未来のテレビはHTMLに乗ってやってくる

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[筆者: Andrew Baron]

この記事のタイトルは、古くて新しい。光ファイバとブロードバンドの普及により、今年は家庭のコンピュータとリビングルームのテレビを一体化する試みが熱を帯びてきた。AppleやGoogleはテレビの視聴者を奪い合う反面で、どちらもコンテンツの配布のためにはWebを現状のオープンな状態のまま使い、Webの地位をさらに高めるとともに、どちらも自分の提供物をHTML(とくにHTML5)でコントロールしている。

この目標に向けて、AppleはGoogleよりも一歩先を行っているようだ。Appleは独自にABCやFOXなど従来のスタジオネットワークと契約を結んだが、Googleはまだ何もせず、ただ、消費者がテレビでWebビデオを見ることを既存の放送ネットワークが”許容する”だろうと期待している。しかしGoogle TVはその重要な発表の日にネットワークから参加を拒絶され、まるで顔面に平手打ちを食らったかっこうになった。Googleのリビングルームへの進出はおおむね好評だが、ABCとCBSとNBCの態度は冷淡だ。

しかしネットワークは、Googleの試みを阻止しようとしているのではない。彼らはそのGoogle TVのデバイスが、放っておけば彼らのコンテンツに、Webという無料のチャネルから無料でアクセスすることを防ぎたいのだ。パソコンでふつうにhttp://abc.comを訪れてビデオコンテンツを見るのは問題ない。しかし現状では、Google TVのブラウザでabc.comを見ようとすると、ブロックされる。

ネットワークのこのやり方は、かなり前から既存のマスメディアがGoogleに対して投じてきた戦略の一環だから、Googleも予期していたはず。また、Hulu vs. Boxeeという戦いもあった。BoxeeはHuluをテレビに流そうとしたが、Huluはそれをブロックした。Huluは自分のコンテンツを、コンピュータの画面だけに制限したいからだ。BoxeeはHuluをテレビで見るための迂回策を考えついたが、Huluはそれもブロックし、泥仕合が続いた。Boxeeは、自分たちに違法性はないと確信している。なぜならHuluは、World Wide Webという無料でオープンなプロトコルを使って信号を送出し、Boxeeはそれを拾い上げているにすぎないから。

あのときHuluのバックにいた同じネットワークが、今、同じメッセージを同じやり方でGoogleに送っている。彼らの言うには、自分たちのコンテンツは、コンピュータや携帯電話のブラウザで見るのはよい。しかし、Google TVやBoxeeなどを使ってリビングルームのテレビで見るのはノー。彼らは、デバイスのレベルで差別をしている。彼らにとっての問題は、単にコンテンツを無料で見られることではなく、デバイスが、こともあろうにリビングのテレビであることだ。

いったいどういうことか。今テレビを持っている人のほとんどが、ケーブル会社に毎月払う料金という形でお金を払っている。しかし、テレビの番組をWebから見られるようになったら、有料のケーブルを使う人はいなくなり、ケーブル業界は滅亡する。そこですなわち、Google TVを拒絶する放送ネットワークの背後にいるのは、ケーブル業界である。消費者がケーブルの契約を切れば、放送会社はケーブル会社から支払われる巨額の番組使用料を失い、一晩で倒産する。それに関しGoogleは既存の放送企業に一銭も払わないし、Appleもささやかな額しか払わない。すなわち既存のテレビネットワークは、今彼らの手からずり落ちようとしている長年のメディア支配権を死守するために、ケーブル業界と共闘しようとしているのだ。

しかしそのほかの部分に関しては、誰もわれわれを止められない。Webビデオの配布プラットホームを作っているデベロッパたちは、毎日着実に前進している。Appleは彼らを優遇してパートナーシップを結ぼうとし、Googleは彼らがそういうサイトを無料化できる機会…GoogleのWeb広告への組み込み…を与えようとしている。AppleもGoogleも、ほかの人たちも、もはやだれもぐずぐずしていない。今がその時だ。読者もそれを感じているはず。旧体制の放送ネットワーク以外の部分では、Webビデオがどんどん前進し、インターネットとテレビの一体化が確実に進んでいる。

前進あるのみ

一般の目から見て、Google TVとApple TVには違いがある。両者はハードウェアとオペレーティングシステムのレベルで人びとを囲い込もうとしているが、しかしAppleはハードウェアの販売で成功し、人びとをハードウェアと一体化したオペレーティングシステムに閉じ込めている。一方Googleは、Androidというオペレーティングシステムのレベルで人びとをつかまえようとし、そこにGoogleの各種サービスを入れ込む。キャリアや携帯電話のメーカーがこのGoogleの路線に乗りやすいように、GoogleはAndroidを無料で提供している。

2010年10月の、GoogleによるGoogle TVについてより:

GoogleTVプロジェクトのコードをオープンソースにすべく努力している。ソースコードは来年リリースする予定だ。

2010年10月の、AppleによるApple TVについてより:

ムービーをiTunesやQuickTime Playerに加えたり再生できない場合は、それをApple TVで再生できるよう変換することもできない。

“オープンはつねに勝利するとはかぎらない”というSteve Jobsの言葉は、Googleとの戦いの言葉だ。しかしテレビ側としては、コンテンツをApple TVとGoogle TVの両方に配布すればいいわけだから、まったく関係ない。

