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企業の主要目標が複数ある時代へ–利益単眼から利益・人間・環境の複眼企業こそが生き延びうる時代

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この記事を書いたゲストLeila Janahは、アウトソーシングサービスのNPO SamasourceのCEOだ。Leilaはぼくと、政府介入等のない純粋な資本主義が人類の苦境を救えるのかどうかについて、議論を続けている。ぼくはどちらかというと、ランド主義的な考え方だ。Janahは、資本主義は悪を結果することが多いと主張し、資本主義の間違った行き方の例として台湾のFoxconnを挙げる。それはたしかに大衆受けする見方だが、しかしぼくは、資本主義の問題の多くは政府の規制が原因だと考えている。最近Janahにインタビューしたときのビデオが、ここにある。しかしいずれにしてもSamasourceは魅力的な実験だし、世界をもっと快適な場所にすることに、すでに貢献しつつある。

Fortune 500の63%、そしてアメリカの全企業の半分以上が、デラウェア州で法人の登記をしている。この州の法律は企業の役員を保護し、企業の主要目標の追求に専念させてくれる。企業の主要目標とは、従来的には、利益と株主価値の最大化である。

しかし今では、デラウェア的な企業観とは真っ向から反するトレンドが生まれており、それは、私たちのような社会的企業の分野にいる者にとってかなりスリリングな展開を見せている。4月に、メリーランド州が合衆国で初めて、企業がBenefit Corporations〔仮訳: 福利企業〕になることを認める州になった。この、B Corpsと略称で呼ばれる企業は、人間と地球と利益の3つを同列に重視するので”主要目標が三つある企業”(“triple-bottom line” businesses)とも呼ばれ、今では300社以上存在し、その総売上は$1.1B(11億ドル)に達する。その中には、Amazonと競合するBetter World Booksや、消費者製品の安全性や環境負荷、社会的責任などを格付けするGoodGuideなども含まれる。B Corpsの認定機関であるNPO B Corporationの影響力が今拡大中で、この機関のあるフィラデルフィアには、今ではB Corpsを奨励するための特別減税制度がある。

使命追求型の企業が利用できる新しい法制として、Benefit Corporations以外のものもある。数年前バーモント州は、Low-Profit Limited Liability Corporations〔仮訳: 低利益有限責任会社〕、略称L3Csというものを作った(バーモントのヒッピーたちに拍手しよう。同州は5月に、Benefit Corporations制度も導入した)。ミシガン、ユタ、ワイオミング、イリノイ、ニューヨークの各州も、これに追随している。

ばかにしたような笑い声が聞こえる。企業が複数の主要目標を同じ比重で追うとしたら、どうやって経営を最適化したらいいのか? 社会的および環境的なインパクトを、全企業にわたって公正に計測できる標準的な手法はあり得るのか? アダム・スミスが、墓の中で思わずずっこけているのではないか?

複数の主要目標という考え方は、1980年代に生まれた。それは、Exxon ValdezとUnion Carbideのインド ボパールにおける大規模ガス漏れ事故によって、環境コストをバランスシートに正規のコストとして明示的に計上していない企業があることが、明らかになったためである。事故や環境の劣化を単なる負の環境的外部性…たまたま運悪く予定外に起きたこと…としてすます傾向が、適切な法制もないまま横行し、活動家たちは政府ではなく企業のリーダーたちに変化を期待すべきだと悟った。その初期の成果の一つがBen and Jerry’sで、ファウンダのBen CohenとJerry Greenfieldは、税引き前利益の7.5%をコミュニティのプロジェクトに寄付して有名になった。またDame Anita RoddickのThe Body Shopは、”Trade Not Aid”とGreenpeaceキャンペーンによって企業倫理の範例と見なされた。

今日では、企業の社会的および環境的インパクトの測度が25種類もある。たとえばFair Trade labeling systems(公正取引の認定)は、現地労働者の生活と労働条件を重視する*。また、よく知られているJed EmersonのSocial Return on Investment(投資の社会的リターン)方式は、それを取り入れた企業が新たな資本プールにアクセスできる。Rockefeller Foundation(ロックフェラー財団)が率いるGlobal Impact Investing Networkには、社会を意識する投資家が30いて、その中にはJeff SkollのCapricorn Investment GroupやTIAA-CREFがある。〔*: たとえばApple製品をフェアトレード製品にせよという議論もある。現地労働者の労働〜生活条件の向上を、アメリカ等の金余り消費者たちが今よりも高価なApple製品を買うことで担保するのだ。訳者は最近、タンザニアのフェアトレードコーヒーを飲んだことがある。雑味のない、きれいな味だった。〕

こういった、ソーシャルな(==社会性のある)企業やソーシャルな資本市場は、中核的な問題をより幅広く浮き彫りにする: 社会的かつ環境的なリターンに対する標準的で単一の測度を欠いているときには、政府等も企業に対する効果的な採用奨励策を構築できない。複数の変数を最適化することは、困難なことで悪名高い。リーダーたちが明確に社会的環境的目標へのコミットメントを表明し、公式に文書化している場合でも、複数の大きなトレードオフに直面する。Benefit Corporationsが登場するまでは、人間と地球は後部座席に置かれていた。10年前Ben & Jerry’sはUnileverに買収されたが、Will Pattenによると、前役員のCohenとGreenfieldは会社の経営権の保持を願ったが、しかしそうすると、せっかく会社の株価以上で買おうとしている買収企業に高く売れないとして、株主たちに訴訟されかねなかった。

メリーランド州の新しい法律では、未来のBenたちJerryたちは、利益とともに”公共の利益”という曖昧なものを追求してよい。それにはたとえば、環境の保全や人間の健康の向上などが含まれるだろう。Benefit Corporationsの役員たちは、株主たちに各年、”Benefit Report”を提示し、株主だけでなく社員、顧客、そしてしかも部品原料供給者たちに対しても、自分たちのアクションの効果を配慮しなければならない。

FoxConnにおける労働者の自殺の頻発と、最近のアフガニスタンにおける$1T(1兆ドル)相当のリチウム、銅、鉄の発見を目の前にして、テクノロジの世界ははたして、B Corpsに取り組む覚悟ができているだろうか?

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))