多極化の中のモバイル開発の現状と世界のデベロッパたちの意識調査

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Mac 対 PC ディベート、2つの視点

モバイルアプリケーションの業界は、多極化(fragmentation, フラグメンテーション, 細分化)が激しいし、デジタル経済全体の中でも全世界的に規模が大きく、しかもたえず成長している分野だから、状況を正確に知るためには良質な調査報告があると助かる。そこでこの記事では、VisionMobilesが行った相当広範な研究調査スポンサーTelefónica Developer Communities)を紹介しよう。私がこれまで読んだ類似の調査報告の中では、ずば抜けて詳しくて深い。

Developer Economics 2010と題されたこの報告書は無料で配布されていて、モバイルアプリケーション開発のいろんな側面を詳細に取り上げている。調査対象者は全世界の400名(あるいは’社’)あまりのデベロッパで、彼らの開発主対象は8つのプラットホームに分かれる: iOS (iPhone)、Android、Symbian、BlackBerry、Java ME、Windows Phone、Flash/Flash Lite、モバイルWeb(WAP/XHTML/CSS/Javascript)。

この大規模な調査は、2010年の1月から6月にかけて、3名の調査専門家と8名のモバイルアプリケーションデベロッパから成るチームにより行われ、プラットホームの選択から、流通、収益化にいたるまでの重要な問題点を、ほとんどすべて取り上げている。

では、重要なポイントをいくつかご紹介しよう:

市場普及率と選好対象

全回答者の75%以上が、開発対象のモバイルプラットホームを選ぶ理由として市場における普及率を挙げている。当然ながらデベロッパたちは、技術的な側面よりも市場性と収益機会を重視してプラットホームを選んでいるのだ。

– 今回の400あまりの回答者の中では、ほとんどのデベロッパが複数のプラットホームを開発対象にしている: 平均では一人(あるいは’一社’)あたり2.8プラットホームだ。iPhoneとAndroidのデベロッパにかぎると、5人に1人がApp StoreとAndroid Marketの両方にアプリケーションをリリースしている。〔訳注: 調査対象者が会社を代表している場合もありえますが、以下の訳文では”(あるいは’一社’)”などの注記を省略し、単位を’人’や’名’に統一します。〕

– 過去2年間で、デベロッパたちの選好対象の大移動が生じている(その詳細はここに)。それは、Symbian、Java ME、Windows Phoneなど既存のメジャープラットホームを見捨てる動きだ。回答者中、Symbianデベロッパの20〜25%はアプリケーションをiPhoneやAndroidのアプリケーションストアでも売っており、旧プラットホームから新プラットホームへの頭脳流出が起きているようだ。

– Java MEのデベロッパの大多数が、Javaのビジョンである”write once, run anywhere”*に魅力を感じなくなっている。さらに、自由談話の中には、Windows Phone MVPデベロッパの半数がiPhoneのオーナーであり、Windows Phoneに対する積極的な気持ちが薄れつつあるという声がある。〔*: write once, run anywhere, 一度書けばそれがどこでも動く〕

モバイルデベロッパたちのあいだで圧倒的にもっとも人気の高いプラットホームはAndroidである。全回答者…メインのプラットホームはそれぞれ異なる…の60%近くが、最近Android向けの開発をしたことがある。デベロッパたちの選好対象の次位はiOS(iPhone)である。2008年には選好の一位がSymbian、二位がJava MEだった。

– 各プラットホームに対するデベロッパたちの選好と、そのプラットホームの市場規模は、並行していない。たとえばSymbian OSは3億9000万の携帯電話に搭載され(2010Q2)、アプリケーション数は6000あまりだが、AppleのiPhoneはその30倍以上のアプリケーションがありながら、同時期の利用台数はわずかに6000万だ。

– 当然ながらデベロッパたちは、自分がいちばん多くの時間を投じたプラットホームに強い愛着を感じている。8つの主なプラットホームすべてにわたって、デベロッパたちは自分の(メインの)開発プラットホームが市場普及率ももっとも高いと感じているが、実際には市場普及率はそれほどでもないプラットホームもある。

[全世界利用台数(2010Q2)]    [アプリケーションストアのアプリ数]

(クリックすると大きな画像に)

[2010年初期におけるモバイルデベロッパたちの使用プラットホーム]

マーケティングと営業と収益化

– 2年前に主流だった流通チャネルは、今ではほとんど使われていない。すなわち、オペレータ(キャリア)のポータルや、OEMによる事前内蔵化(プリロード)、あるいはオペレータとの契約取引がアプリケーションのメインの流通チャネルであるデベロッパは今では5%に満たない。今ではデベロッパの多くが、’ネイティブの’アプリケーションストアや、自己のWebサイトからの直接ダウンロードを主な流通チャネルとして使っている。また一部には、注文生産のアプリケーションもある。

アプリケーションストアは、アプリケーションが開発着手から流通チャネルに乗るまでの時間を、従来の1/3に短縮した(68日から22日へ)。さらにアプリケーションストアは、支払いを得るまでに要する時間を半減した(82日から36日へ)。これまでは、オペレータチャネルでは支払いを得るまでに平均55日、携帯メーカーによるプリロードではなんと168日を要した。

