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FaceTime、そしてAppleの巨大な統合メリットが始まりにすぎない理由

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編集部より:ゲストライターのSteve Cheneyは起業家であり、以前はウェブおよびモバイル技術に特化したエンジニア兼プログラマーだった。最近の寄稿にモバイルの革新がPCに圧勝する理由がある。

iPhone 4の成功は目覚ましく、アンテナ問題はあるものの、Appleが「機能」のみならず、デザインと総合力において差別化する上で無類の能力を持つことが証明された。

おそらくこれを最も良く表している例が、FaceTime、Appleのテレビ電話への回答である。FaceTimeを見てしまうと、Android機、Sprint HTC EVOのテレビ電話がまぬけに見える。EVOではサインアップしてサードパーティーアプリをダウンロードする必要があり、通話のたぴにアプリを立ち上げなくてはならない。一般人はそんなことをしようとはしない。

Appleは、ハードウェアとソフトウェアの合流点で革新を起こすことによって、この摩擦を排除した ― 通話中にボタンを押すだけで使うことができる。これはまさしく驚くべきことである(そう、私はSteve Jobsの霊媒者を努めている)。

しかし、FaceTimeはAppleの奥深い統合機能のほんの予告編にすぎない。ハードウェアとソフトウェアの表面下で、Appleはもっとずっと深いレベルでの差別化を間近に控えている。同社の垂直統合戦略の結果である。深いレベルでの統合化による優位性は、捕えにくいが、驚くほど強力である。

コンポーネントにおける機能の肥大化がAppleに有利に働く:

最近私は、モバイルの革新が比類なき速さで起きていることを論じた。主なる原動力の一つが、コンポーネントの驚くべき革新である。

しかし、この革新の早さ ― 全体としては良いことである ― が、マイナスの副作用をもたらしている。「機能の肥大化」である。4Gワイヤレスを詰め込んだHTC EVOは、その典型例である(失礼。しかし4Gはまだ時期早尚であり、私はAppleが来年のiPhone 5にすら載せてこないことを確信している)。

企業にとって、機能による差別化の誘惑は好循環である。コンポーネントメーカー(Broadcom、TI、Qualcom)は、統合レベルに基づいて激しく競争している。HTCをはじめとする端末機OEMは、機能を未熟でも出すようベンダーに圧力をかけ、コンポーネントの選択基準は、最新鋭(但し、しばしばバグに富んだ)技術の有無におかれる。

これが「一切合切」志向を呼び、顧客育成フレームワークとは矛盾する最大機能セットを生む要因となる。端末機OEMからの圧力も一因ではあるが、コンポーネントメーカーは、さらに競合分析によってマーケティング要求を方向づける。なぜこれが機能詰め込みを呼ぶかについて、Steve Blankが優れた見識を示している。HTC EVOのレビューでの低評価は、機能追加が ― 見栄えは良くても ― 顧客に訴えるとは限らないことの証しである。バッテリーが一晩で切れるとなればなおさらである。

Appleは機能追加について、全く異なる考えを持っている。HTCの世界では、利用可能な技術に基づいて闇雲に「差別化」しているのに対して、Appleが革新するのは、これまでより優れた、よく統合されたユーザー体験を作れる時だけである。

現在この機能肥大化による好循環は上述のとおり、システム・オン・チップ(SoC)開発において加速している。しかしAppleは、その最小製品戦略を反映する垂直統合とチップ製造によって、それを避ける態勢にある。

サプライチェーンの透明性は、Appleにとって目に見えない膨大な利点である

恐らくさらに強力なのが、AppleのSoCデザイナーが得ている目に見えない利点である。コンポーネント全体のエコシステムや、バリューチェーンで何が起きているかを明確な知識として与られることだ。

どうやって? 世界中のあらゆるコンポーネントメーカーが、「秘密のロードマップ」を共有しにクパティーノを訪れる ― 今やAppleがSoC開発で「競合」しているにもかかわらず。Appleデザインというぶらさがった人参は、何かを共有することに対する抵抗に勝るのである。他のチップメーカーのこうした透明性はきわめて強力である。なぜなら、端末機OEMは何世代か先まで計画しているからだ(例えばAppleが、iPhone 6とA6のコンセプト段階にあることは間違いない)。

AppleはBroadcomのチップ計画を知り、GPSとWiFiに関係するデジタルロジックの一部をA6に載せるかどうかを検討することができる。支払い用NFCなどの新技術を、内製するか購入するか? 組み合わせは何十とあり、いずれにも設計課題、利点、リスクが伴う。

サプライヤーからデータを吸い上げることによって、Appleのチップ担当者たちは製品計画のフィードバックループを得ることになる。こうした衆知が積み重なって、Appleが何を作り、購入し、ライセンスし、あるいは外注するかを決める手助けとなる。ライバルの機能ロードマップの全貌を見てから、自社のSoC戦略を立てることを想像してみてほしい。隣の奥さんの裸を見てから、興味を持つかどうか決めるようなものだ。結婚しているのに。

Ciscoは何年にもわたり似たような垂直戦略を使って、事業に利益をもたらしている(BroadcomとMarvellは、Cicsoが自製のスイッチチップを作っているにも関わらず、Ethernet素材を売り込む)。しかしモバイルで、バリューチェーンハードウェア、ソフトウェア、チップコンポーネントの全3要素を持っている会社は(Samsung以外に)Appleだけである。Nokiaはコンポーネント部門をSTMicroに売却し、EricssonとMotorolaもスピンオフさせている。

マルチコアのARMベースチップが急伸し、ソフトウェア、ハードウェアの統合がさらに差別化要因となるにつれ、Appleの技術チームはこれら3つのレベルの交わるところで、ライバルに勝る革新をするだろう(アンテナ問題は別として)。Google、Motorolaなどが、自社の縦割り部門同志で情報の相互交流を行う方が、よほど難しい。

明日のスマートフォン戦争で、このモバイルのバリューチェーン全体における透明性がAppleに与える優位性は測りしれない。この戦略的含意は、Steve Jobsが垂直統合および半導体の巨人たちと競合することを決意した時にも、失われることがなかった。

要するに、Appleという会社を動かしているのは、卓越した戦略家とユーザー体験デザイナーであり、エンジニアーではない。そして、コンポーネント、ハードウェア、ソフトウェアの奥深い統合が、モバイルプラットホームの進化と共にAppleに永続的な優位性をもたらすことを彼らは知っている。これが、Appleがこれからも、iPhone 4やFaceTimeのような大ヒットとなるデバイスや機能を作り続けるに違いない理由である。

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(翻訳:Nob Takahashi)