過去にこれと同じクローズドなやり方でAppleは音楽産業のコンテンツを支配したが、同社がテレビコンテンツに関してもあれほど積極的に関与していくのか、それはありそうもないと私は感じている。テレビ局はいろんな、わけの分からぬビジネスをいっぱい抱えていて、コンテンツの有料配布はそれらの中では比較的小さく、利幅も薄い。大量の視聴数を稼げる人気連続番組は、常時、それほどない。しかも、過去の人気作品は、需要が大きくない。

アプリケーションは要らない

今は、アプリケーションが非常に重視されている。アプリケーションはコンピュータのソフトウェアだが、デベロッパたちはほとんど同じものを数十とおりも作るために酷使されている。それは、車輪の再発明の絶えざる繰り返しだ。なんという、時間の無駄。今では、Microsoftもこのゲームに加わろうとしている。しかし消費者は、単純に自分のプラットホームにしがみついていればいいから、いろんなプラットホームのいろんなバージョン向けに同じプログラム~同じ機能を提供しようとして苦労するデベロッパたち(今度はApple Lionで忙しい)を無視できる。

つねに多くの選択肢があるという意味では、このような、プラットホームの多様化にも意味がある。たった一つの開発プラットホームが、すべての欲求やニーズを満たすことはありえない。仕事の性質によっては、別のソリューションが必要になることもある。しかし、リビングルームに配達されるテレビのコンテンツに関しては、多様なプラットホームとか、多様なアプリケーションというものは要らない。それは、携帯電話でもなければ、アプリケーションストアでもない。それはWebの上にあり、HTMLで送られてくるものにすぎない。

HTML5

2010年4月、AppleのSteve JobsがHTML5について:

HTML5はAppleやGoogleなど多くの企業が採用しているWebの新しい規格だ。これによりWebデベロッパは、高度なグラフィクスやフォント、アニメーション、画面遷移などを、サードパーティのブラウザプラグイン(たとえばFlash)に依存せずに制作できる。HTML5は完全にオープンだ。

2010年10月、GoogleがHTML5について:

GoogleTVのサイトは、ビデオ、オーディオ、視覚効果などをミックスして、よりすばらしくできる。HTML5はそのようなリッチコンテンツとさらにそれ以上のものを提供し、それをGoogleTVのChromeブラウザはサポートしている。HTML5について詳しく知りたい方は、HTML5 Rocksを見ていただきたい。

H.264

ところで、Apple TVがFlashをサポートせず、Google TVがQuicktimeをサポートしないことは、困った問題に見えるかもしれない。どちらもビデオ再生のための規格としてH.264を使っている。Appleは、”H.264がApple TVの基本フォーマットだ”と言い、Googleは、”GoogleTVのハードウェアはH.264のデコーダをサポートする”と言っている

ではいったい、両者の共通項をどこに求めたらいいのか?

Web上のテレビに関しては、HTML5がH.264のビデオをサポートする、で決まりだろう。テレビの未来は、いろんなアプリケーションではなく、ブラウザという共通項の上にある。市場の分裂は、防がなければならない。今は共通の基盤がないから、Webビデオを手がけるデベロッパ(やそのほかの関係者)は、自分たちのアプリケーションを多様なハードウェアプラットホーム/OSプラットホームとそれらの多様なバージョンに合わせて手直ししなければならない。Jobsがかつて言った”無駄な混乱”が続いている。

しかしその混乱も、HTML5 + H.264で解消する。

Webを最優先する

アプリケーションへの課金は、Webサイトの主宰者の良い収益源になりうる。しかし売上の30から50%を誰かに取られるとなると、良い収益源とは言えない。今では、AppleだけでなくAndroidも、Nokiaも、Sonyも、Windowsも、どこもかしこも、アプリケーションストアを持とうとしている。30%から50%のピンハネ屋たちが、アプリケーションの経済を支配しようとしている。

そこで課題は、アプリケーションを作ったり、売上をピンハネ屋たちと分かち合うことから、消費者に自分のサイトを直接見つけてもらうことへと変わりつつある。直販ならば、ピンハネはゼロ、低価格にもできる。テレビコンテンツもこれと同じで、いろんなストアの官僚主義や、セットアップ費用、売上分有といった問題をバイパスするためには、あなたのWebサイト~あなたのHTMLが、ターゲット…Apple TVか、Google TVか、Boxeeか、Rokuかなどなど…を識別して、コンテンツを適切なフォーマットで送出しなければならない。こういった状況をコントロールするのは、今では簡単である。

そうやってありとあらゆるプラットホーム用にコンテンツやアプリケーションを揃えるのは、ビジネスとして当然だが、それらを無料にして、どんなブラウザでも効率的に’上演’できる作りにすることが重要だ。Web向けの開発や制作を最優先することによって、世の中の誰もがそれにアクセスできるようになり、あなた(提供者/開発者)も終始コントロールを失わない。”モバイルが先、Webはその次”という考え方が今ははやっているが、でもリビングルームのテレビと携帯電話は全然違う。テレビはじっとしている。だからアプリケーションを作るときも、どんなブラウザでも扱えるシンプルな作りにするとともに、自分のWebサイトを指すリンクをクリックしてもらえるようにする。そうすれば、自分のコミュニティ、特殊な機能やサービス、配布形式、宣伝広告、スポンサー獲得などの活動を、Webと呼ばれるただ一つの共通の場所から、総合的に管理できる。

HTMLテレビの魅力は、誰もが愛する表現力豊かなプロトコルであること、そしてオープンでフリー(無料)であることだ。

本稿を書いたゲスト筆者Andrew Baronは、Rocketboomと、ビデオ発見サイトMagmaのファウンダである。

画像提供: Danny Sullivan.

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))