ぶっこ抜きクローンはみっともないが、GoogleがFacebookに対抗するにはそれしかない

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小さな企業はちょくちょく大企業の先発サービスをクローンしている。ここで私が「クローン」といういうのは単に「基本的なアイディアを真似する」ことにとどまらない。文字通りいっさいの機能をぶっこ抜きでコピーすることも含まれる。こうすれば開発時間に加えてユーザー・テストの時間も節約できることは間違いない。

大企業、ことにIT系大企業はさすがにそういうデッドコピーはあまりやらない。経営陣にとっても開発チームにとってもプライドに関わるし、倫理的にも問題がある。デッドコピーというのはまっとうなやり方ではないと考えられている。

その代わり、オリジナルを少しいじくり回し、あちこちにささいな機能を付け足して新しいサービスとしてローンチするのが普通だ。

ところがこういうやり方で作られたサービスはたいていの場合うまくいかない。たとえばMark Zuckerbergがいかにそう勧めても、FacebookのユーザーはTwitterのユーザーのように振舞うようにはならない。Google Buzzは、当初のプライバシー取り扱い上の不手際がなかったとしても、仕組みがあまりに複雑すぎて一般ユーザーが喜んで使うようなサービスにはなるまい。またそれでなくても混雑しがちなメールボックスによりいっそう大量のジャンクが流れて込んでくるのをユーザーが歓迎するとも思えない。

しかしぶっこ抜きのクローンはうまくいく。90年代にMicrosoftはNetscapeをそっくりコピーしたブラウザを作って無料でばら撒いた。そしてNetscapeをノックアウトすることに成功した。ウェブメールとインスタント・メッセージのシステムはMicrosoft、Yahoo、Google、AOL、どれもほとんど同じようなものだ。そしてこれらのサービスの間で市場シェアを分けあっている。誰かがメールとIMにもっといいやり方を発見したらユーザーは一斉にそちらに移るだろうが、まだ誰もそういうものを発見していない。

といういうわけで、GoogleはそろそろFacebookのクローンを作るべきときだ。なまじ格好を付けたGoogle BuzzではTwitter、Facebook、Yelpに対抗するのには力不足だ。Googleはいさぎよく白旗を掲げてFacebookを細部までクローンすべきだ。そうしなければGoogleが戦場にたどり着く前に勝負は決まってしまう。

だからGoogleが最近まさにその方向で動いていると聞いて、私は当然だと思った。Googleが取り組んでいるのは、OrkutでもなければBuzzでもなく、Facebookの機能に追いつき、追い越すことだけに集中した100%新しいソーシャルネットワークだという。

しかしGoogleはなぜそういうことをしなければならないのか? Googleの現状に心配の必要はないように思える。依然として急成長が続いているし、年間売上は$24B(240億ドル)もある。Googleは検索広告市場に君臨している。この検索広告というのは人類の歴史上、税金、麻薬、買春の次に儲かるビジネスときている。Facebookは収益ではそう簡単にGoogleに追いつくことはできまい…。

いや、本当にそうだろうか? われわれの情報源によれば、Facebookプラットフォーム上のセルフサービス広告は爆発的な勢いで成長中だという。サードパーティーのもっとも楽観的な予測をも上回る勢いだそうだ。Googleも特定ユーザーをターゲットにしたセルフサービス広告を運用しているが、検索キーワードに連動させて広告を表示するシステムだ。これが信じられないほどうまく機能して現在のGoogleがある。

しかしFacebookは自分のユーザーについて、検索キーワードに依存するGoogleとは比べ物にならないくらい詳しい情報を持っている。そのユーザー情報に基づいて表示されるセルフサービス広告は内容といい、タイミングといいユーザーに対してGoogleなど問題にならないくらい高い関連性を持つことになる。しかもFacebookはFacebookプラットフォームによってウェブを再組織化しようという遠大な戦略を実行中で、Facebookプラットフォームを利用したサイトが大量に生まれつつある。

こうしたサイトに将来ターゲット広告を表示することは容易だろう。つまりFacebookが収益面でもGoogleに追いつくのは一般に考えられているよりずっと早いかもしれないのだ。両社は2015年には収入面でもデッドヒートを繰り広げているかもしれない。Facebook時代という記事にこうした私の考えを詳しく述べておいたので興味のある読者は参照してほしい。

現在でもFacebookはいろいろな面でGoogleより大きくなっている。なるほど、月間ユニーク訪問者数ではまだ追いついていない。Facebookが5億5000万であるのに対し、Googleは9億と大きくリードしている。しかしFacebookの月間ページビューは2500億で、1650億のGoogleを上回っている。総滞留時間にしてもFacebookが1500億分、Googleが730億分と2倍以上だ(対象は2010年5月、comScore調べ)。

GoogleがソーシャルネットワークでFacebookの独走を抑えたいなら、とにかくレースに出せる馬が必要だ。そしてFacebookに意味のある競争を仕掛けることができる唯一の方法は徹底的なクローン作戦しかない。オリナリティー? もちろんない。面子? そんなものは忘れろ。一般ユーザーなんてものは終わったことは片端から忘れてしまう。勝てば官軍だ。

当面、Googleが優位に立てそうな分野もある。ユーザーデータを本当の意味でオープン化し、ユーザーが望めば簡単な操作でエクスポートできるツールを提供すればよい。プライバシーの設定をシンプルに分かりやすくするのも有効だろう。プライバシーに関しては完全公開か完全非公開(承認された友達のみに公開)というTwitterモデルがシンプルで良いと思う。Twitterの例でもわかるが、初めからそういうシステムであれば非公開オプションを選択するユーザーはごく少ないはずだ。

逆にGoogleがやってはいけないのは、新しいソーシャルネットワークを不必要に他のGoogleサービスに連携させることだ。たとえば、次第に古びていくWindows OSとOfficeソフトウェアを守るためにMicrososftがいろいろなビジネス上の決定をするたびにMicrosoftのサービスはいじくりまわされてきた。Googleはこの轍を踏まないようにしなければならない。またFacebookがTwitter化を図って失敗し、GoogleがBuzzをGmailに流しこんで不評を買った例でもわかるが、ユーザーは日頃使い慣れたサービスがあまり急激に変わることを望まない。ユーザーがGoogle Me(まだそういう名前になるかどうか分からないが)にやって来る理由はたったひとつ―それが気に入っているからだ。

Googleが戦略を誤らなければ、向こう数年、Facebookといい勝負ができるだろう。個人的にはFacebookのクローンなど見たくないが、Googleにとっては他に選択肢がない。一般ユーザーにとってもFacebookに競争相手が現れるのはよいことだ。

PS – Googleがその次に作るべきなのはTwitterクローンだろう。機能としてはデッドコピーでよい。ただしプロトコルをオープン化して誰もが自分のサーバ上で走らせることができるようにする。名称は―Glitter〔ギラギラ〕がよいだろうか?

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(翻訳:滑川海彦/namekawa01