Googleには、次のマイクロソフトになる危険があるのか?

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編集部より:大数の法則は、Googleにも追っているのだろうか。革新は難しい、とりわけ新しいアイディアが何十億ドルという収益を生むことが条件であれば。このゲスト寄稿では、作家で元ベンチャーキャピタリストのPeter Simsが、かつての巨大テクノロジー企業と同じ宿命に苦しまないために、Googleが直面する課題について語る。Simsは、Bill Georgeと共にTrue North: Discover Your Authentic Leadership[邦訳『リーダーへの旅路―本当の自分、キャリア、価値観の探求』)を著している。同氏の次作Little Bets[仮訳:小さな賭け]は来春刊行予定。Twitterのアカウントは@petersims

4月の終りに私はJP Morganから、シリコンバレーとデジタルメディアの最新状況について語る「思想的指導者のディナー」に招かれた。サンフランシスコのKokkariという酒落たレストランの個室で、20人ほどが細長いテーブルを囲んだ。そこには著名な企業のベンチャーキャピタリストや大成功を収めた起業家をはじめ、J.P. Morganからも何人かが参加し、上座にはあの有名なJimmy Lee副会長がいた(私は、『さよならゲーム』のケビン・コスナー演じるクラッシュ・デービスと同じく”the player to be named later”[氏名未公表のトレード要員]だった)。

ともあれ、1時間ほどして何杯かのワインを飲んだ後、Jimmyが最近気にしていた質問を投げかけた、「みなさん一人ひとりにお聞きしたい。どの会社が長期買いで、どこが短期だと思うか」。時間の範囲は自由だった。結果は、長期はAmazonからYahoo!まで多岐にわたったが、「思想的指導者」15人中12人がGoogleを短期とした。Jimmyはひっくり返るほど驚いて、「えーっ、きみたちはそこまでGoogleを低く見ていたのか」と大声をあげた。

私も驚いた。何しろGoogleといえば、最近の歴史の中で最も成功した会社(生み出した収益と成長という意味で)であり、率いているのは広く尊敬を集めているCEO、Eric Schmidtだ。誰もがGoogleのようになるべき理由を書いた本がここにもここにもある。私はGoogleを、その従業員たちを、そしてこの会社が成し得てきたことに敬服している。思いがけないことだった。しかし、その部屋での意見は会社の過去の業績に基づくものではなかった。それはGoogleの将来を見通しての考えだった。みんなが同社を低く見る理由を以下に挙げる(かなり多岐にわたっているところが興味深い)。

  • Googleはここ数年来、深刻な人材流出を経験し、最高水準の起業家や革新的な人々を何人も失ってきた。Googleの従業員定着率は高いが、問題は人数ではなく、出て行った人のタイプや、何故出ていったかである。Googleからの人材流出については詳しく書かれた記事かある。同席していたベンチャーキャピタリストたち(企業との利害関係はない)が、FacebookとZyngaが現在最も人気の職場であると議論していた。Googleからは多くの人材がFacebookに流れており、ごく最近では、Googleの最重要モバイルプロジェクトであるAndroidのシニアプロダクトマネージャー、Erick Tsengまでもが辞めている。

    Googleに近い筋によると、初期の革新的カルチャーに、徐々に上下社会が入ってきているという。起業家タイプや思想的指導者で、縛られたり、やる気をそがれると感じた人たちは辞めていく。中には、かつての実力社会ではない、2004~2005年のYahooを思い出す、という人さえいる。

  • Googleは容易な成長チャンスを使い果たし、今後は大規模な新収益源を見つける必要がある。中核の検索ビジネスが成熟するにつれ、Googleには何か「大きな賭け」に出る必要があるという思いが強まっているようにみえる。これは、成熟した企業が遭遇する問題の一つで、CEOたちは「大数の暴挙」と呼んでいる。モバイル検索のように、小さな基盤ですばらしい成長が見込めるものでさえ、会社に有形な変化を与えるには小さすぎる。モバイルでは道は遠いことを知る同社が、狂ったように成長ポケットを探していることは明らかだ。最近の$700M(7億ドル)でのITA買収は、中規模から大規模の賭けをいくつか張って、どれが当たるかを探っていることを示す好例だ。つまり、企業が成長率を維持するためには、どんどん大きな収益源を見つけなければならなくなっていく。この問題は、クレイトン・クリステンセンのThe Innovators Solution(邦訳『イノベーションへの解 収益ある成長に向けて』)と ジム・コリンズのHow the Mighty Fall[仮訳:ダメになる会社の見分け方]という、イノベーション研究者二人の著作に詳しく書かれている。
  • Googleの戦略は一貫性に欠けている、特にモバイルで。SchmidtをはじめとするGoogle幹部が言うように、モバイルは将来の成長の核である。この日の出席者の何人かは、Googleのモバイルへの取り組みについて独自の視点を持っていた。彼らによれば、発生期にあるモバイル収益を伸ばすには相当の時間がかかり、GoogleがAdMobを買った後、モバイルで買収のターゲットになる一定規模の会社は数少ないという。一方最近のITA買収は、何が定着するかを見るべく同社が中、大規模の賭けに出るらしいことを示している。
  • すべては人、人、人。Googleのエンジニア支配のカルチャーは誰もが知っている。しかし、ピーター・ドラッカーが代表作「Innovation and Entrepreneurship(邦訳『イノベーションと企業家精神』)で述べているように、「成功するイノベーターは、、数字を見て、そして人を見る」。Googleは長年、きわめて特殊なプロフィールに合った人たちを雇ってきた。

例えばプロダクトマネージャー候補なら、一流大学でコンピューターサイエンスの学位を持っていなければならない。しかし、Googleの中核アルゴリズムは技術イノベーションのすばらしい成果だが、果たしてこれを維持できるのかという疑問の声が高まってきている。型にはまった雇用は、多様性の重要な機会を失わせ、非エンジニアに対してガラスの天井を作り、そのどちらもがイノベーションを抑制する。そして特にJim Collinsが問題にしたもう一つのパターン、文化的傲慢は最大の課題だ。Googleではエンジニアリングや製品、さらにはマーケティングの意志決定さえも、技術者がリードしているとよく言われる。しかし、Google WaveやGoogle Radioで同社が失敗した時、批評家たちは、この会社が本当に人間を理解しているのかと疑問を呈した。

こうした理由などから、「内情に通じた」シリコンバレーウォッチャーたちが、最近よく尋ねる質問はおそらくこうだ。Googleは次のマイクロソフトになるのか? Googleが検索に革命を起こしたのと同じように、Microsoftは、オペレーティングシステムとMicrosoft Officeで市場を支配しているパイオニアだ。しかし、Xboxを除けば、Microsoftは新しい革新を生み出すのに困窮している。さらに深いカルチャー問題も、驚くべき実績と成功の陰に隠されてきた。

確かなことが一つある。Googleの歴史上今がきわめて重要な時である。もし今この種の問題と向き合わなければ、「売り抜け」の声が高まるだろう。しかし、ありあまる現金とすばらしい人材を持つ一方で大きな問題を抱える今、私はこの瞬間をチャンスと見ている。立ち止まって考え、いくつか困難な問題を問いかけ、課題をオープンに話しあい、新鮮な考え方と人を導入することで、グローバルなイノベーションのこの偉大な象徴が発展し成長する、そんなチャンスである。

長期か短期か、みなさんはどう思われるだろうか。果たしてGoogleは、次のMicrosoftになる危機にあるのか、それとも創造的爆発を目前にしているのだろうか。

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(翻訳:Nob Takahashi)