検索バブルはいかにしてサービスの成長を妨げてしまったのか。当事者の視点から歴史を振り返り、現在の危機を認知する

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Ali Partoviはエンジェル投資家兼スタートアップアドバイザーで、起業経験も多数だ。共同創立者となっていたiLikeは2009年にMySpaceが買収し、その前のLinkExchangeは1998年にマイクロソフトが$265M(2億6500万ドル)で買収している。ポートフォリオにはZappos、Tellme、Ironport、およびFacebookなどの成功企業を見ることができる。Facebook Platformの重要性を最初に認識していた1人であり、本稿をお読み頂ければわかるように、検索サービスにおけるビジネスチャンスを最初期から認識してもいた。

8月に、Paul Grahamが非常に興味深い記事を書いていた。タイトルは「What Happened to Yahoo」で、Yahooの衰退を2つの原因に求めて分析した記事だ。要因のひとつはバナー広告によってもたらされる「イージーマネー」(訳注:一攫千金、あぶく銭などと訳される)で、このせいで90年代後半には「検索」の持つ意味を見損なってしまった。また、2番目の要因として、テック企業としての立ち位置を確定できず、質の低いエンジニアを雇ってイノベーションを蔑ろにしたことだ。このGrahamの記事に同意する。同意はするが、Yahooについてはもう少し言いたいこともある。

大学を中退した18歳のScott Banisterが、シンプルながら歴史上もっとも優れたビジネスアイデアを思いついた1996年から振り返ってみよう。

これまでJohn Battelleなどの検索サービスの歴史を語る人は、検索に関わるビジネスモデルをGoto.comのBill Grossによるものだとしてきた。確かにGrossはビジネスモデルの価値を認識してサービスを現実のものとした点で評価に値する人物だ。しかしアイデア自体を考案したのは別の人の手になるものだ。まず90年代後半における検索サービスの状況を確認するところから始めてみる。

検索広告の始まり:「キーワード」

Googleが勃興してくるまで、検索といえばYahooの独壇場だった。検索に関するトラフィックはほとんどYahooを経由するもので、Yahooの牙城は崩し得ないものと思われていた。他に検索サービスを行っていたのはExcite、Altavista、Netscape、MSN、およびAOLだ。こうした検索サービスはすべて、Grahamが言うところの「イージーマネー」にとらわれて凋落していった。すなわちドットコムバブルの時代、バナー広告を売るだけで大いに金になった(買い手はVCが投資していたドットコム系スタートアップだ)。この「イージーマネー」のせいで皆、真のビジネスチャンスに気づかずに時を過ごしてしまったのだ。真のチャンスについて言及する人もいたが、それでも検索サービス各社は盲目になってしまっていた。

可能性を持つ大手檢索サービスが真の価値を無視している間、それでも重要性に目を向けるスタートアップはあった。但し気づいたのはいずれも小さな企業だ。たとえばViaweb(Paul Grahamによるスタートアップ企業)、Submit-It(Scotto Banisterが始めた)、およびLinkExchange(筆者はここで仕事をしていた)などだ。

1997年、Viawebが商店向けのワンストップ電子商取引サイトサービスを開始した。検索を利用して売り上げ増を目指す仕組みを取り入れたものだった。売り上げの中から手数料を支払う企業からの商品を優先的に掲載する商品検索エンジンを取り入れていたのだ。収益を最大化するのにコンバージョンデータを利用しようとする試みだった。この仕組みは「Revenue Loop」と呼ばれるようになった。

Paul Grahamの書いた記事によれば、Yahooに対して最初にこのRevenue Loopを紹介したのは1998年初頭だったとのことだ。こうしたシステムを導入することで、Yahooに集まる検索トラフィックをさらに有効に活用できると説明した。しかし驚くべきことにYahooは全く関心を示さなかったらしい。但しYahooはViawebの買収に動く。後にGrahamはViawebで働きつつ、Yahooが戦略的検索サービスの真価を理解していないことを直接に感じ取った。割合で言えばYahooの全検索関連トラフィック中6%に過ぎないものとして軽視していたというのだ。「顧客がバナー広告に大金を支払い続ける中、検索サービスの可能性についてじっくり考えるというのは困難だった」と当時を振り返っている。

さらにGrahamは「私自身も検索サービスの真価について理解が欠けていました」と書いている。しかし私自身、1997年にGrahamと同席した際に、インターネット上で最も重要な戦略的位置を持つのは検索であると話をしたことを覚えている。2人で協力して、双方の会社をYahooに売ることを夢見てもいた。ではなぜ実際に検索サービスを行っている企業が検索の重要性に気づかない中、我々2人がその重要性に気付くこととなったのだろうか。それは私たちが検索ビジネスの背景について理解するというアドバンテージを持っていたからだ。私たちは、当時のYahooが顧客として認識もしていなかったスモールビジネス運営者たちと日々コミュニケーションを行っていた。彼らはYahooサーチで名前が出てくるようにしたいと強く希望しており、私たちは日々そういう話を耳にしていたわけだ。

