ソーシャルネットワークの歴史 Part 3:繰り返す歴史と未来への動き

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編集部注:本稿はGRP PartnersのMark Susterによる「ソーシャルネットワーク」三部作の最終回となるもの。もし未読であればPart IおよびPart IIを先にお読みになることをおすすめする。本稿の元となったのは、MITとカリフォルニア工科大学で行われたEnterprise Forumでの「ソーシャルネットワークの未来」(the futhre of social networking)いう名前の講演だ。ビデオも公開されており、また記事末には使用されたPowerpoint資料も掲載している。ちなみにこの資料はDocStocにも登録されている。Mark SusterはTwitterも利用しており、アカウントは@msusterだ。

三部構成の記事の最初では、1985年から2002年におけるソーシャルネットワークの歴史を振り返った。時代はCompuServeからAOL、そしてYahoo!へと移り変わっていった時代だった。2本目の記事では現在の様子を分析した。「Web 2.0」(ブログ、YouTube、MySpace、Facebook)や「リアルタイム」(Twitter)、そして「モバイル」(Foursquare)が登場してきた時代だ。これでソーシャルネットワークの歴史についての記述は完了ということで良いだろうか。FacebookとTwitterの勝利で幕を閉じるのだろうか。それとも新たな動きが出てくるのだろうか。意識しておきたいのは、テクノロジー業界にあっては必ず第二の波(そして第三、第四、そして第五と続く)がやってくるということだ。つまり、ソーシャルネットワークにも次世代の波がやってくるのは間違いない。今後のソーシャルネットワークについて、8つの予測を立ててみた。

1. ソーシャルグラフのポータブル化

現在、アメリカにおいてソーシャルグラフ(誰と繋がっているかとか、相手方のメールアドレスなど)の情報はほぼFacebookに独占されているという状況だ。こうした情報のポータブル化を求める声は日増しに高まりつつある。Facebookも、こうした声の高まりに対して対応せざるを得ないという状況になりつつある。ただひとつの企業が重要なソーシャル情報を一手に担うことには反対する人が多いということを示しているのだろう。

Facebook側もこうした声に対しては結局応じざるを得ないことになる。この動きが進めば、友人たちに新たなソーシャルネットワークの利用を始めたというスパム風メールを送り付けることなく、さまざまなネットワークを利用できるようになるように思う。2010年現在においては、この説に反対する人もいる。しかし現在、こうした流れが生じつつあるように思う。ソーシャルグラフ関連情報のポータブル化を進めていかなければ、Facebookの牙城は、逆にそこから崩れていくこともあり得る。全面ポータブル化は2012年までにやってくると予想している。

2. 現実界に根ざしたソーシャルネットワークの隆盛:Quora、HackerNews、Namesake、StockTwits

個人的には、2006年から「Facebookプロブレム」について言及してきた。すなわちFacebookはすべての人を単一の巨大ソーシャルネットワークに参加させようと努力してきた。しかし現実界で単一のソーシャルネットワークにのみ属しているというような人は存在しない。たとえば私個人についても、先週のパーティーについての不満をぶつけあうような友人とのネットワークがある。そしてこのネットワークを、両親や兄弟に子供の写真を見せる場としてのネットワークとごちゃまぜにしたいとは断じて思わない。

あるいは常にビジネスのことのみを話しているネットワークを、学生時代のメキシコ旅行についての話をしているネットワークとまとめようなどということも全く思わない。つまりパブリックのネットワークとプライベートのネットワークを同一の物としてしまいたくはないということだ。一方でFacebookは、すべてをひとつのソーシャルネットワークで賄おうとしている。その上で、複数ネットワークを必要とする人のために「グループ」というものを導入して急場しのぎとした。しかしそのようなことで問題が解決できるとは思えない。

若者たちも、彼らのやり方でこの問題に対処している。年配者たちよりも「デジタル」に対してより柔軟な対応を行なっているのだ。すなわち、上に述べたようなソーシャルネットワーク問題に対応するために、実名でのFacebookアカウントに加えて、場面に応じて使い分ける偽名アカウントを作成したりしているのだ。Facebookは5億程度のアカウントを抱えているそうだが、どのくらいがこうした目的で作成された偽名アカウントなのかは気になるところだ。数人の若者に尋ねてみたところ、複数アカウントを作成して利用している人は少なくないようだ。

トピック毎のソーシャルネットワークを求める動きは既に顕在化しており、それに応えるかたちでHackerNewsやQuoraが運営されている。また、株式投資に興味がある人の集まるStockTwitsも人気を集めている。またNamesakeなどのように、Facebookの外に、用件に基づいたソーシャルネットワークの存在を求める人のためのサービスも種々登場しつつある。

3. 今後も問題となるプライバシー:Diaspora

Facebookは当初、ソーシャルネットワークとはプライベートなものであるという前提に立っていた。しかしTwitterの成功を横目に見て、情報をよりパブリックなものとして利用しようと考え始めた。しかしそうなってしまえば、サインアップ当初の話とはずれてくることになってしまう。もし自分でFacebookを運用しているのなら、単純に「Facebook Private」と「Facebook Open」を作ったことだろう。「Open」版の方は直接Twitterと競合することとなり、こちらにはTwitter風の非対称フォローモデルを導入することもできる。

