インターネットテレビとケーブルテレビの死, いよいよ近し

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「ケーブルテレビの死」という言葉そのものは、かなり前からある。彼らはまだ生きているが、最近は彼らの前途を妨害する障害物がさらにいっぱい現れてきて、いよいよ崖っぷちに追い詰められつつある。しかし彼らも、簡単にはギブアップしないだろう。〔訳注: アメリカのテレビ視聴者はほとんどがケーブルテレビ経由なので、日本人は本稿のような記事中の”ケーブルテレビ”を単に”テレビ”と置き換えて読むと、わかりやすいかもしれません。〕

来週は合衆国最大のケーブル企業Comcast(契約顧客数2300万)が第三四半期の決算報告をするから、状況がさらによく分かるだろう。第二四半期で同社の顧客数は、前年同期比で3%弱減少した。同四半期でケーブル業界全体では、失った顧客数71万1000人という新記録が達成された。そして8社中6社は、四半期の顧客喪失数が過去最大だった。

今月一か月だけでも、これだけのことが起きている:

  • 3週間足らず前にGoogleが、Google TVプラットホームを披露した。Googleのやることは、無視できない。なにしろ、自動運転する車まで自力で開発できちゃう企業だからね。しかし木曜日(米国時間10/21)には、ABCとCBSとNBCがGoogle TVに対し彼らの番組をブロックした。旧メディアと新メディアのあいだには、このような戦闘が今後もっと増えるだろう。MTVとFoxとHBOは見れるが、今後どうなるかは分からない。しかしそれでも、本誌TechCrunchのこの記事(Logitech Revueの試用記)は、 “ぼくは未来を経験した: Google TVがあればソファを離れることがない”と宣言している。〔インターネットの利用もテレビでできる。〕
  • Steve Jobsは今週(米国時間10/17-23)、Appleはすでに、新型のApple TVを25万台売った、と自慢した。最初のApple TVが発売されたのは2007年だ。それは少数のファンを獲得したものの、iPodやiPhoneのような人気製品にはならなかった。第二世代のApple TVは、つい先月に発表された。本誌の常連ライターMG Sieglerもこれを気に入っているが、まだリビングルームからケーブルテレビを追ん出すほどのすごい製品ではない、と認めている。彼曰く、そのためには既存の全局を見れるオプションが必要だと。
  • Netflixの”Watch Instantly”(ビデオ/ムービーの即時ストリーミング視聴)が大人気だ。今週は衝撃的な数字が発表された。インターネットのピーク時の全トラフィック(合衆国)の20%が、Netflixからなのだ。.
    Netflixの今後の計画については、本誌のSarah LacyによるCEO Reed Hastingsへのインタビューを見ていただきたい。
  • この秋、Hulu PlusがRokuボックスでも提供される。
    Rokuボックスは脱ケーブルテレビに向けての第一歩だ、と見なす人たちもいる。
  • Boxeeが、来月、新型のBoxee Boxを発売すると発表した。Amazonで予約できるし、店頭で買ってもよい。
  • Flurry調査報告によれば、最近のテレビの衰退の原因はAppleのiOSアプリケーション(iPhone、iPad)だそうだ。本当の理由は、もっと多様かもしれないが。
  • 金曜日(米国時間10/22)に載った本誌の記事は、未来のテレビはHTML5だと言っている。

テレビを見る手段がこれだけ多様化しつつある中で、今月発表されたJ.D. Power and Associatesの調査報告書は、消費者が、毎月ケーブルテレビに料金を払って見るテレビというものに、不満を感じるようになっている、と述べている。通信企業(インターネット、携帯電話)や衛星テレビに比べると、ケーブルテレビには”ぼられている”と感じている。

ケーブルテレビはなぜ存在するのか?

