Nexus OneはGoogleの夢だった, それをぶちこわしたのがキャリアの亡霊

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携帯電話は無料であるべきだ.”

GoogleのCEO Eric Schmidtが2006年の11月に、Reuters(ロイター通信)にこう語っている。それはAndroidプロジェクトが発表されるちょうど1年前だ。iPhoneの発売も、まだ数か月後だ(当時のSchmidはAppleの取締役だった)。その時点でSchmidtは、GoogleとAppleの両者がモバイル業界の変革に乗り出す瀬戸際にいることを、知っていたはずだ。変革がおおげさなら、少なくとも自分が今考えているとおりになる、とは思っていたはずだ。

モバイル業界の現状(とくに合衆国)が、消費者の目から見て、2006年よりも良くなっていることは、疑問の余地がない。そして、そう、それはほとんどAppleとGoogleのおかげだ。でも、無料の携帯電話はどうなったのだ? そんなものは、どこにもない。しかし昨年は、一瞬だけあった。しかし、そのときのGoogleの夢は、悪夢へと一変した。

その話をする前に、”無料”の意味をはっきりさせておこう。”無料”の携帯電話なら、今すでに大量に出回っているが、それは携帯電話の生涯契約の見返りサービスが”電話機本体は無料”という形になっているにすぎない。それはまあ、一種のマーケティング的なまやかしである。しかしSchmidtが言ったのは、そういう意味の無料ではない。

彼の言う無料は、通話や通信の無料も含む。今後携帯電話からの広告収入は膨大なものになるから、電話機もユーザの利用も完全に無料にできる。それも、ある意味では本当の無料ではないが、契約の見返りサービスとして電話機が無料、という話に比べれば、相当本格的に無料である。

そしてSchmidtのビジョンは昨年、ほとんど実現していた。複数の情報筋によると、Nexus One(初めての本物の”Google Phone”と呼ばれた)の当初のプランは、それをアンロックで99ドルで発売することだった。くどいようだけど、アンロックで99ドルですぞ。

どうやってそれを? Googleがサービスぶんを負担するのだ。モバイルの広告は順調に伸びていたから、1台あたり数百ドルをユーザにサービスしても、余裕だ(それがメーカーのHTCに支払われる)。しかも、それによって市場は爆発的に巨大化するだろう。99ドルだから無料ではないが、かなり無料に近い。

そして、何が起きたか?

どうやら、ここでキャリアが介入したらしい。

ご存じのように、Googleの壮大なモバイル計画には、厄介な問題が一つあった。Google自身が携帯電話サービスを提供していないことだ。Googleの携帯電話が使えるためには、キャリアのサポートが必要だ。それがなければ、Nexus Oneは携帯型のWiFiデバイスでしかない(Googleはその方向も検討した)。

Googleの問題はもう一つあった。そのときはすでに各社によるAndroidの採用が本格化していて、Nexus Oneがこれまでなかった携帯電話を目指すとはいっても、キャリアに全面依存する点ではほかの携帯電話と変わらなかった。いくらプラットホームの純潔を維持したくても、キャリアの手が触れない箱入り娘にすることは不可能だ。Googleは、妥協せざるをえなかった。

Nexus Oneは、アンロックの99ドルではなく、キャリア特定で179ドルになった…T-Mobileとの2年契約の見返りとして…。アンロックも買おうと思えば買えたが、それは529ドルだった。

Nexus Oneの発表会でGoogleは、Verizonからも発売される、と発表した。2か月後には、SprintとAT&Tも加わった。合衆国のメジャーなキャリアがすべて、Google Phoneを売ることになった。長期契約と、その代償としての本体サービス価格で。

それは、Googleの最初の計画とは全然違っていた。

Googleのでっかい携帯業界革命計画は、デバイスをオンラインで売ることがベースだった。キャリアたちはそれを黙認したが、たぶん頓挫することを見越していたのだろう。それからわずか数か月後に、文字どおりそれは頓挫した。

2010年の5月にGoogleは、Nexus Oneを(デベロッパ向けを除いて)自分のところでは売らないと発表した。しかもその発表は、SprintやVerizonが自社バージョンのデバイスを発売する前だ。何がどうなったのか? Nexus Oneはバカ安のスーパーフォン(super phone, smart phoneに対抗してGoogleはNexus Oneをそう呼んだ)ではなく、普通の価格の、あまり売れないスマートフォンになってしまった。

すべて、キャリア様のせいだ。

今朝(米国時間9/9)Robert Scobleが、これと同様の(もっと短い)話をTwitterでつぶやいた。”夕べ会って話を聞いたGoogleのVPによると、GoogleはAndroidのマーケットシェアを拡大したくて、原則を曲げたのだ“と彼はツイートしている。”GoogleのそのVPが何と言ったかって? GoogleはNexus Oneの経験から、すべてのカードをキャリアが握っていることを理解したのだ。彼ら抜きでは、プレイはできない”、彼はそう続けた。大当たり!だ。

Googleを責めるのは酷な面もある。だって、ほかにどうすればよかったのか? ほかの手はない。しかし一方では、振り子は今、逆の方向に振れ始めていて、キャリアたちがAndroidのオープン性を利用して業界全体を10年昔に戻そうとしている。Googleは、それに黙って従っている。

そこで、残されたたった一つの希望は、GoogleがGoogle VoiceとVoIPを結びつけて今後のWiFi網の拡張の波に乗り、古い高価な電話網を抱えたキャリアたちを置き去りにしてしまうことだ。あるいは、Googleが実現のために奮闘してきたOpen Spectrumの制度の恩恵に与って、やはり既存のキャリアを出し抜いてしまうことだ。しかし、最近GoogleがVerizonと交わしたネットの中立性をめぐるごまかしを見れば、期待もしぼんでしまう。

急成長しているAndroidは、今ではAppleの互角な敵だ。Microsoftも、Windows Phone 7で巻き返そうとしている。この状況では、Googleがすべてを抜本的に変えるのは、もう無理なのではないか。かつてGoogleは抜本的な改革に着手した。キャリアが邪魔に入った。この現状で、Schmidtが約束した無料の携帯電話にいちばん近いものといえば、VerizonやAT&TやSprintやT-Mobileと2年契約を結ぶことだ。

少なくとも電話機は、”無料”になる。

[画像: New Line Cinemas]

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))