もちろん、タイムラインは2つに分かれることになり、どの相手とどのネットワークを使うのかという判断をしなければならなくはなる。すべてを同一のタイムラインで扱うシナジー効果のようなものは薄れてしまうことになるだろう。しかしこうした方法をとれば、現在のようにプライバシー問題で叩かれることもなかっただろう。現在はFacebookに対して愛憎半ばの感情を抱いている人が多いようだが、こうした結果にもならなかっただろうと思われる。個人的には日々Facebookにアクセスして姪や甥の写真を閲覧しているが、今以上にビジネス関係の人とのネットワークをFacebook上で構築しようとは思っていない。そのようなわけで、私のソーシャルネットワーク利用時間のうち95%はTwitterが占めることになっている。

現在のところ、プライバシー関係に不満や不安を感じない人が多いことは知っている。しかしそれはたいていの人がプライバシー問題を理解していないからだと思う。

私自身、多くのテクノロジーファームと仕事をしてわかったことがある。つまり、自分ではサードパーティーアプリケーションに対して情報アクセスの権限を与えていない場合でも、ネットワーク上で繋がっている誰かが多くのサードパーティーアプリケーションに対して情報アクセス権を与えていると、その人自身の情報も大半が漏れ出してしまうということだ。また、Facebook Connectは簡単にログインを行う非常に便利な手段だが、これを用いればその度に個人情報に対する無制限のアクセス権を与えることになる。:

プライバシー問題というのは、一定期間ののちにその問題が発現してくるものだと考えている。短期間では、注意を促されてもそれがどういう結末を迎えることになるのか理解できないケースも多い。Diasporaは、Facebookによるプライバシー情報の取り扱いを問題視することから始まり、そして人々の注目を集めつつある。Diasporaが今後人気を集めていくのかどうかはわからない。しかしプライバシー問題に注目する人が増え、同様のサービスは今後も登場してくることだろう。

4. 一層広がるソーシャルネットワーク:Pandra、NYTimesとFacebook Connect

ソーシャルグラフがポータブルになるに連れ、私たちの行動の全てがソーシャルネットワークで結びつくことになってくるだろう。たとえばPandora(訳注:現在日本からは利用できません)でもソーシャルグラフとの連携が行われており、自動的に友人たちの嗜好が表示されたりもする。NY Timesでも、とくに設定を行うこともないうちに友人からのおすすめ記事が表示されるようになった。「ソーシャル」は今後もそのカバー範囲を広げていくことになるだろう。

5. ウェブサイト埋め込み型ソーシャルツールの普及:Meebo

多くのサイトで、閲覧者の情報を得るためにFacebook Connectによるログインを促すようになってきている。ただ、そこで入手した情報をうまく使いこなしているサイトはまだ多くないように思える。いずこでも提供しているのは、読者の所属層に適した広告を表示するようになってきているが、これは読者からすると別に興味深いことでもない。いずれは、ウェブサイトに本当の「ソーシャル」機能を導入するためのサードパーティーアプリケーションが登場してくるだろう。普及にはまだ数年ほどかかりそうだが、Meeboのツールバーなどはこの分野でのイノベーションを提供していると言えるだろう。

6. ソーシャルネットワークは(ウェブのように)レイヤー化する:Simple Geo、PlaceIQ

ここ数年、インターネットというものがレイヤー化されていくという傾向が現れてきた。最下層はストレージ(S3)サービスで、上位層の例としてはプロセッシングサービス(EC2)がある。もちろん最上位層にあるのは新興ないし既存テクノロジー企業によるビジネスロジック(アプリケーション)がある。このレイヤー化の流れについてはBothSid.esでも触れていく予定だ。こうしたレイヤー化の流れの中、数年以内に最も重要なレイヤーが登場してくるだろう。スタンドアロンPCの時代から、レイヤー化の考えはそれぞれのレイヤー内にも多大なイノベーションをもたらすこととなった。この流れがインターネットの世界にも生まれつつあると思うのだ。ソーシャルネットワークの世界にもすでにこうした動きが生じつつある。

最近の流れの中で注目に値するのは「マッピングレイヤー」だ。モバイルソーシャルネットワークの世界で存在感を増しつつある。ビジネスの種類や地域に応じて、すべてのサービスで独自に位置情報の仕組みを実装しなければならないのなら、位置情報に関連したサービスなどほとんど生まれてこないことになるだろう。個々のモバイル系スタートアップが自力で位置情報関連部分を実装しなくても済むようにと生まれてきたのがSimpleGeoだ。こうした流れにより、新しいサービスを立ち上げるコストが低下することになる。おそらくSimpleGeoは位置情報サービス分野で成長を遂げることになるだろう。しかし他にもデータレイヤーを担うイノベーションが登場してくることも間違いないと思う。