ケーブルテレビが初めて登場した1940年代には、それは画期的な技術だった。共聴アンテナテレビ(Community Antenna Television, CATV)が、ある問題を解決した。山岳地帯や都市や、放送局の送信装置から遠い地域では、良質な信号を得られなかった。巨大な共聴アンテナを建てて、信号を同軸ケーブルで再送信することにより、難視聴問題は解決した。一部の説では、最初にCATVが供用されたのはペンシルベニア州のMahanoy Cityで、接続費用が100ドル、毎月の料金が2ドルだった。

各地でCATVを提供していた企業たちはやがて、さらに遠方の信号も拾い上げるようになり、彼ら独自の、消費者が選択できる番組表を作って提供するようになった。放送局の電波をふつうに受信できる家庭が、ケーブルテレビと契約するようになったのは、そのためだ。そして、ケーブルテレビ独自の”チャンネル”〔ものすごく多い〕が作られていった。1975年にはHBOがケーブルネットワークとしては初めて、衛星とケーブルシステムを併用することによって、全国区のケーブルテレビになった。Ted Turner〔CNNの創設者〕は、初めての衛星から配信されるケーブルネットワークWTBSを1976年に立ち上げた(彼は”ケーブルをクールにしたのはこの私だ”という言葉で有名)。ケーブルテレビはまた、放送ネットワークが提供できない地域番組も提供した。自分の中学校で作られている番組を、自宅で見た記憶もある。そのときは、本当にびっくりした。
(筆者の告白: 社会人になって最初の14年間は、社名が’Cable’で始まる某企業の社員だったから、ケーブル業界にはお世話になったと言える。でもその後は、インターネットへ移った。)

何が変わったのか

しかし、これらの’ケーブルテレビにしかない’利点は変わった。DSLやケーブルモデム*(そう、’ケーブル’だけど、詳しくはあとで)、それにその後のFTTH(Fiber to the Home, 家庭への光ファイバ)などによって、家庭にビデオが送られるルートが多様化してきたのだ。〔*: cable modem, ケーブルテレビの回線からインターネットにアクセスするためのモデム。〕

ケーブルテレビでしか見られなかったコンテンツを、今ではほかで見ることができる。まず、ケーブルの番組が放送後にDVDで提供されるようになった。しかし今では、もっと多くの選択肢がある。好きな番組を、ケーブル以外で見るにはどうするか。Cancelcable.comに、そのやり方のリストがある。しかも、地域やユーザ個人が作ったコンテンツが今やグローバルに届くようになり、関心を共にする大小さまざまなコミュニティが、それらのコンテンツを共有している。

インターネットの上でテレビ番組を見るための、大きな障害物がお金だ。そこに、既存の放送ネットワークとGoogle TVの対立の理由もある。AdAgeの記事が、賢明にもこう指摘している:

“放送ネットワークがGoogle TVをブロックするのは、それがGoogleだからではない。彼らがGoogle TVをブロックするのは、それが従来のテレビの上にWebテレビを、その独特の経済構造とともに、持ち込むからだ。それは既存の放送企業にとって、すさまじく破壊的である。”

従来の放送に比べたインターネットは、1視聴者/分あたりの売上が相当少ない。しかしその不利は、Web上の広告流通量の多さと、広告が対象層別でかつ対話的になることにより、相殺されるだろう。また、一部の番組やチャネルは、有料化が可能だろう。

ケーブルの優位性は、その使いやすさだ。電話をすれば誰かがやってきて工事をしてくれる。あとは、そのときもらったリモコンを使ってテレビを見るだけだ(電話がつながるまで数時間待たされたり、工事に来るまで数日待たされることもあるが)。その便利なケーブルテレビをやめて、自分独自の方法でテレビを見るためには、今のところ技術知識が要る。GoogleもAppleもNetflixも、家庭に人を派遣してセットアップをやってくれない。Danny Sullivanの経験談にもあるように、Google TVの接続も一般大衆レベルの作業とは言えない。でも、状況は今後改善されるだろう。それに、今度のApple TVなどは、かなりやさしいほうだ。ケーブルテレビに置き換わるものは、少数の物好きな人びとのものから次第に、一般消費者にとってわかりやすいものへと変わっていくはずだ。

ケーブルテレビにも敵はいた
ケーブルテレビ業界も、競争と無縁ではなかった。ケーブルは、DVDレンタルストアとの競争に勝ち抜いた(Blockbusterは倒産した。Appleは最新のラップトップ(ノートパソコン)から光学ドライブを完全に排除した)。衛星テレビのDirectTV(合衆国の顧客数1870万)やDish Networks(顧客数1430万)のファンは多いが、でもケーブルテレビを圧倒するほどではない。しかし、インターネットだけは強敵になるだろう。

