開発者への提言:アプリケーションを作るのではなく、ビジネスを産み出そう

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本稿の執筆者はCharles Yim。Google Mobile PartnershipsのManager職にある。その前は2009年にGoogleによって$750M(7億5000万ドル)の額で買収されたAdMobでモバイル広告ネットワークのビジネス開発チームで仕事をしていた。現職ではGoogleのモバイルディスプレイ広告ビジネスの一環として、ゲーム産業における戦略パートナーシップに関する業務を行なっている。

後の予定などを全く考えることなく、お店のグランドオープンを迎えるというようなことがあるだろうか。もちろんそんなことはあり得ない。実際のオープニングを迎える前に、成功へのプランニングが必要だ。そしてこれはすべてのビジネスに当てはまることだ。モバイルビジネスもその例外ではない。しばしば「すばらしいモバイルアプリケーション」を売り込んでくる人がいるが、リリース後のプランについて尋ねると口をつぐんでしまう人も多い。これではまるで、後のことはすべて成り行き任せに、とにかくオープンのテープカットだけしてしまうというようなものだ。

アプリケーションを発表して成功をおさめるためには、ただよいものをリリースすれば良いというものでもない。よくできたプロダクトを用意しておくのは大切なことではある。しかしそれはあくまでもスタートにしか過ぎないのだ。ここから成功に繋げるためにはビジネスプランが必要だ。マーケティングや流通、マネタイズに始まって、今後どのように機能を充実していく予定なのかということも考えておく必要がある。成功をおさめるためには、まずアプリケーションのみを作っているのではないという考え方を持つ必要がある。作り出すのはモバイルビジネスなのだ。

個人的にも多くのモバイル開発者たちがビジネスを創造する様子を見てきた。この経験は得難く、そして貴重な経験だった。AdMobネットワークに参加していた数百名の開発者たちが年間で10万ドル以上を稼ぎ出していた。この金額はAdMobから得る金額のみを計算したものだ。開発者たちはモバイルビジネスというものが長く利益を上げるビジネスになり得ることを証明してくれた。成功をおさめたモバイルビジネスの傾向をいくつかまとめてみた。以下にモバイルアプリケーションを通じて行うビジネスを成功に導く8つのチップスを記してみようと思う。

  1. アプリケーションを作るのではなく、ビジネスを産み出すことを意識しよう。アプリケーションを使って何をしたいのかを考えよう。開発したひとつのアプリケーションを通じて、今後もそのアプリケーションの開発を続けていこうとするのか。それともいろいろと組み合わせて使ってもらうためのアプリケーション群を開発していくつもりなのか。そうしたことも念頭において、展開していくモバイルビジネスについて、数年分は無理でも数カ月分の見通しを立てておく必要がある。
  2. 適切なビジネスモデルを選択する。成功に至る道筋というのは数多くあるものだ。この中から自らにとって最適なものを選択しなければならない。利用者数や利用期間にこだわらず、とにかく有料でダウンロードしてもらうモデルを選択するのか。あるいは多数の利用者を獲得してずっと使い続けてもらえるような仕組みを考えるのか。後者の場合は広告サポートモデルを利用するケースが多い。
  3. 利用者の立場にたって考えよう。利用者がアプリケーションを使うスタイルにはさまざまなものがあることを理解しよう。そして利用者のスタイルに応じたアプリケーションを開発することが大切だ。移動中に携帯電話を使う人もいれば待ち合わせの暇つぶしに使うこともある。あるいは雨の日の時間つぶしに利用する人もいる。提供するアプリケーションがどのようなシチュエーションで利用されることになるのかを理解し、そのシチュエーションに適したエクスペリエンスを提供するようにする必要がある。
  4. アプリケーションが評判を集めるように工夫しよう。人々の興味を集める独自の方法を考えよう。たとえば端末に搭載される新機能を利用する最初のアプリケーションとなることを目指すのも良い。ソーシャルメディア上でのプレゼンスを高め、アプリケーションを取り上げてくれるようメディアなどにも働きかけよう。利用者の人たちが、アプリケーションについて話をしたくなる仕掛けを考えよう。
  5. エンゲージメントを意識しよう。何度も使って貰えるような仕組みを考えよう。一度しか使ってもらえないようなものでビジネスを構築することなどはできない。コンテンツを魅力的にアップデートし、新機能も取り入れよう。もしゲームを作っているのなら、利用者同士で競争したりインタラクトできるようにしよう。
  6. ブランドを構築しよう。アプリケーション以外にも利用者がブランドに親しみを感じる方法を考えよう。アプリケーションは携帯電話用でも、携帯電話以外にもブランド化の道はある。アプリケーションポートフォリオを提供しているBackflip Studiosは企業ブランドを構築し、Angry Birdsはアプリケーションブランドを構築していると言えるだろう。双方ともにブランドイメージ構築のために時間もお金も投資し、ブランド価値を高めようと努力している。
  7. パフォーマンス評価も怠りなく(ダウンロード数のみではだめ)。モバイルアプリケーションのサクセスストーリーでは、ダウンロード数というひとつの指標ばかりが注目されることが多い。しかしモバイルビジネスではダウンロード数のみではなく、アプリケーションのライフタイムにも注目することが必要だ。つまり日々どれくらい利用されるのか、アプリケーションの利用時間はどの程度なのか、有料アップグレードへのコンバージョン率はどの程度なのかということも評価しておくことが必要だ。こうしたデータに基づいて、どの部分に注力して開発するのかを判断する指標が必要なのだ。たとえばフォーム入力のリクエストに対して半数が入力してくれないというような場合、利用者に入力求める方法や必要性について再考する必要がある。ダウンロード数というのは、利用者と関係を築いていくきっかけにしか過ぎないものなのだ。
  8. テストと利用者の声。テレビは視聴率調査を通じて、どのような番組がもっとも人気を集めるのか調査を行なっている。映画業界でもフォーカスグループのスクリーニングを行って、やはり同様の調査を行なっている。モバイルビジネスにもこうしたメディアビジネスと同様の側面があり、やはりこうした調査は行っておくべきだ。まず小さな市場向けにリリースして利用者の反応を見るという手法も大切だ。利用者からの評価を参考にしてアプリケーションの充実化をはかるのは良い考えだ。利用者も登場してきたアプリケーションに対しては期待を持つものだ。それが有料アプリケーションなら尚更のことだと言える。利用者の声をアプリケーションの機能実装に取り入れることはモバイルビジネスにとってことの他重要なことだと言える。

未だに「モバイル」ビジネスを指して「立ち上がりつつある」という人がいる。しかし私としては、既に立ち上がったものであると主張したい。個人から企業まで、さまざまな規模でモバイルアプリケーションをリリースし、それをビジネスとして展開している人がいる。確かにまだ参入者が飽和状態にあるとは言えない。しかし競争は日々激しさを増しつつあるという状態だ。同じ世界にいる利用者獲得に向けて、全員が競い合っている状況だと言える。後発の開発者に足元を救われないよう、スマートで迅速、よりイノベーティブな道を全員が模索している最中なのだ。

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(翻訳:Maeda, H)