[jp]ad:techレポート:購買プロセスでソーシャルメディアはどういう影響を持つのか

次の記事

合衆国内務省がオバマの指示を無視して無入札でMicrosoftと契約

ごった返すad:techの会場は2日間で1万559人(実人数6,321人)という過去最高の動員を記録したそうだ。確かにリアルタイムやソーシャルなど、ネットのトレンドが大きく動きをみせた2010年、新しい動向をキャッチしたいというムードが参加意欲を刺激したのかもしれない。

実施される多数のセッション中、もっとも参加者が多かったのが「ソーシャルメディアトラッキング、キャンペーンの効果測定」の会場だ。このセッションはBatesHook, Inc.のUwe Hook氏、StatsitのMikko Kotila氏、スケダチの高広伯彦氏、アジャイルメディア・ネットワークの徳力基彦氏をパネリストに、大和ハウス工業の大島茂氏のモデレートで実施された。

mixi、Twitter、facebook。ビジネスにおけるソーシャルの活用はゲームにとどまらず、共同購入や集客など具体的な効果を上げる事例が数多くなった。利用する企業はこれをどのように効果測定すべきかーーそこで語られた内容は具体的なソーシャルメディアの効果測定テクニックというよりはマーケティングの一部としてのソーシャルメディアの位置づけだったように思う。

高広氏はまずソーシャルメディアの効果測定を考える前提として「インターネットによってつながりやすくなった結果、(購買のプロセスが)一直線のリニアなモデルではなく、ぐるぐるまわるモデルになってきた」と語り「そういう中でソーシャルメディアがどういう影響を持つのかを考えないといけない」と現在の購買プロセスの変化を観察することが必要と言及。

「ソーシャルメディア業界の人と話をするとソーシャルメディアだとこういうものがトラッキングできるという話がでるが、はたしてそれが企業のプランニングだったりマーケティングのどこに役に立つのかを語られていることが少ないように思う」と、技術的な話題よりも、ソーシャルメディア上で何が起こっているのか、何が購買行動に影響しているのかを要因分析して理解し、説明することが重要だと語った。

徳力氏も「代理店の人と話をしているときにソーシャルメディアの効果測定はできないですよね、しずらいですよねといわれることがあるがそもそも間違っている。多分主語が混乱している。本来はいろんなマーケティングの中でいろんなステップがあって、インターネットがいろんな効果測定できるようになった、ということだと思う」と語るように、ソーシャルメディアの効果測定というピンポイントではなく、マーケティング全体からの俯瞰が必要であるとの考えを示した。

また、マスメディアとソーシャルメディアの予算配分という話題についてUwe氏は「ソーシャルメディアは予算よりも大量の(人的な)リソースを確保しなければならないリスクの方が大きい」とマスメディアとの違いが金銭的なものよりも人的なリスクにあると解説。高広氏も「マスメディアに比べたときにソーシャルメディアに配分を大きくしなければならない程お金かかるの?というのがある。ソーシャルメディアはスモールスタートから始められる。必ずしも大きな予算からスタートするのではなくて小さなところから培うのがいいのではないか」と予算配分とは違った視点について言及した。

徳力氏が「効果測定は正解さがしになっている、効果測定すれば広告換算費がでる、そんなわけがない。いろんな数字があるので、全部疑ってかかって、それでも昔に比べていろんなものが取れるようなってる。それで死ぬ程考えるしかない」と語るように、ソーシャルメディアからトラッキングできる素材を単体で考えるのではなく、マーケティング全体の効果測定で従来抜けていた箇所に当てはめて考えることが最も正しい方法なのだろう。

最後に会場の質問からそもそもソーシャルメディアの捉え方、定義についても質問があった。ソーシャルはテクノロジーであってメディアではない、という話だ。この点はMikko氏がシンプルに「ソーシャルメディアは世界中の人間の会話のサンプル」と表現したようにソーシャルで語られているのはあくまでユーザーの声であって、従来のブロードキャスト型媒体ではなく、人々を媒介する場という考え方がしっくりくるように感じられた。

ad:techの会場には数々のセッションと同時にデモブースも多数展示されていた。その中からスタートアップブースにもこのテーマに関連した解析をユニークな方法でチャレンジしているスタートアップがいた。二つほどご紹介したい。

ひとつ目はユーザーローカルの提供するユーザーインサイト(User Insight)だ。爆発的にヒットした無料アクセス解析サービス「なかのひと」の企業向けサービスでこれそのもののリリースは2008年の11月頃だ。ad:techへの出展時はこれにさらにTwitterのつぶやきを解析するTwiTraqが組み込まれていた。

TwiTraqは今年5月に公開されたTwitterの解析ツールで、設定するキーワードを中心に、つぶやかれた時間やログ、発言数推移から地域などを解析することができる。視覚的に分りやすいグラフでTwitterのソーシャルウェブ上でキーワードがどのような動きを示すのか分りやすく教えてくれる。無料版で設定できる検索キーワードの上限が5つなのに対し、有料版では50個まで登録が可能だ。

二つ目は少しソーシャルとは毛色が違うかもしれないが、動画の解析ツールだ。sus4(サスフォー)の提供するVideo Analyticsは動画の再生や一時停止、離脱などのデータを解析して動画の閲覧状況を定量的に教えてくれる。特にその動画がどのキーワードと強く結びついているか視覚的に計測できるのが特徴だ。

今回のデモブースでは動画閲覧のユーザーがどのようなキーワードで動画コンテンツを訪問し、どのキーワードがもっとも離脱しなかったかをリアルタイムに表示することができる解析インターフェースをみせてくれた。例えばスクリーンキャプチャにあるキーワードで上位のものは動画とマッチしたキーワードである証拠に、再生時の離脱が少ない。一方、的外れなキーワード、例えばタレントの名前などはすぐに動画から離れてしまう。

ソーシャルウェブが発達するに従い、Ustreamなどのリアルタイム性ある動画コンテンツもそれらと組合わさることで新しい一面が見えてきている。ソーシャル上のバズがすぐに導線となりうる時代、リアルタイムに動画解析をしながらライブでコンテンツを最適化する、という時代もくるかもしれない。