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AppleがInfineonを絶対買うべき理由: モバイルチップ統合化でIntelに勝たれないため

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この記事を寄稿したSteve Cheneyは、起業家で、以前はWebとモバイル分野のエンジニア/プログラマだった。
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モバイルにおけるAppleの売上と利益は、おそろしいほどすごい。3年前にはゼロだったものが、今では世界でもっとも高利益の携帯電話メーカーになっているのだ。

Appleはこの超短期間の成功により、電子部品の巨大なバイヤーになった。iSuppliの予想では、来年Appleは世界第二位の半導体バイヤーになり、2012年にはHPを抜いて世界最大になる。

それによってAppleが非常に優位なバイヤーになることは確かだが、同時に次のような疑問も生ずる: Appleはワイヤレスチップの開発を自社で行うべきか?

今週はIntelがInfineonのワイヤレスチップ部門を買収するという噂が市場を揺さぶり、この疑問にハイライトをあてた。携帯のベースバンドに関しては、InfineonがAppleにとって唯一の供給者であり、同社が、携帯電話で音声とデータ通信を扱うための中核的なチップセットを提供してきた。

AppleとInfineonのあいだには、このように深い関係があり、また同社はM&Aに関しては秘密主義で有名だから、Steve Jobsが今、買収を検討している確率はとても高いだろう。

見直される垂直統合:

企業の、水平統合ではなく垂直統合の時代が再び始まろうとしている。CiscoやOracleのような企業では、それが急速なペースで進みつつある。Microsoftですら最近では、ARMからライセンスを得てチップを自分で作る気配を見せている。

携帯電話市場には先例もある。NokiaとEricssonはともに、2007年までは携帯用のチップに関して互いに提携していたが、その後はどちらも、独自の垂直統合路線を歩み始めた。

AppleはA4では成功していても、チップの開発ではCisco、Sony、IBMといった多くの大手ハードウェア企業の後塵を拝しているのが実情だ。

InfineonとAppleのシナジーは大きい:

InfineonはAppleがこれまでに購入した携帯用ベースバンドチップのすべてを供給してきただけでなく、今4社しかないARMのアーキテクチャライセンス保有企業の一つだ(残る3つはQualcomm、Marvell、Microsoft)。したがってInfineonにはARMの基本機能の拡張ができるし、AppleがARM技術の人材を獲得するために買収したPA SemiやIntrinsityとのシナジーも期待できる。

しかし、Appleがワイヤレスの技術を自社保有することの意味は、もっともっと深い。

Appleのハードウェアの売り方は、だいたい1年に1バージョンだから、デバイスと機能をマッチさせることがきわめて容易だ。Nokiaがチップビジネスから手を引いたのは、数百機種もの携帯電話にそれぞれ合わせたチップを作ることは不可能だったからだ。

しかしAppleのような、ハードウェアに関する最小主義では、ワイヤレスのレベルでの垂直統合がむしろ理想的であり、研究開発の的を非常に絞りやすい。たとえば、2011年に4G対応機種を出す気がAppleにないなら、LTE/3GPPのプレリリースバージョンを完全に無視できる。あるいは、近距離のワイヤレス小額支払いの実装を考えているのなら、今すぐNFC技術の導入を開始できる。

こういった有利性によってAppleは、大きな市場のためによりジェネリックなチップを作らなければならないQualcommのような競合他社を、技術的に大きく引き離すことができる。

最後に、Infineonは3Gベースバンドのプロバイダとしては4位の大手にすぎないから、Appleの買収によって縁を切ることになるOEMの顧客が比較的少ない(LGとNokiaがAppleに次ぐ大型顧客だが、Appleから買うのは嫌だから次の機種からはほかを探すだろう)。このようにInfineonが比較的小さいからこそ、サプライチェーンのレベルでの買収も管理に手こずることはない。

AppleはRF(高周波)まわりの設計についても、Infineonから学べるだろう。最近のアンテナ問題が示すように、それはAppleの弱点だった。

財務的にも賢明:

Appleの現状は、Wall Streetの受けも良い。だからワイヤレスの分野における”リスク含みのM&A”も、2010年なら市場が不安視しない。株価はこれまでで最高、400億ドル以上のキャッシュを持つAppleは、経営戦略としてワイヤレスチップの開発に資本を投じる資格が、十分にある。

Infineonのワイヤレス部門の昨年の売上は12億ドルだったが、株価の動きを見ると、買収価額は売上の1.5倍、20億ドルが妥当なところか。

これを、AppleがARMを買収するという、4月に流れた馬鹿馬鹿しい噂と比較してみよう。ARMの半導体に関する知財は、世界中のすべての携帯電話に使われている。当時私は、ARMを買うために50億ドル以上も出すのはまったく意味がないと論じた。20億ドルでInfineonを買ったほうが、はるかに理にかなっている。

そして、いちばんかんじんなのは、次の点だ: もしもInfineonがIntelやSamsungに買収されたら、Appleがこの価格でワイヤレスのテクノロジを手に入れることのできる機会は今後二度とない。携帯用ベースバンドを供給しているそのほかのチップベンダはいずれも、規模が大きく、多角経営のところばかりだ(Qualcomm、ST-Ericsson、MediaTek、, Broadcomなど)。

ワイヤレスを自社で持たないことはAppleにとって危険:

ワイヤレスチップの開発を内製化することには、これまで述べてきたようにシナジーと優位性が期待できるが、おそらくSteve Jobsが考えているのは、それをしなかった場合のリスクだ。

将来的には、ハンドセット(handset, 携帯電話機ハードウェア)のOEMたちがもっぱら買うのは”パッケージソリューション”だ。それは、アプリケーションプロセッサ(AppleのA4に相当…携帯電話にコンピュータとしての能力=ソフトとアプリケーションを動かす能力を与える)、統合化された接続性チップ(GPS、Wi-Fi、FM、Bluetooth、NFCなど)、そして多機能無線機能が一体化して、単一のベンダから提供される製品だ。Qualcommの現状は、そんなベンダに近い。そしてIntelはInfineonとAtomプロセッサを結びつけて、その立場に立とうとしている。

これが、Appleにとって脅威になる。QualcommとIntelは、デジタルのインタフェイスロジックの各部分を彼らのアプリケーションプロセッサの中へ、それぞれ独自のやり方で統合化し、必要なものがすべて同梱されたソリューションとして売り込もうとするだろう。そんなとき、A4アプリケーションプロセッサの新バージョンを抱えて、商用ワイヤレスチップセットの結婚相手を探すAppleの姿は、影の薄いものになる。

このように統合化のレベルが非常に高度化し、モバイルのイノベーションがますます加速していくとき、”中途半端な”垂直統合は、Appleにとって危険な旅路だ。モバイルの世界に参入したAppleは、もはや昔のAppleではない。Infineonを買収すれば、上にリストアップした必要なものをすべてAppleは入手し、モバイルデバイス企業としての未来を、完全にコントロールできるのだ。

そしてもしもAppleがこの機会を逃したら、そういうことのためにワイヤレスのテクノロジを手に入れることのできる次の機会はない。モバイル用電子部品のヴァリューチェインは今後整理統合され、巨人たちだけが残るからだ。

IntelがInfineonの獲得をあせっていると噂されるのも、そのためだ。Intelもモバイルに対して大きな野心を持っているから、機会を逃すことはできないと十分に承知している。問題は、Appleにこの入札合戦に参加する意思があるかどうかだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))