FlickrこそがInstagramのようなサービスを作るべきだったのではないか。そうならなかった理由を「なかのひと」が解説

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6月にKellan Elliott-McCreaがYahooを去る旨の記事を掲載した。開発者コミュニティ外にはさほど名を知られていない人物だが、Flickrチームにはなくてはならない人材だったとの評判を多く耳にする。「アーキテクト」としての職にあったMcCreaこそがFlickrにとっての肝だったという話だ。そんなわけで、Flickrに関することならMcCrea(現在はEtsyのエンジニアリング部門VPの職に就いている)に尋ねてみるのが適切だ。そしてQuoraで、まさにMcCreaとの間でのFlickr関連QAが実現している。

とくに興味深いのは、なぜFlickrはInstagramやpicplzが実現しているようなモバイル系写真サービスの実現機会を失ってしまったのだろうという質問でのやりとりだ。名前の上がった2つ以外にも、多くのサービスがスマートフォン上の標準としての地位を得ようと凌ぎを削っている。名前の挙がっているInstagramなどは、3ヵ月弱の間に100万人以上の利用者を獲得してもいる。ではなぜ、バックにYahooという豊富なリソースを抱えるFlickrがモバイル上の写真アプリケーションの地位獲得に動かなかったのだろうかという疑問だ。

McCrea曰く、簡単にいえばその原因は「イノベーターのジレンマ」にあるのだとのこと。すなわち、もしFlickrがTwitterのソーシャルグラフを活用しようとすれば、(最近までセキュリティの面から忌避されることも多かった)Twitterのログインシステムを採用せざるを得ず、そうするとYahooが独自に築いてきた会員管理システムが無意味になってしまうというのだ。「Twitterとの連携というアイデアについては、パラノイド気味のYahoo!の連中に徹底的に潰されたんだ」とMcCreaは述べている。

Elliot-McCreaは、Twitterなどが採用する外部サービスと連携するための仕組みであるOAuthの実現にも深く関わっていた。したがって、Yahoo傘下のFlickrでOAuth採用に踏み出せないことに苛立ちを感じていたことだろう。FlickrとTwitterのOAuth連携には結局2年もの歳月がかかることになった。その経緯についてはMcCreaもこちらなどに記している。

ただ、FlickrがTwitterと機能的にリンクはしても、FlickrがInstagramのようなサービスやエクスペリエンスを提供するためにはさまざまな障壁があった。「まるで政治家のようなスタイルを身につけてしまっていた。Twitterとプロダクトのあるべき姿について6ヵ月間もああだこうだと話をすることになった。そんなことをせずにさっさと作っていた統合ツールを世にだすべきだったんだ」とMcCreaは書いている。「また、iPhoneアプリケーションやiPhone用に特化したサイトを作るのか、それともマルチデバイス対応を考えてHTML5によるサイトを作るのかについては*年単位で*話をするようなこともしていた」と話は続く。

さらに、モバイル環境への対応が遅れてしまった理由として、YahooエグゼクティブのひとりであるMarco Boerriesを名指ししてもいる。「モバイル向けのサービスを構築して提供しようという(2006年以来の)Flickr内部の努力は徹底的に潰され続けたよ。そして結局FlickrのiPhoneアプリケーションはCL(Boerriesの率いるConnected Lifeチーム)によって実現されることになったんだよね」。

McCreaの話は、YahooがiPhoneを利用する写真共有分野での覇権を目指してアプリケーションの開発を進めているとされていた数年前、こちらに入ってきたいろいろな話ともつじつまのあうものだ。結局Yahooのアプリケーション開発は遅れに遅れ、一般向けにサービスを提供するまで1年もの期間を費やしてしまった。

つまるところYahooが愚かだったということなのだろうか。この点については、やはりQuoraでFlickrの共同創立者であるStewart Butterfieldが回答を寄せている。質問はFlickrとInstagramについての直接的なものではなく、Flickrのイノベーション体質とでもいうべきものについてだ。曰く「FlickrはYahooではなくGoogleに買収されていた方がよりイノベーティブに成り得ただろうか」というもの。

Butterfieldはこの質問に対し、次のように回答している。「それはどうかわからないね。ただ直感で言うのならさほど変わりはなかったんじゃないかと思う。Yahoo!傘下にあってはリソース不足に泣いたけど、結局Googleでも同じようなことになったんじゃないかと思う」。

またMcCreaも部外者大勢の見解に反し、機会喪失の原因の全てをYahooのみに帰するべきではないと述べている。McCrea曰く、Yahoo以外でもたとえばRadarというサービスも、モバイル写真共有サービスを目指したものの結局成功することがなかったと述べている。もちろん私もRadarについてはよく知っている。2009年1月には、肯定的な記事も書いたし、数カ月後に実現したFlickrとの連携も興味深く見ていた。しかし結局は親会社ともどもうまくいかなかった。親会社のTiny Picturesは、2009年のうちに少額でShutterflyに売却されることとなった。

APIを使ってFlickrを利用するInstagramのようなものが作れれば最強だったんじゃないかと思うよ。Flickrに、その他もろもろのものに加え友人発見用のAPIなども実装させることができれば、YahooとFacebookのバックドアでの繋がりを徹底的に活用することのできるすごいものができたと思うね」とMcCreaは言っている。

過去についえては上に書いたような経緯があった。そして現在はさらに問題が増えているともいえる。すなわち、Yahooは再び新しい何かを生み出すのではなく、コスト削減のためにサービスを止めてしまう方向を向いているようなのだ。Flickrもこの方向にあるのではないかと本当に心配している。いくつか、外部の組織がYahooからFlickrを買い受けようとしているという噂も耳に入ってくる。ElliotとMcCreaの書いた内容を読む限り、私たちは「噂」の方に期待をもつべきなのかもしれない。

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(翻訳:Maeda, H)