ゲスト寄稿:ちっぽけなソマリランドは、世界初のキャッシュレス社会になれるか?

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ボブ・ディランがある時こう言った、「カネはしゃべらない、毒づくだけだ」。しかし、アフリカのソマリランドの首都ハルゲイサでは、金は腐っている。文字通り腐った紙のような悪臭を放っている。まるでモンスーンの中の雨漏りのする図書館のように。

なぜなら、多すぎるからだ。1ドルが1万7000ソマリランド・シリングに当たり、最高額紙弊は500シリング札なのだが、これが決して最も出回っている紙弊ではない。両替商は札束の山に囲まれ(左の写真、下のビデオ)、子供たちは手押し車一杯の札と共に動き回る。1930年代ワイマール期ドイツでドイツマルクの価値がなくなった頃を彷彿させる。

ここではあらゆる場面で現金が役に立たない。果たして、名もない小国ソマリランドは世界初のキャッシュレス社会になれるのだろうか。それは可能であるどころか、ほぼ確実である。そうなることを示す強い根拠がすでにある。ソマリランド離散民からの送金のために必要に迫られて作られた送金システムと、モバイルバンキングの急成長によって、この国は現金を廃止せざるを得なくなった。まずは背景から見てみよう。

通貨は正式に認められたものではなく、国自体もそうである。ソマリランドにはATMがなく、クレジットカードは使えないばかりか、地元民にとってはとんでもない代物であると考えられている。同国は1991年、ソマリアとの残虐な内戦後に独立を宣言し、現在は報道の自由も自由市場もあり、最近の選挙は自由で公正なものであったことが広く認識されている。

かなりの数の離散民がDahabshiilを使って祖国に米ドルを送金している。これはアフリカ版のWestern Union(米国拠点の通信・送金事業会社)であり、非常に効率が良い。ソマリランドの人々は、世界中どこで支払われた資金であっても、資金が144ヵ国にある2万4000箇所の代理店および支店を通じて入金されてから5分以内に米ドルを引き出すことができる。さらには、金銭を引き出すことが可能になったことを知らせるSMSまで送られてくる。

エチオピアから陸路で到着した後、私はDahabshiilをありがたく思った。エチオピアに空路到着する前に、私はムンバイで2本目の「ボリウッド」(*)映画に出演していた。そこでは私にもトレーラーの楽屋が与えられ、係員が日傘を差しかけて送り迎えし、その他なにくれとなく世話をやいてくれた。もし私が当地でドルの全財産を引き出したら同様のトレーラーが必要になったかもしれない。もちろんそんなことは明らかに馬鹿げているし、長くは維持できなかっただろうが。
[* インド、ムンバイで作られる映画の俗称]

その結果、主要モバイルキャリアーのSelesomが、現金を完全に回避するサービスを開始した。アフリカでのモバイルバンキングは決して新しいものではなく、欧米やアジアよりもはるかに進んでいるのだが、ソマリランドではこれをさらに次の段階へと押し上げることが可能だ。なぜなら、国自体が正式に存在していないからだ。国家予算がわずか4000万ドルなので、世界中でこの国を正式に認めてもらうべく努力を続ける上で、起業家精神と革新は不可欠である。

ハルゲイサでは過去6ヵ月以内に8万人以上の人たちが、送金、店舗での買い物、料金支払い等のためにSelesomのモバイル金融サービス、ZAADに登録した。イギリスの広さで人口わずか350万からなる「国」に5つのキャリアーがひしめき、すでに活況を呈しているモバイル市場において、これは際立った数字でであるといえる。

ソマリランドからの通話料金はアフリカで最も安く、国内キャリアー間の熾烈な競争の結果、他のアフリカ諸国の5~6分の1の価格になっている。Dahabshiilのファウンダー、Mohamed Saed Dualeは、最近Somtelを立ち上げ、Telesom、Telcom、Africa Online、Nationlink、Soltelcoに続く6番目のキャリアーとして、市場に参戦した。

狙いは明確だ。Somtelは、親会社の持つ18年にわたる電信送金の経験をいかして、モバイル金融分野でSelesomに戦いを挑む。離散民たちは母国への送金を続けるが、受け手はもはや銀行や両替商に行く必要がない。

あらゆる取引に必要なのは携帯電話だけ、すなわち両替商はソマリランドの現金の殿堂から永遠に追放されることになる。Selesomが開拓した道をSomtelが支配しようと企て、他の4キャリアーも間違いなく模倣してくるだろう。

So while the world wasn’t watching, a small peaceful country in the Horn of Africa that doesn’t officially exist will set an example that the rest of Africa will inevitably follow. Funny old world. Perhaps Dylan should write a song about it.

こうして世界の目に止まらないうちに、アフリカの角にある小さくて平和な、公式には存在していない国が、他のアフリカ諸国がいやおうなく後を追うであろう一つの手本を示そうとしている。古くておかしな世界だ。たぶんディランが歌にするべきだろう。

Monty Munfordは、モバイル、デジタルメディアのほか、ウェブとジャーナリズムの分野で15年以上の経験を持ち、2年間のインド滞在を経て2010年9月に英国に戻った。その間、LAのParamount Digital EntertainmentやLiverpool FCなどのクライアントのコンタルタントとして、コンテンツをインドのモバイルユーザーに届け、ロンドン、ダブリン、シンガポールのイベントで講演し、2010年12月公開の巨額予算ボリウッド映画2作に、せりふのある役で出演した。

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(翻訳:Nob Takahashi)