[jp] セカイカメラがソーシャルコミュニケーションプラットフォームになる日

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頓智・(トンチドット)の動きが激しい。Open Airの公開からSoLARコンセプトの発表、セカイアプリの本格稼働を明らかにした新ビジョン発表会に、KDDIによる4.5億円の第三者割当増資の実施。広くなったオフィスには続々と新しいメンバーが加わっている。激しい動きの一方で、セカイカメラが2年前のプレゼンテーションで見せてくれた夢はまだ現実になっているとはいい難い。「BEYOND REALITY(セカイを超えて遊べ)」ーー新しく発表されたスローガンが向かう先に待っているのはどんなゴールなのか。CEOの井口尊仁氏に話を聞いた。

セカイカメラは「現実世界をタギングする」というコンセプトとセンセーショナルなパフォーマンスで世界を席巻したプロダクトだ。全世界に公開されたのが2009年12月。90カ国対応で今までダウンロードされた回数は120万になる。ユーザー数などについてはまだ非公開としながらも「foursquareやgowallaなどと同等のレベルで公開できる日が近い」そうだ。

「セカイカメラのコアバリューは現実空間をいかに楽しく豊かにするか。ミッションはソーシャルコミュニケーションを使って生活体験を改革していくこと」で、これからのセカイカメラは「人と出会い、人と繫がるソーシャルAR」を目指すと語る。

では、頓智・が考える「人と繫がるソーシャルAR」とは一体なんなのか。

現実空間で実際に歩いてる人やイベント会場に集まった人々のソーシャルグラフがARを通して見える。同じ趣味や嗜好を持った人を選んでその場所でフォローしたりlike(いいね)したり出来るーー人と人が繫がるソーシャル体験をARがさらに可視化してくれるーーセカイカメラはこんな未来に向かっている。このミュージッククリップは頓智・が作ったものではないが、イメージとして大変近い。

「以前からTwitterやfacebookのアカウントがその人にオーバーレイされて、フォローしたりlikeできたらいいよね、とよくいわれた。確かにバージョン2.0でエアプロフというものは実現して、ユーザープロフィールを浮かべてフォローしたりできた」。しかしこの機能、お互いのセカイカメラが立ち上がっている状態でなければ不可能。これではハードルが高過ぎる。

これを改善するためにチェックインを使った方法を考えているという。例えば自分がある場所でチェックインするとそこからエアプロフがセットされる。iOS4から可能になったマルチタスクを使ってバックグラウンドで稼働させる必要はあるものの、この状態であればAR体験を通してその人のソーシャルグラフが可視化されるという具合だ。アンドロイドは元々マルチタスクなのでその心配はない。

「例えばイベント会場で事前にお互いのソーシャルグラフをみてポーク(facebookでトントンと相手をつつく行為で、自分の存在をアピールする方法)することができる。こんなマーケットはまだない」と井口氏。

「セカイカメラのソーシャルグラフがなくてもTwitterやfacebookのソーシャルグラフがあればそれが活用できる」。ポーケンやBumpといった現実世界とソーシャルグラフをつなげるツールはあるものの、出会った後に使うものだ。一緒の空間にいるけれど、先にソーシャルで繫がる。言葉にするとややこしいが、実際はもっと直感的だろう。

もうひとつ、ライブビューについても「ライブビューですべてやる必要はない」と、新しいインターフェースの可能性を示唆してくれた。ライブビュー以外のインターフェースといえばセカイライフだ。ソーシャルウェブの多くが採用しはじめているタイムラインは人と人とがコミュニケーションを通じてリアルタイムに繫がる重要な役割を果たしている。

しかし現状のセカイライフはあくまでタギングしたアクティビティを表示しているにすぎない。詳しくはまだこれからという話だったが、おそらくこのセカイライフが大幅に改善されるのだろう。ライブビューとタイムラインの使い分けは非常に重要なポイントになるはずだ。

では、このような未来があるとして、セカイカメラはやはりどのようなビジネスをするのだろうか。

まず井口氏は「セカイカメラは人と人がであうフロントエンドに立ちたい。ここでゲームやアプリが意味を持つようになる」と、バージョン2.4.2から本格稼働したセカイアプリについて話をはじめた。「今のビジネストレンドでソーシャルアプリをやりたいのかといわれれば心外。全ては現実空間でソーシャルに出会えるというゴールにたどり着くための仕掛けにすぎない」と語る。

このムービーに出てくるセカイアプリの例を全てソーシャルに繫がるためのきっかけと考えるとイメージしやすい。

実際に彼らが国立美術館で実施したマン・レイ展は、セカイカメラを通してあの有名なくちびるのオブジェが現実空間にオーバーレイして見えるというものだった。

例えばこのプロジェクト自体をセカイアプリで作った(実際にできる)としよう。マン・レイというコミュニティに参加したい人たちはこのアプリをダウンロードすればいいし、そこにチェックインした人たちと繫がることができる。アプリ自体を課金にしてもいいだろうし、その中でバーチャルアイテムの販売も考えられるかもしれない。想像力さえ働けば作れるアプリのアイデアは無限にあるだろう。

セカイカメラを使うモチベーションがソーシャルな繫がりに向かうのであれば、そこに様々な価値提供、ビジネスのチャンスがあるというのが井口氏の考えだ。「端的にいえば遊びと発見。出会ったときにセカイアプリがダウンロードされるような流れをもっていきたい」と同氏。

先日、第三者割当を実施したKDDIとの連携については「とにかくアイデアやARに向き合うスタンスが近い。リリースしたセカイカメラZOOMはアクティブも好調で、対応端末の出荷台数は1000万台以上」になると語る。またIS01にもプリインストールされたアンドロイドへのセカイアプリ対応は「年内を目指す」そうだ。

セカイアプリが重要なキーになるのであれば、課金の利便性やコンテンツプロバイダーなどとの連携が強いKDDIとの連携は頓智・にとってプラスに働くことは容易に想像できる。今後についても、まだはっきりと公表はできないもののさらなる連携強化があると話してくれた。

セカイカメラに疑問を投げかける人は多い。しかし想像できないプロダクトだからこそ、そこにスタートアップがチャレンジすべき可能性が存在する。彼らが本当にこのエコシステムを完成させることに成功すれば、ソーシャルコミュニケーションプラットフォームとして新しい価値を世界に提示できる日がやってくるだろう。