録音に対する使用料を4910万ドル払わなければならない。

** 人件費の計算: Pandoraは12の事業所に180名の社員を抱え、うち80が営業だ。社員一人当たりの経費10万ドルは、健康保険や休暇、人事課(部)の費用、事務所費などを含めた場合の、テク系企業の最低標準額だ。管理がゆるいと、あっさりと、もっと大きな額になる。また80名の営業は、ベースが低くてコミッションが高いという給与構造だろう。

この記事を気に入った読者は、前回のTC Teardown: Chegg Is A Money Machine(教科書レンタルのCheggは儲かっている)も見てください。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))