[jp]楽天は「日本企業をやめて世界企業になる」

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たぶん、日本のいま置かれている状況を考えれば、企業として正しい選択のひとつなのだろう。

楽天グループは2012年末までに社内コミュニケーションを英語化し、公用語を英語にする――。これだけ取り上げると日本の企業としては奇異に聞こえるかもしれない。ただ、三木谷浩史氏はもう楽天を日本にとどまらせるつもりはないようだ。

楽天は今年に入って相次いで国際展開について発表している。1月27日には中国のバイドゥ(百度)とのショッピングモール事業の合弁企業設立の合意を発表。5月20日には米国Buy.comを買収し、6月17日にはフランスのPriceMinisterを買収している。これだけではない、下記に示すようにすでに6カ国でビジネスを展開しているのだ。

  • 米国――アフィリエイトのLinkShareを買収(2005年9月6日)、ショッピングサイトのBuy.comを買収(2010年5月20日)
  • 中国――検索大手のバイドゥ(百度)と合弁でショッピングモール事業の会社を設立。サービス名称は「楽酷天」(2010年1月27日)
  • フランス――ショッピングサイトのPriceMinisterを買収(2010年6月17日)
  • インドネシア――Global Mediacomと合弁で企業を設立(2010年5月26日)
  • 台湾――台湾内でセブンイレブンを運営する流通業の統一超商と合弁でショッピングモール事業を展開(2007年11月29日)
  • タイ――ショッピングサイト大手のTARAD.comを買収(2009年9月30日)

さらに言えば、PriceMinisterやBuy.comは自国以外にも事業を展開しているので、実際にはもっと多くの国で事業をやっていることになる。

こういった動きから将来的(10年後ぐらい?)には27カ国に進出し、流通総額20兆円、取扱高の海外の比率を70%までに持って行きたいとしている。つまり三木谷氏の言葉を借りれば楽天は「日本企業をやめて世界企業になる」ということだ。

楽天の社内コミュニケーションの英語化についてはすでに報道されていたところも多い。実際に役員会議や経営会議は英語で実施されているという。今後は現場レベルの会議や資料などを段階的に英語化していき、2012年度までには公用語としての英語化を完了させようとしている。

なぜここまで英語化にこだわっているのか――。それは、経営者層や役員層が各国の地域事業について英語でコミュニケーションをとるのではなく、各国間の現場社員によるコミュニケーションを促したいからだという。多くの買収や合弁企業によって各国の事業をその地域にあわせて展開していくのだというが、そこで得られたノウハウや優れた経験値は現場同士で共有できるようにしていきたいとしている。だからこそ、全グループ社員の英語化だという。

これにとどまらずに、人事や技術開発などグループ全体でグローバル間のシナジー効果をだしていきたいとしている。

こういった徹底した楽天のグローバル企業への変身の根底にあるのは、日本経済の今後の凋落を見通してのことだろう。世界における日本の立場は、年々低くなっている。まもなくGDPの規模では中国に抜かれ、世界全体のGDPに占めるの日本の割合も30年後には5パーセントを切るだろう。人口が減少し、購買意欲の高い世代が少なくなっていく。こういった中で企業が大きく成長するのは難しい。だからこそ日本だけではなく、海外市場での成長を目指していこうとしているのだろう。

最近、何人かの経営者たちと話す機会があったが、異口同音に日本以外の市場での事業展開について語っていた。もう日本だけ考えていては未来が描けないのだ。すでにミクシィやDeNA、サイバーエージェントなどは形は違えど海外での事業展開を始めている。楽天を始めとして海外に活路を求める企業に後続する企業が、一連の楽天の動きに刺激を受けて今後もっと出てくることになるだろう。

今回記者発表が開かれた楽天の社内には数多くの記者やアナリストが集まっていた。当然ながら、その多くは日本人である。だが、記者発表それ自体は同時通訳が入ったものの、英語ですべてプレゼンテーションが行われた。その光景は不思議なものだったが、もうあと10年もすればもしかしたら日本であっても珍しくなくなっていくのかもしれない。

ハーバード大学でMBAを取得し、英語に堪能な45歳の三木谷氏は目下のところ中国語の習得に勤しんでいるという。