Amazonの甘美な独占契約は、消費者にとっては悪

次の記事

個々のビジターの訪問履歴を記録–サイトの魅力アップを支援する分析サービスKISSmetrics

Amazonは今日(米国時間7/22)、Andrew Wylieとの契約に合意したことを発表した。Wylieはニューヨーク拠点の大物出版エージェントの代表者で、クライアントには、オリヴァー・サックス、サルマン・ラシュディー、フィリップ・ロスらの著者が名を連ね、ウィリアム・バロウズ、ジョン・アップダイク、W.H. オーデンなどの権利も管理している。AmazonおよびKindle Eブックストアは、Wylieが代理人を務める書籍のいくつかを出版する独占権を手に入れることになり、他のプレーヤー(例えば印刷版書籍の販売業者)は排除される。これはAmazonにとって大きな収穫だが、消費者にとってはつらい一時期の始まりである。

Eブック全体を大きなパイだと思ってほしい。Amazonはその一部を切り取って、自分の皿に乗せた。ごく近い将来、他のプレーヤーたちが猛烈に勢いでパイを切り取り、それぞれの皿に置いていく。残されるのはバラバラで混乱した、消費者にとって扱いが困難で複雑な市場だけだ。

とはいえ、これは避けられない一歩であり、決して前例がなかったわけでもない。この手のことは、この世に市場が生まれた時からある。一人の商人が農民に向かってビートを市に持ってくるようにとこう言った。「あんたのビートは最高だ、オレは最高の店を持っている。わかるだろ、オレにはわかってる ― 手を打とうぜ。二人でぼろもうけだ」。ただし彼らが話していたのはラテン語か線文字Bか何かだが。ポイントは、独占が起きると誰もが向上して市場全体が良くなることだ。しかしその一方で、ビートの値段は上がる。

独占契約などKindleを含めどこの店でもやっていることで、新しくも何ともない。Eブック市場が過熱する今、激しいタレントの取り合いが起こり、タレント側も強く契約を求めるようになったということだ。もちろん著者はできるだけ多くの部数を売りたいが、Eブックストア1社に限定したとしても、船が大きく傾くことはないし、Amazonはかなりの前払い金を出すはずだ。今後2年間、有名作家の主要Eブックブランドへの大移動が起きるだろう。例えばスティーブン・キング。彼の本をEブックで読みたければKindleが必要になる。その手の独占はやりやすいので、しばらく続く可能性が高い。

私が心配するのは、最終的にエンドユーザーにとってマイナスになることだ。もしビッグプレーヤーたちが、ベストセラー読者をEブックに切り換えさせたいのなら、このやり方はまずい。ダニエル・スティール読者の誰かは、ある著者の本が自分のEブックリーダーで読むことができず、別のストアに登録してクレジットカード情報を一から入れ直さなくてはならないと知れば頭に来る。たしかに、NookKindleKoboは多くのデバイスで使うことができるが、あの著者、あの本のために全く新しいインターフェースとつきあいたいと思う人はいない。何百万部と売れる本なら、本物のペーパーバックを買った方が便利だ ― 持ち歩けて、DRMフリーで、リージョン制限もない。KindleはいずれEブックのiTunesになるかもしれないが、完全に決着が付くまでは(音楽はそうなったようだ)、トラブルが起きるだろう。

もちろんAmazonも他社も(著者もエージェントも)、間違いなくこの問題を認識している。進行中の「独占」契約は、限定的な方法になる可能性が高いが、これ(最初の古典20冊)の独占期間は丸々2年間だ。少々法外に感じる。出版社と著者は、将来もう少しおとなしい独占契約を結ぶようになると私は思っている。最初の3ヵ月間とか、最初の5万部とか、著者かエージェントが言うまでとか。おそらく契約毎に変わるパラメータになるだろうから、標準化されるまではさらに複雑なことになりそうだ。個人的には「最初のX部」案が気に入っている ― これなら関係者全員ができる限り頑張るよう促す。

予想通り、印刷出版業界は強く反対している。彼らは、エージェントが自分たちに相談もなく、自分たちの取り分もなくこうした契約を進めることに腹を立てている。慣れるしかないよ、君たち。流通の新しい波を止めようと君たちが振りかざしているこん棒は、日に日に小さくなっているのだから。

今後数年間この業界は混沌としそうだが、理由は私が述べてきたことだけではない。市場が騒然としていると消費者は道に迷う。もちろん、このウェブサイトを読めば秘密がすべて暴露されているから大丈夫だが。デジタル配信への移行は、未だに音楽業界に大混乱をもたらし、テレビ、映画業界も少しましなだけだ。本と出版業界の前途が順風満帆でありますように。

[via Electronista]

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)