– ただし、現時点でアプリケーションストアがまともに機能しているのはAppleとAndroidのプラットホームのみである。Javaではわずかに5%、Windows Phoneでは10%強のデベロッパが、主要な流通チャネルとしてアプリケーションストアを使っている。

– モバイルデベロッパが今抱えている大きな問題は、アプリケーションの露出や(消費者による)発見を促進するための有効なマーケティングチャネルの欠如である。さらに、半数の回答者が、アプリケーションストアにおける特別扱い…目立つような扱い…が有料制であってもよい、と答えている。

– アプリケーションの検定過程における最大の問題は、その費用だ。アプリケーションストアにおける検定を経験したデベロッパの30%以上が、費用の高さを最大の問題として挙げている。現状では、大きな開発費を投じたプロジェクトしか申請できず、低価格のアプリケーションは売りにくいという。

– ゴールドは過剰に評価されすぎている。予想以上に売上に寄与したと答えた回答者は、5%にすぎない。iPhoneデベロッパの60%近くは、売上目標に達しなかったと答えている。

– アプリケーションストアやポータルを流通チャネルとして利用しているデベロッパにとって、広告はあくまでも二義的な収入源でしかない。やはりメインは、有料ダウンロードという確実な方法である。一方、有料会員制は、オペレータ(キャリア)やコンテンツ集積ポータルが主に利用しているアプリケーション配布方法だ。彼らはまだ、アプリケーションストアの本格展開をしていない。

モバイルのデベロッパたちはネットワークオペレータ(キャリア)をビットパイプと見なしている*。回答者の80%近くが、ネットワークオペレータは、いつでもどこでもデータアクセスができるようにしてくれるだけでよい、と考えている。音声電話機能を挙げるのは、わずかに53%である(データ通信のほうを重視)。〔*: bit-pipeまたはdumb pipe、単に無性格なデータの流路(として優秀)であるだけでよい、というキャリア観。余計なサービスによる高価格化や低性能化を警戒する。〕

[アプリケーションの販売チャネル]
青:アプリケーションストア 赤:自己サイトからのダウンロード 草色:契約利用者からの料金

[モバイルアプリケーションの売上期待]
草色:ほぼ目標到達可能 赤:計画通り 紫:お粗末 青:予想を5%超 水色:その他

技術的な面

– 学習曲線は、プラットホームによって大きく異なる。平均で、Symbianに要する学習期間は15か月以上、これに対しAndroidは6か月弱である。さらにSymbianは、iOS(iPhone)、Android、Java MEに比べてプログラミングが難しく、時間がかかる。9種類のよくあるアプリケーションの開発で比較した結果では、Symbianデベロッパが要した時間はAndroidデベロッパの約3倍、コード量ではiPhoneデベロッパの約2倍だった

– モバイル開発用のエミュレータとデバッガの最大の苦痛は、スピードが遅いこととターゲットのデバイスを完全に表現していないことである。また開発環境(IDE)の最大の苦痛は、アプリケーションを移植するためのフレームワークを欠いていることと、エミュレータの統合化が不十分であることだ。

– デバッグに関しては、iPhone、Symbian、Java MEと比べてAndroidのデバッグが最速である。Symbianでデバッグに要する時間は、Androidの2倍以上だ。

– 納得のいくUIを構築する能力に関しては、多くのデベロッパが不満を抱いている。とくにSymbian、BlackBerry、Windows Phoneのデベロッパの半数が、良質なUIを作るのが難しいと答えている。

– ソフトウェアの開発時には、80%以上の回答者がコミュニティや非公式のフォーラムをサポートの頼りにしている。プラットホームの公式Webサイトにサポートを頼っているのは、わずかに40%である。

– デバイスの、いわゆる’隠れ’API、非公開APIは、プラットホームのベンダの管理用だが、デベロッパも有料でもいいから使いたい、通常の技術サポートよりもそっちが重要、と考えている。したがってプラットホームのベンダはSDKを複層化して、特権的なSDKを有料会員のデベロッパにのみ提供することを考えてもいい。

– オペレータ(キャリア)のネットワークAPIは今のところ、デベロッパが魅力を感じていない。オペレータはネットワークAPIを提供すべき、と答えたのは、わずかに5%である。しかしそれでも、回答者の半数以上が、請求〜支払いAPIやメッセージング、位置機能などのAPIは有料でも使いたいと答えている。

– オープンソースで開発をしている回答者の86%は、Eclipseのような開発ツールを使っている。Symbianと比べると、AndroidとiPhoneのデベロッパはオープンソースのコミュニティを作る者が3倍多い。両者はデベロッパコミュニティの質が対照的だ。なお60%の回答者が、オープンソース方式の主な欠点としてライセンスをめぐる混乱を挙げている。

報告書の全文はDeveloperEconomics.comから無料で入手できる。

[各プラットホームをマスターするのに要する時間(全回答者平均)]

[モバイルデベロッパが考えるネットワークオペレータ(キャリア)の役割]
*安定的データアクセスの提供 *電話サービスの提供 *良質なモバイルサービス *対消費者マーケティングチャネル *サードパーティモバイルサービスの集積 *ネットワークAPIの提供

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[米TechCrunch最新記事サムネイル集]

(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))