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J-Seed Ventures

日本へ:経済を立て直すには失敗した起業家を尊重せよ

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で、もしGoogleがやってきたら?

私は日本の沖縄を訪れ、世界のイノベーションのエキスパートたちと会った後、シリコンバレーで最大の長所はその多様性ではないという結論に達した。それは、失敗を受け入れ、かつ賛美しているという事実である。多くの国々と同じく、日本はシリコンバレーを真似ようと試みてきた。派手なテクノパークを作り、研究開発に助成金を出し、新しく立派な研究専門大学まで設立した。しかし、テク系スタートアップは殆どなく、イノベーションも殆どない。日本の経済は停滞している

この停滞には理由がある。

どこの国でも、イノベーションと経済成長はスタートアップから始まる。しかし、多くの日本人は会社を起こすリスクを取りたがらない。じっさい、失敗による社会的汚名と財政的反動はあまりにも大きく、失敗した企業の設立者は社会的被差別者となる。誰も彼らと仕事をしようとせず、資金提供をする者もいない。そして、自殺にいたることさえ少なくない。

Jeff Charは、連続起業家で東京拠点のインキュベーター、J-Seed VenturesのCEOだ。彼は私に、日本にはスタートアップにとって大きなチャンスがあり、競争も殆どないと言った。彼の新しいベンチャー企業の一つであるPiku Mediaは、Grouponのクローンで、短期間に新しい市場を作ることができたという。日本のテクノロジー業界では戦いの場が広く開放されている。しかし、社会が失敗を許さず、起業家が尊敬されないため、Charはエンジニアに企業をやめて自分のスタートアップに来させることができない。彼の会社を率いてくれる経験豊富な起業家を見つけることもできない。一度失敗した起業家は、二度とゲームに参加できない。こうして日本のベンチャーの殆どが、初めての起業家によって経営されている。そしてもちろん、彼らは先駆者たちと同じ過ちを犯す ― 学ぶ相手がいないからである。

かつては、殆どの企業が製造業、サービス業、小売業のいずれかだった。経営の失敗は非倫理的な行動や経営ミスに結びつけられた。物ごとはゆっくり動いていた。しかし、テクノロジーの世界は全く異なる。企業設立の基本は常に変わらないが、テクノロジーの変化が速いため、新しいビジネスモデルの創出が必要になる。新しいテクノロジーもビジネスモデルも、実験を通じて作られる。起業家たちはリスクのあるベンチャーを立ち上げ、自分たちのアイディアを試し、以前同じ道をたどった人たちから資金を調達し ― 成功を収める。そして、互いに学び合う。イノベーションは、このシナジーと経験の副産物だ。

これは、シリコンバレーがずっと前に解き明かしたことであり、他のテクノロジーセンターを寄せつけない理由はそこにある。失敗は勲章であると考えられ、恥辱の的ではない。パロアルトやバークレーでテク系起業家に会って、今何をしているかと聞けば、現在のスタートアップのことを話すのがふつうだ。それから、過去の失敗を自慢げに話し始める ― 失敗したということは経験を積み、学んだことを意味するからだ。

日本は極端だが、世界のどこの国でもそう変わらない。例えばドイツでは、企業の設立者は負債の責任を最大30年間個人で負わされる ― 破産を宣告した後でさえ。このため事業に失敗すると、家も預金も事実上持っている物すべてを失う。さらに悪いことに、日本やドイツの起業家は、刑事処分の対象となり投獄されることもある。だから彼らは、何としても倒産を防ごうとする ― たとえ負債を個人で引き受けてでも。その結果、スタートアップ企業は殆どなく、スタートした企業も殆どリスクを負っていない。

他の地域がシリコンバレーから学ぶべき教訓は、失敗した起業家を賛美し、受け入れることだ。ドイツや日本、フランス、インドなどの国々は、法律を変えて、ハイテク企業をもっと簡単に設立したり閉鎖したりできるようにする必要がある。国の指導者たちは、失敗から連想される汚名を取り除くべく努力する必要がある。国民は、少なくともハイテク世界では、実験とリスクテーキングが成功への道であること、その成功は多くの場合何回かの失敗を経ていることを理解するよう教育されるべきである。このことは、政治指導者たちによって議論を重ね、学校で教えられなければならない。失敗の後、2度目3度目のビジネスを立ち上げようとする起業家のために、ベンチャー基金を設立するべきだ。

イノベーションと成長は、勇気とリスクテーキングとチャンスから生まれる。日本、そして未来の起業家に対して似たような落胆を与えている国々は、起業家の人間性を尊重し、それを足場にしない限り、有意義なイノベーションも経済成長も見ることはないだろう。

編集部より:本稿は、起業家出身の学者、Vivek Wadhwaによる寄稿である。同氏は現在UCバークレー客員教授、ハーバード法科大学院上級研究員、およびデューク大学常任理事を務めている。Twitterアカウントは@vwadhwa、研究成果はwww.wadhwa.comで見ることができる】

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(翻訳:Nob Takahashi)