但し、検索の真の可能性について最初に気づいたのが私たちだと言うつもりはない。

私たちが動き始めた数年前に、寮生活を送っていたScott BanisterがSubmit-Itのサービスを開始している。これはウェブサイトを制作した人が複数の検索エンジンおよびディレクトリサービスにURLを投稿することのできるものだ。ウェブを制作した人が、検索エンジンに登録されることを非常に強く望んでいたことに目をつけたサービスだ。そして1996年、彼の慧眼で「検索キーワード」に関するサービスを思いついた。検索結果に表示される権利を競売するというアイデアだ。今日のAdWordsに似たものと考えてもらえば良いだろう。Banisterはこのアイデアをあちこちに売り込み始めた。相手はIdeaLabのBill Gross、LinkExchangeのプリンシパルであったTony Hsieh、Sanjay Madan、それに私も彼の売り込みを受けた。

先に登場したBill Grossはこのアイデアを採用し、1998年にGoto.comを立ち上げた(後にOvertureとなり、現在はYahooが所有している)。

Tony Hsieh、Sanjay Madan、そして私もScott Banisterのアイデアが気に入った。まさにそのアイデアが必要となる顧客を抱えていたからだ。LinkExchangeは百万件にも及ぶ小規模ウェブサイトにトラフィックを呼び込むサービスを提供していた。私たちのもとには「Yahooで検索結果に表示されるように手伝ってもらえないか」というようなメールが日々届いていた。こういうニーズがあれば、個々の検索クエリーで上位に表示される権利をオークションで販売するというシンプルな(しかし経済的には大きな価値がある)アイデアと結びつけるのも必然だったと言えるだろう。LinkExchangeはSubmit-Itを買収し、ぜひとも検索界の超大物でかつ世界を牛耳っているYahooでBanisterのビジョンを現実化してみたいと考えるようになった。

1997年から2000年にかけて、私たちはこの「キーワード」サービスのアイデアを売り込むために何十回もYahooを訪問した。検索結果画面の脇に、検索キーワードに基づく広告を表示するというアイデアは非常に有望に思えた。Yahooは私たちの提案を何度も却下したが、私たちはYahooエグゼクティブのほとんど全員にアイデアの売り込みを行った。アイデア売り込みの手法を変え、またこのアイデアがいかに利益をもたらすものになるのかというデータを添えて売り込み続けた。しかし私たちの売り込みは全く成果に結びつくことはなかった。

Paul Grahamが最初に「Revenue Loop」を売り込み始めたときのように、私もアイデアをYahooに対してうまく伝えられていないのかと考えた。しかしやがてYahooが検索サービスの価値に気づいていないのだということがわかった。Yahooは最も価値のある資産を抱えながら、その価値に気づかずにいたわけだ。

こうした盲目ぶりはYahooのみに見られたものではない。検索サービスを展開していた他の大手企業もやはり価値に気づいていなかった。Yahooに売り込みを行っていたのと同じ時期、私たちは検索結果画面に表示するペイド・リスティングのアイデアを他の検索ポータルにも売り込みを行っていた。しかしいずれも私たちのアイデアはプライオリティの低いものとして却下した。彼らはバナー広告から得られる膨大な利益の上に胡座をかいていたわけだ。

1998年末、マイクロソフトはLinkExchangeを$265M(2億6500万ドル)で買収した。キーワードリスティングのアイデアが気に入ったという話だった。そして私たちはマイクロソフトに移り、そこからまたYahooや勃興し始めたGoogleに対して売り込みを開始した。YahooやGoogleに、マイクロソフトと組むということに躊躇する気持ちがあるのは織り込み済みだった。しかしマイクロソフト自身の中にも、キーワードリスティングのアイデアに対して根強い抵抗感があることには驚かされた。

2年間におよぶ官僚的意思決定システムとの戦いの末、ついに2000年にはMSNにキーワードリスティング機能を持ち込むことができた。このサービスは急速に成長し、MSNの広告セールス部門はバナー広告の売り上げを上回るのではないかと恐怖する(実際に恐れていた)までになった。そして数カ月後には(非公式に)キーワードリスティングサービスを停止してしまった。Yahooの失敗がPaul Grahamの言うように「技術」というものに対する立ち位置が不明確だったことによるならば、マイクロソフトは広告セールスに対する認識を誤って失敗したわけだ。シニアエグゼクティブに状況の打開を願ったが、これは聞き入れてもらえなかった。ことの顛末は、10年後にWall Street Journalに掲載された「Microsoft Bid to Beat Google Builds on a History of Misses」という記事にも記されている(記事のリプリント版はこちらにある)。

後になって判断すれば、Adwordsが単純かつエレガントで、膨大な利益を約束するものであることは、あまりにも明白だ。しかしYahooおよび他の検索大手はドットコムバブルのもたらすイージーマネーに目が眩み、検索サービスがもたらす長期的利益が全く目に入らなくなっていたのだ。

買収による人材獲得と、才能を活かすことの困難さ

Grahamの記事では、Yahoo没落の第2の要因としてレベルの低いエンジニアを採用し、イノベーションを軽視したことによると記されている。Yahooが採用したエンジニアの質について云々する準備はない。ただしレベルの低いエンジニアが企業を台無しにしてしまうということについては全く同意する。

