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[jp] ARはビジネスになるのか?幼児向けARブックを25万部セールスしたLEOVATIONの方法

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拡張現実(Augmented Reality、AR)が新しい技術として注目を浴びてからしばらく経過する。現実世界をデジタルによって拡張する表現方法は少なからず人々に驚きを与え、メディアも次世代の技術とこぞって取り上げた。一方でSFっぽい物珍しさだけが先行し、肝心のビジネスがどこにあるのかイマイチ掴めないところもある。

頓智・のチャレンジはARをきっかけに新たなエコシステム(SoLAR、ソーシャルゲームプラットフォームが中心)を創り出そうという壮大なものだが、結果がでるのはこれからだ。そこでここにひとつ、具体的にARを活用したビジネスに取り組み、成功をおさめつつあるスタートアップの事例をご紹介したい。

Dinosaurs Alive!はチビッコが大好きな恐竜がたくさん描かれている幼児向けの絵本だ。この絵本の最大の特徴が「Alive!」の名が示すとおり、実際に恐竜がとびだしてくるギミック。ページに描かれる恐竜にはマーカーがついていて、それをPCのカメラで映すと画面上に3Dの恐竜が現れるしくみだ。専用のソフトが本に付録としてついているので、インストールするだけでセットアップは完了する。単に3Dで表示されるだけでなく、カーソルキーなどで恐竜を動かせるのも、チビッコにはたまらない仕掛けだろう。

英国に拠点を持つCARLTON BOOKSが販売するこの絵本は価格が約€15。2010年の4月に販売を開始して25万部を販売し、この実績と技術内容を評価されたCARLTON社は次回の2012年ロンドンオリンピックのオフィシャルパートナーに決定したそうだ。

この高い評価を受けたARギミックを提供したのが香港に拠点を持つ創業1年目のスタートアップ、LEOVATION社。彼らの提供するARIUXという技術はフランスに拠点を持つTotal Immersion社のAR技術をベースに独自開発したもので、インタラクティブな動きや視覚効果に特徴がある。例えばDinosaurs Alive!でみせた恐竜のコントロールや、歌い出すグリーティングカードなど単純にみていて楽しいものばかりだ。

「LEOVATIONは私が立ち上げたPlaymotionという会社と印刷会社のLeoPaperが出資する形でつくった」と、創業者のAndrew Pang氏が会社の特徴について説明してくれた。出資元のLeoPaperは世界第5位の規模で、飛び出す絵本などが有名。既にデジタル化されたコンテンツを大量に保有しているLeoPaperとその世界を拡張できる彼らの技術は相性がよかったそうだ。(写真左がAndrew Pang氏。LeoPaperが得意とする飛び出す絵本と、現在香港ディズニーで彼らが提供するエンターテインメントのサービス例)

たしかに技術的な側面だけでいえば、そもそも彼らの使うARはライセンスされたものがベースだし、日本にも同じライセンスパートナーは存在する。D’FusionというARギミックは日本のテレビでも取り上げられていたので知っている人も多いはずだ。しかし、彼らのビジネスは決してこの技術に偏ったものではない。一言でいえばバランスがよいのだ。

最も重要なことは「どうやってコンテンツを使うか。例えば私が誰かにバースデーカードを渡したとします。もし、この技術が入っていれば、そのカードはその人の子供にとっておもちゃに変わる」。つまり、ARによって拡張されるコンテンツが新たな驚きや感動を生み、単なる紙に付加価値を付けることになる。ARは彼らのつくるコンテンツ、ストーリーを読み解くキーなのだ。

聞けば聞くほどシンプルなストーリーだ。子供は新しいものや驚きが大好物だ。本の段階でも刺激的な恐竜が彼らのギミックによってリアルに飛び出し、自分で動かせる。さらにネットに繫がればもっと世界は広がる。単純なギミックだけではない、紙から始まる想像世界の拡張こそ、彼らが提供しようとしているものなのだ。ーーもちろん、子供たちはそこまで気がつかない。彼らが「スゲェ!」と親にねだった結果が25万部なのだ。

Flashや動画と違って誰でもすぐに使えるという訳ではないが、それでもARを特別なものとして捉える時期は過ぎつつあるのかもしれない。一方、ユーザー側にはカメラや専用のソフトが必要だったり、若干のハードルがあったりする分、利用可能なマーケット、例えばユーザーモチベーションの高い教育の分野などに限られる可能性もある。それらを充分に理解した上で、バランスのよいストーリーをつくることのできたプレーヤーがこの技術を使いこなせるのだろう。