ケーブルテレビのコスト
ケーブル業界の最大の問題の一つが、コスト高だ。ある調査によれば、消費者の8人に一人が、ケーブルや衛星など有料テレビを2010年にはやめるかまたは切り詰めると言っている。コスト高が料金の値上げに結びついているからだ。ケーブル業界は、ケーブルテレビのコストは低下していると説明する。下のグラフは、Price Per Viewing Hour(視聴時間1時間当たりの価格, PPVH)の推移を表している(National Cable & Telecommuncations AssociationのWebサイトより)。

ご覧のとおり、公称費用と実質費用の乖離が大きい。これでは、消費者が毎月の請求書に納得しないのも当然だ。

ケーブル業界は、顧客に対し、チャンネル選択方式に固執し、”アラカルト方式”を拒絶してきた。顧客は、見た、あるいは見たい番組に対してでなく、選んだ/選ばされたチャンネルに対して金を払うことになる。ケーブルネットワークは顧客が払った料金が売上の一部となり、さらにその一部が放送ネットワーク(放送企業)に支払われる。このような価格体系では、小さなネットワークは経営が成り立たないこともありえる。また、”アラカルト方式”が消費者の払う料金を上げるか下げるかという議論もある。しかしインターネットテレビは、とっくに、”見たいコンテンツ”単位の課金体系だ。オールドメディアと違ってニューメディアにとっては、こういう問題の扱いはお手の物だ。”アラカルト方式”のほうが、消費者にとってずいぶん節約になるだろう。

ケーブルテレビの反撃
ケーブル業界は月々の契約ユーザが減っても、今のところは財務状態は良い。Comcastの株価は今年15%上がった。これに対しNASDAQの上げ幅は9%だ。Comcastは、インターネットビジネス(ケーブルモデムのユーザ)が伸びている。同社はTime Warner cableと提携して、TV Everywhereプッシュしている。これはテレビのチャンネルをオンライン化して、ケーブルテレビの契約ユーザだけが見れる、というものだ。それにもちろんComcastは、放送企業でもありケーブルの大手でもあるNBC Universalを合併しようとして複雑な交渉を行っている。しかしこの新しい合弁事業には、Comcastのケーブルシステムが含まれない。まだ、政府の認可も下りていないし、FCCは両社に対し、最大のブロードバンドプロバイダと大手のコンテンツファームの合併がオンラインビデオの流通にもたらす影響について、質問状を提出している

また、Google TV用のケーブルボックスが有料で提供される、という推測もある。でも、そのほかの安価なオプションがいろいろあるときに、消費者はわざわざそんなものを使ってまで、ケーブルテレビの契約顧客であり続けるだろうか?

近未来
ケーブルの死は、今後もホットな話題であり続ける。来月は、Streaming Media Westのパネルで、”テレビのコードを切る: オンラインビデオは果たしてケーブルの死を招くか?”と題する議論が行われる。

ぼくのうちには、まだケーブルがある。ぼくはそろそろやめたいと思っているが、が好きな番組の中には、ケーブルでしか見れないものもある。でもそんな番組も、今後ずっとケーブルのみということは、ありえないだろう。スポーツの実況中継が見たくてケーブルをキープしている人は多いが、ケーブルテレビがスポーツだけをよりどころにして生き残るとは、とても思えない。

1年あまり前に、ライターで起業家のPaul Kedroskyが、”最近は正しい結論に達しつつある人が多い。Hulu、Boxee、Bittorrentなどなどの時代においては、ケーブルテレビは、古いエンタテイメントの時代の値段の高すぎる遺物だ”と書いた。このゲームに今では、Google、Apple、Netflixなどが大々的に参加してきた。値段の高すぎる過去の遺物は、いよいよ命運が尽きようとしている。

以下の本誌記事も、ぜひお読みいただきたい:

http://techcrunch.com/2010/10/24/internet-tv-and-the-death-of-cable-tv-really/
[原文へ]
[jpTechCrunch最新記事サムネイル集]
[米TechCrunch最新記事サムネイル集]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))