Grahamは続けて「質の高いエンジニアが雇えなくても、買ってしまうことで低レベルエンジニアがもたらす負のスパイラルから脱却できる」と書いている(つまりは他企業を買収することによって、ということだ)。しかしGrahamはYahooがこちらの方法で成功したとも書いていない。自身に関わることなのであからさまに記していないが、Yahooはインターネットの歴史上最も優れたハッカーたちが集っていたViawebを買収するにはしたのだ。Grahamもこの一員だった。

この点での問題は、外部からタレントを連れてきてそれでおしまいとはならないことにある。連れてきた後にエンパワーメントが必要となるのだ。経済的なインセンティブを与えるだけでは十分でない。彼らに実際の仕事をさせる仕組みが必要だ。優れたアントレプレナーやエンジニアが条件付きボーナスを無視して、期待される指導的役割を認知して実行することもなく企業を去っていく。

Viawebの場合も、Paul GrahamはYahooで十分に活躍したとは言えない。ボストンからカリフォルニアに居は移したものの、結局Viawebの優秀なエンジニアたちはYahooを去ってしまった。

同様のことがLinkExchangeを買収したマイクロソフトの場合にも起こった。買収によってScott Nanister(後にIronPortを創業した)、Tony Hsieh(後にZapposのCEOとなる)、Alfred Lin(後にZapposのCOO)、また契約によりMax Levchin(後にPayPalSlideを創業した)など優秀な若者を獲得した。全員が25歳以下で、マイクロソフトでは重要な役割を与えてもらえなかった。そして全員がほんの数カ月でマイクロソフトを辞めてしまった。彼らは(合計で)数千万ドルの権利を捨てて新たなベンチャーを起業し、(やはり合計で)数十億ドルを稼ぎ出した。

買収の成否は、優秀な人材を保有し続けられるのかによっても測られる。そして優秀な人材を確保しておくにはやはりエンパワーメントが重要なのだ。たとえば最近の例としてGoogleによる買収を見てみよう。Evan Williams(Blogger)やDennis Crowley(Dodgeball)は、それぞれGoogleを辞しTwitterおよびFoursquareを生み出した。一方Chad Hurley(YouTube)およびFarzad “Fuzzy” Khosrowshahi(XL2web – 現在はGoogleスプレッドシートになっている)はGoogleに残った。BloggerおよびDodgeballが消え去り、YouTubeとGoogleドキュメントが生き残っているのはそういうわけだ。

大企業の立場から見ると、アントレプレナーにビジネス遂行のための余裕だけでなく、イノベーションにかけるゆとりも与えることができれば買収がうまく機能することが多い(大企業側にも刺激を与え、活性化するのに役立つ)。Googleが最近の買収ラッシュによるタレント獲得をうまく活用できるのかどうかは注目に値するだろう。

バブル継続の危険性について

GrahamはYahoo衰亡の理由を2つの原因に帰しているが、私としてはドットコムバブルによるイージーマネーが主因だと考えている。このイージーマネーがYahooのみならず、同時期他企業にとってもアキレス腱となってしまったのだ。技術者に才能があり、経営陣が優秀であっても、バブル期に生じた短期的収益が、長期的な価値に眼を向けることを実際上不可能にしてしまったのだ。

バブル期の教訓は今日でも生きている。イージーマネーやイージートラフィックは企業の規模を問わず現在でも危険なものとして認識しておかねばならない。

90年代後半にドットコムバブルがさまざまな企業に危険な影響を及ぼしたのと同様に、Facebookアプリケーションプラットフォームを利用して簡単にトラフィックや金を集めるという風潮が出てきている。私自身、iLikeで直接に経験したものだ。Facebookプラットフォームが立ち上がって、簡単にトラフィックが集まり将来に対しても楽観するようになった。社内でもFacebookのもたらすトラフィックに安住することに慣れてしまい、Facebookから離れて将来の活路を求めていくという話が行ないにくい雰囲気になってしまった。

Facebookのアプリケーションプラットフォームも、企業の永続的価値を生み出すものとされているが、イージーマネーやイージートラフィックを追い求めるための手段としても利用されるようになっている。こうした動きに危機感を感じ、ソーシャルアプリケーション開発の大手がFacebookから離れて独自のビジネスを模索する動きもある(たとえばFlixsterはFacebook上でバイラルによる広がりを意識したクイズムービーを提供していたが、iPhone、Android、およびBlackberryのアプリケーションが2000万ダウンロードを達成して、モバイルムービー界のリーダーとして君臨するようになった。またLivingSocialも一時は「Pick Your 5」というアプリケーションが人気を集めていたが、今ではGroupOnの競合サービスを提供するようになっている)。またサービスを売却してしまったところもある(SlideやiLikeなど)。他にもたとえばZyngaがFacebookから離れて自社の立場を確立できるのか(あるいは売却するのか)、それともFacebookの方がアプリケーションプラットフォームに手を入れて継続的な収益手段を提供できるようになるのか。今後はこうした点にも注目しておきたい。

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(翻訳:Maeda, H)