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[jp]ネットビジネスの起業環境に見るエンジニアの重要性――サイバーエージェントCEOが語る

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少し前の話しになってしまうが、8月2日にサイバーエージェントが実施する起業支援プログラム「Startups2010」のキックオフのカンファレンスが開催された。起業家やベンチャーキャピタリストなどが登壇したこのイベントには、いくつか起業とインターネットビジネスに関するヒントが隠されていたように思う。

サイバーエージェントCEOの藤田晋氏が最近のインターネットを取り巻くビジネス環境について語っていたのだが、なぜ今エンジニアが必要なのか、なぜそこに注目が集まっているのかについて改めて明快に説明していたので紹介したい。

サイバーエージェントは中心事業が広告代理店業からアメーバのメディア事業へと変貌を遂げている(もちろん、ほかにもベンチャーキャピタル事業やFX事業、オンラインゲームなどビジネスは多岐に渡っているのだが)。その変化の中で、藤田氏がこの数年にたどり着いた考え――インターネットビジネスにおけるエンジニアの必要性――について20分ほどスピーチしていた。たぶん、この話はこのビジネスに携わっている人なら当然ということになるのかもしれない。キーワードはサービスの「内製化」だ。それを作るのがエンジニアとなるわけだが、内製化できる体制こそ事業の差別化の要因となる。

少し話は変わるが、以前に何人かのベンチャーキャピタリストたちと話す機会があったが、ビジネスプランにしてもアイデアはよくてもモノ(この場合はサービスの場合が多いが)を実装できなければそれが現実にいいものかどうかの判断しようがないというのが、彼らの言い分だ。結局モノが作れるのかどうかが投資の分かれ道にもなる。

そのあたりに気がついてない人もいるだろうから、藤田氏のスピーチのメモを掲載しておこう。

    サイバーエージェントは1998年に会社を設立して13年目。この13年間ネット業界を見てきて、ネット業界ではエンジニアやクリエイターの力が大事だと言われていたが、実際のビジネスに際立って活躍したものは特には日本で見られなかった。けれども、この1、2年においては変化が大きくて、エンジニアが面白いものを作ることがなによりも大事だと頭を切り替えてやってきている。
  • ネット上ではグリーやディー・エヌ・エー、楽天、ヤフーといった会社のエンジニアの採用をよくみかける。実際、エンジニア採用の成功報酬フィーを2倍、3倍にしても採りたい、エンジニアの採用費はいくらかかってもいいから採用したいということになっている。まさにかつてないほどのエンジニアの取り合いとなっていて、エンジニアの価値が高まっている。
  • 普通の産業の普通の事業を興すときに、先行投資として工場を作って、材料を仕入れて、製品を作ってというように何百億という莫大な投資がかかる。しかし、アメーバにしてもインターネットのサービスの先行投資というのはエンジニアとクリエイターがカチャカチャとパソコンで作っただけ。莫大な投資がいらない。昨今ではクラウドコンピューティングやソーシャルアプリでのサービスによって、事業をスタートさせるコストが下がっている。つまり、人が先行投資どころで、その人の技術力だったり、企画力だったり、実行力だったり、情熱とかがそのまま企業としてのビジネスの「差」となっている。エンジニアがかつてないほど重要だという条件になってきている。
  • そこが大きなポイントで、自社のサービスとしてウェブサイトを作ったり、アプリを作ったり、ゲームを作ったりするときに非常に重要となるのは「内製化」であるとみんな気が付き始めている。サイバーエージェントでも痛感しているところ。
  • ネットのサービスは実際にスタートしてから、ユーザーの反響、ユーザーの意見を反映させながら、ローンチしたあとに柔軟に改善を積み重ねていかなければならない。そこを内製でやっているのと外注でやっているのとでは、スピード感に大きな差が生まれる。インターネットのユーザーは非常に気が短い。非常に短い期間で改善を積み重ねていかないと、あっという間に離れていくので、内製化しなければならない。
  • ネットサービスについてTwitterにしてもiPhoneにしても、面白さをいかに企画書に落し込んでプレゼンテーションしても、結局誰もわからない。Twitterそのものを自分の手で使って触って面白いと気が付くもので、iPhoneのUIもそうだが、非常に沢山の機能をボタン一個で操作できるのをいいかどうかは使ってみないとわからない。ネットビジネスをするうえで、エンジニアのもっともすぐれているのは自分でプロトタイプを作れること。「こういうものです」というのを言葉で説明されてわからなかったものが、使ってみたら「これはイイ」「これは流行る」というのを実感できるのは大きい。
  • ネットサービスの歴史の中で、2000年以前はソフトバンクに代表されるように黒船経営で、アメリカから流行ったものを日本に持ってくるというものだった。それがやがてミクシィに代表されるように海外で流行ったものを持ってくるのではなくて、自分たちで作るように変化している。真似するものをも自分たちで作っていくだけではなくて、Facebookみたいに世界を相手にするサービスを作らなければならない。世界進出するうえで重要なのが、やはり技術力をメインとしたGoogleやFacebook、Amazonのようなサービスで、誰でも使ってくれるようなサービスを作りだすのが、エンジニアで技術力だと気付き始めている。
  • 広告代理店業だとかアメーバのようなメディア事業は日本語のコミュニケーションが強みになっているので、非常にドメスティックになりやすい。電通や博報堂のような広告代理店も、テレビ局とか新聞社とかのメディア企業もドメスティックだということからわかるように、日本語のコミュニケーションを軸にしている企業だと海外に行きづらい。したがって、これからグローバル化していくビジネス環境では技術力重視になってきている。
  • 2000年前後には小さい会社が立ち上げたものが注目されて、大きな資金を集めて事業化することができた。ライブドアが活躍してたいたころは日本のインターネット市場は非常にお金がかかるもので、新しい事業を始めるのに大規模なウェブサイトを立ち上げなければならなくて、組織力も必要だったし、大きな資金力も必要だった。ヤフーやGMOや楽天という会社が事業を多角的に展開し、新規で新しいベンチャーが出づらい環境が続いていた。
  • ライブドアショックが起きた2006年以降5年は世間がベンチャービジネスに対して懐疑的になり、ベンチャーにとっては厳しい状況が続いている。ただ、この1年で好転してきているのも事実。ソーシャルアプリ、クラウドコンピューティングなどによって、他のプラットフォームで広告費なしでユーザーに知らしめることができるし、資金のリスクなくサービスを立ちあげられる。海外にも展開できる。
  • 資金という意味では、人とアイデアが必要ということを言ったが、非常に安く事業をスタートできるローリスクでハイリターンな事業はネットサービスをおいてほかにはない。難易度が高いのは人がまったく集まらないことで、ネット業界は経験を積んだ人はいないし、ベンチャーは即戦力となる人が集められずに事業を拡大できないということがある。だから、人を集めた会社が成功を遂げるだろう