Chrome OSを擁護する

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googlechromelogo今日(米国時間12/14)のこのテクノロジー系ニュース記事を見た人は、Chrome OSは死んだと思うだろう。まだ正式に公開すらされていないのに。死んだ、と。

Chrome OSが走るプロトタイプ機Cr-48(Googleが正式販売する予定はない)の初期レビューは、まあまあからダメという評価だ。そして、かつてGoogleでGmailを作ったことで知られるPaul Buchheitが今朝、Chrome OSは来年には「死んで」Androidに取って替られると予言して騒動を引き起こした。

果たしてそうなのか? まあ落ち着いて。

始める前に言っておくと、私はたぶんCr-48と初期バージョンのChrome OSについて最も批判的な詳細レビューを書いた人物である。要するに、マシンもOSも、Googleが正式販売するようなレベルにはほど遠い。しかし、それは皆わかっていたことだ。Googleにもそうするしかない事情があった。彼らが配ったCr-48の数は少々異常だったが、Googleはサードパーティー開発者たちが問題の一部でも解決する手助けをしてくれることを強く信じていたように思える。

それはともかく、Chrome OSの核心が良いアイディアであることを私は知っている。そしてChrome OSは、Google全体の本質に直接かかわっているようにみえる。もし彼らが必要なリソースを注ぎ込み、時間をかければ、私は十分成功の可能性があると思う。

もちろん、どちらもかなり大きな「もし」である。一つの問題はGoogleが、あらゆるかつての大企業と同じく、手を広げすぎていることにある。あれこれ手を変えようとはするものの、今でも事実上この会社の収入源は一つ、検索広告だけである。他の収入源も動き始めてはいるが、そうした事業の将来性は未だに明るいとはいえない ― 例えばディスプレイ広告、地域、モバイル等の分野には激しい競争がある。

Googleがそれらの市場全部で勝つとは限らない。いや、一つも勝てないかもしれない。それは、そこで稼げないという意味ではないが、検索や検索広告で勝ったのと同じように勝てなければ、同じ中核ビジネスの規模にはなり得ない。それがGoogleの弱点になる。

しかし、この問題があるからといって、Googleの書籍検索から自動走行車に至る幾多のプロジェクトへの全力投球は止まらない。これがみな、将来の製品として、ビジネスとして、Googleの関心事であるかどうかは誰にも、Google自身にもわからない。しかし、彼らの凄まじい技術力を、これらのさまざまなプロジェクトに分散させていることが、どれか一つのプロジェクトに集中することを困難にしている ― 例えばChrome OSのように。

私にはGoogle帝国が分割されつつあるように感じられる。一種、Microsoftのように。とにかく、やっていることが多すぎるし、同じ考えを持たない人たちが多すぎる ― 会社の別の場所で何が起きていることすら知らない人が多い。これは、現在FacebookやTwitterといった小さなテク企業には当てはまらないことだ。そして、Googleからそういう会社へと人材が逃げていく理由もおそらくそこにある。Chrome OSのチーフ・アーキテクトのように。

Chrome OSに話を戻そう。懐疑的になる理由はいくらでもあるが、信じる理由もまたたくさんある。繰り返すが、Chrome OSはGoogleの中核たるべきものに最も近い製品だと思われる。

Anrdoidは違う。Androidは、スマートフォンにとってモバイルウェブが機能的にも性能的にも十分ではないことに気付いたGoogleが、賢明にも買収した会社だ。ネイティブアプリケーションが必要だった。おそらくこれは、Google史上最も賢い買収だと言われることになるだろう。

しかし、AndroidがChrome OSを殺すと言うのは短絡的にすぎる。たった今、Androidアプリの勢いはすごい。しかし、これは前にも言ったように、ウェブテクノロジーが必要なレベルにまだ達していないからである。Appleは、ウェブアプリの重要性に最初に気付き、初代iPhoneではネイティブアプリではなくウェブアプリを作るよう、デベロッパーを促した。一年後、Appleはネイティブ開発環境を開放せざるを得なかった。しかし、元来の発想はウェブアプリだ。

そして、これが未来となる可能性は今でも十分にある。ウェブ運営組織の動きは遅すぎる、しかし動いてはいる。そして、いずれモバイルウェブアプリは、ネイティブアプリと対等になるはずだ。その時デベロッパーには、3~4種類のプラットホームではなく、ただ一つの統一プラットホーム上で開発する大きなインセンティブが生まれる。

われわれは、ウェブ全体でこれが起きてきたことを見ている。ウェブアプリが従来のデスクトップアプリを侵食し始めているのは、まさにこの理由からだ(配布の容易さなどの理由もある)。モバイルは、その一つの新種生物にすぎない。まずネイティブ環境で飼い慣らす必要があったのだ。

すべてが循環しているように思える。今モバイルではネイティブアプリが圧倒的だ。囲われたクローズドな世界がもてはやされるのは、ユーザー体験を確実に良くすることが容易だからだ ― 特に、モバイル機器のように限られた環境では。しかし、オープンの波は再びやってくる。それがいつなのか私にはわからない。しかし、やって来ることはわかる。

ここでも、それがウェブである可能性は高い。

そしてそのウェブがChrome OSだ。 Buchheitはその後の記事で、事実上「ユーザー数ゼロ」のOSにこれはど多くのファンがいることに驚いている。しかし、これは真実ではない。Chrome OSにはすでに数百万人のユーザーがいる ― なぜならChrome OSはChrome[ブラウザー]にすぎないから。OSについて何を言おうと勝手だが、そうなのである。これはChromeに、Windowsがこの何年もの間われわれに押しつけてきたぜい肉を不要にするための、ちょっとした装飾を施しただけのものだ。

いろいろな意味でChrome OSは「アンチOS」である。これは新鮮だ。まだあるべき姿には達していないが、そうなった時、もしそうなれば、これは実に凄いことだ。想像してほしい、2秒で立ち上がるパソコンを。一回充電したら一日中使えるパソコンを。$100以下のパソコンを。世界は変わるかもしれない。

最近自分がパソコンを何に使っているか思い浮かべてほしい。ほとんどがウェブだという人が多いのではないだろうか。私はたった今カフェにいる。まわりを見わたすと、どの画面でも例外なくウェブブラウザーが開いている。これが重要。だからこそChrome OSが作られたのだ。

もう一度言おう。私のCr-48レビューにもあるように、Google CEOのEric Schmidtと違って私はまだわれわれがChrome OSを全面的に迎えられる世界に住んでいるとは信じていない。だからGoogleにとっての鍵は、そこへ到達するまでの間、夢を生き延びさせることだ。それは、何年にもわたる反発や、Androidが爆発的人気を得る中でGoogleが取り組み続けられるかどうかという疑問を意味する。しかしその答えは、Chrome OSが ― 少なくともそのコンセプトは ― いずれ勝つから、である。そしてそうなった時、GoogleはMicrosoftの真の急所 ― その財政 ― を脅かす主役になる。

爆弾はすでに投下されているが、爆発までには数年かかるかもしれない。

これは、昨今の即席満足の世界で好まれるコンセプトではない。特に株主の要求に答えなければならない公開企業では。しかし、私の言葉を覚えておいてほしい。もしGoogleが来年Chrome OSを死なせるようなことがあれば、いずれ誰かが作る。そして、その頃Androidによって完全にMicrosoftモードに入っているGoogleは、慌ててコピーする。そして敗れる。

[写真:flickr/andy z

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(翻訳:Nob Takahashi)