また、いわば水平的プラットフォームを生み出すのに凌ぎを削っている企業もある。たとえば最近よく目にするものにPlaceIQというサービスがある。このサービスはマーケッターないし製造業者のためのもので、特定業種に捕らわれず、横断的な付加的位置情報を提供しようとしている。地区毎に集まっている人々の属性情報を収集し、活動状況をチェックし、そしてその地域にどのような特徴が見られるのか(たとえばデートスポットに利用する人が多いとか、あるいはビジネス関係の人で賑わっている等)といった情報をとりまとめ、それを外部に提供している。

7. ソーシャル・カオスが新たなビジネスチャンスを生み出す:Klout、Sprout Social、CoTweet、awe.sm, (next gen) Buzzd

データの増大は、データを分類整理したり、あるいはデータ自体を分析する管理サービスの誕生を促すことになる。サイバースペースで人に出会い、そこでしか面識のない人から情報を受け取るようになると、その人自身の信頼性評価も欲しくなってくる。たとえばKloutはそうした要求に応えてくれるサービスを提供している。ソーシャルネットワーク界における、影響度指標を提供しているのだ。この情報は、アドバイスをくれる人についての詳細情報を知りたくなるようなこともある他のサービスからも取り込むことができ(たとえばStockTwitsなどは情報取り込み機能を実装している)

Twitterがカスタマーサポートの機会を広げたことには、多くの人の同意するところだろう。しかし逆もまた真なりなのだ。ソーシャルネットワークに流れる怪しい情報でも、それに対して適切に対処しなければ真実として流通していくことになってしまうこともある。Sprout SocialCoTweetは、企業が顧客と効率的なコミュニケーションを行い会話をリードしていくための手段を提供する。awe.sm(私も出資している)なども、ソーシャルメディアマーケティングキャンペーンを効率的に実施するための手段を提供している。

また、2011年にはNihal Mehtaによるさらに面白いプロダクトが登場してくる予定だ。以前はBuzzdに関わっていた人物だ。ただ公式リリースまでは紹介を控えるようにという要請をうけている。ニューヨークでプロダクトを見せてもらってから、個人的にはとても気に入っている。モバイルが一層普及していった中での企業および消費者の関係に新しさをもたらすプロダクトとなっている。

8. Facebookのみがソーシャルネットワーク界で独占的地位を占めることはない

2010年現在の状況を見ると、誰もが「フェイスブックの勝利で、主導権を巡る戦いは終わった」と述べている。確かに現状ではそう見える。Facebookは驚異的なレベルで市場を支配していると言えるだろう。時代の流れ的に言えば、AOL時代への回帰といえる。すなわちFacebookがすべてを囲い込むことにより、世界は再び「閉じた」ものとなっている。Facebookの中で活動している際には、インターネットを利用しているというわけではないのだ。つまらない洒落を言うのならInterNOTだ。確かに素晴らしいサービスで、私も頻繁に利用している(但し、Twitterに比べると頻度はかなり低い)。ただ、企業が一所懸命にファンページを作るのは、AOL時代にキーワード広告を出していたのと同じ振る舞いで、ある種の懐かしさを感じる。時は移れど…(Plus ça change)という状況であるわけだ。

これまでの記事で触れた歴史についての話題を簡単にまとめておこう。

  • 1998年、アメリカ合衆国司法省はマイクロソフトに対する独占禁止法違反の訴えをおこした。オペレーティングシステムにインターエンットエクスプローラーを同梱することで、マイクロソフトの独占が進むのではないかと危惧したわけだ。12年後の2010年現在から考えると、微笑ましくもあるできごとだった。現在ではマイクロソフトではなく、Appleの独占を心配する人も出てくる。こうした移り変わりを見るにつけ、事実は小説よりも奇なりという言葉を思い出してしまう。
  • 2000年4月には、AOLとTime Warnerの連合軍がインターネット上に独占帝国を形成するのではないかと言われた。最終的にはご存知のようにTime Warnerは少額でAOLをスピンオフすることとなった。AOLは事業再編に力を入れている時期で、ロサンゼルスに拠点を置くDemand Mediaのようなサービスを展開したりもしている。Tim Armstrong主導のもとで、AOLはなかなかの成果を残しつつあるようには思える。ただ「独占」という話からは遠く隔たったところにある。
  • 2007年5月、Googleがインターネット上の独占企業となるのではないかという声が聞かれるようになった。検索こそがインターネット上での情報入手のためのポータルになると言われている中、アメリカ国内の検索トラフィックの3分の2を賄っていたからだ。ただ時代は変わってきた。オンラインで情報を見つけたり共有するために、ソーシャルネットワークが大きな役割を果すようになってきている。
  • 時代は流れて2010年の年末となった。Facebookは5億人以上の利用者を抱えている。ページビュー数ではGoogleを上回る状態となった。総ウェブ閲覧時間の10%以上がFacebookで賄われるような時代となった。Facebookはオンライン広告、写真やビデオ発表の場、あるいはオンラインゲームのための巨大プラットフォームとなった。さらにはメール界にも影響力を及ぼそうと画策中だ。これからの十年をまとめれば、Facebookが主役となるのは間違いない。しかしそこからさらに10年経た2020年から現在を振り返ってみれば、「Facebook独占」という話題も笑い話になっているのは間違いないと考えている。

// Social Networks: Past, Present & Future

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(翻訳:Maeda, H)