招かれざる客の再来:「プラットホーム依存」

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編集部注:この記事を書いたのは、シリコンバレーのあるCEOで、Frank Dupreeはペンネームである。

1990年代の終り、ブラウザーの普及はスタートアップにとって絶好の機会となる時代の到来を告げるはずだった。最大の理由はプラットホーム依存の大幅な減少であるユーザーのOSによってサービスや情報へのアクセスが支配されることはもはやなくなった。この何十年で初めて、Microsoftほどの巨人でさえ小さなスタートアップと素手で戦っていた。十年早送りした今、すべてが1985年に逆戻りしてしまった。

スタートアップや投資家が、プラットホーム依存のリスクをよく理解するようになった今も、FacebookとTwitterの台頭によって、ますます多くのスタートアップが著しく他社に依存したビジネスを強いられている。Facebook、Twitter両社の最近の変化によって、現在のAPIが将来もサポートされるかどうかについて、スタートアップも投資家も確証が持てない。今やOSでさえ、驚くほどの速さで劇的変化を遂げる。AppleのiOSを見れば、開発環境の劇的かつ予測不可能な変化によって、いかにスタートアップ、ユーザー、投資家における状況が一変するかがわかるだろう。

現在ほとんどのスタートアップが、Facebook、iOS、Google Appls、Twitter何であれ、外部プラットホームに著しく依存して作られている。依存のしかたには何種類かある。単純に分類すれば、プラットホーム共生型とプラットホーム寄生型になるだろう。共生型の依存では、両者がその依存を了解し、両者共が恩恵を得ていると考えられる。例えばFacebookプラットホームのデベロッパーがそうだ。最も成功しているのがZyngaで、完全にかつ ― 経営陣と投資家にとっては ― 不安なほどにFacebookエコシステムの中で育っている。

しかし、寄生的な依存もある。そして、望まれていない依存性をスタートアップが形成する時、問題ははるかに大きくなる。Meeboの初期のサービスが、IMネットワークの利用規約に反して、主要IMネットワークに「ハッキング」して侵入した件を考えてみる。 Meeboは、自身をウェブサイト・チェックインおよび共有プラットホームへと、膨大な費用をかけて作り直さねばならなかった(同社は最近の調達ラウンドの結果、総調達額$70M(7000万ドル)に達した)。

実際、「アグリゲーション」(集約サービス)分野のスタートアップの大半が、彼らのサービスを利用規約違反としたり、自社サービスの次期機能としてしまうビッグプレーヤーたちへの依存性に悩まされている。ソーシャルメディア・アグリゲーションツールのTweetDeckSeesmicを見てみよう。TwitterやFacebookのように寛容なAPIアクセスを提供するサービスでさえ、新サービスの提供時に無意識のうちにスタートアップの権利を損ねる場合があることが明らかになってきた。Seesmicにとってそれは3番目の主軸とみられる。同社はブログのビデオ・コメント用プラットホームとしてスタートし、そこからデスクトップ・クライアントを使ったソーシャル・アグリケーションへと移行し、最近Twitterが設計変更を行うと、プラグイン(別名ロングテール)およびエンタープライズユーザー分野に参入した(最近のSalesForce.comとの提携およびプラグインの発表を参照)。このように、Twitterのような初期段階にあるプラットホームでは、SeesmicやTwweDeckといったサービスは、プラットホームにとって共生型、寄生型の中間のグレイゾーンにある。

そして、100%寄生型のプレーヤーとして例えばRapleafいる。この会社にはよからぬ噂がある。Rapleafのビジネスは、強引かつ密かに集められたソーシャルネットワークのデータをメールアドレスと照合することに基づいているのである。最近Facebook、Linkedinの両社は、Rapleafがデータ収集を中止し、これまでに集めた6億5000万件のメールアドレスに関わるデータを消去しなければ法的措置に出ると警告した。その結果、2週間前Rapleafは、両ネットワークから取得した情報の自社ユーザーへの提供を中止することに同意した。これがビジネスにとって良いわけがない。

しかし、もっとひどいに違いないのが、ビジネスのほとんどまたは全てをRapleafから買ったデータに頼っていたスタートアップだ。二重の依存性ということになる。GistEtactsRapportiveの三社を見てみよう。いずれのスタートアップもRapleafのデータを使って、ソーシャルネットワークの情報(写真、タイトル、アップデート等)を、Gmailなどのメールアドレスと併せて提供していた。Rapleafから送られてくるデータから、FacebookとLinkedingのデータがなくなると、彼らに残されたのは今月打ち切られる前にキャッシュしておいたデータだけだ。そして、Rapleaf方針変更から数週間後、GistがRIMへの身売り交渉を始めたと言われ、EtactsがSalesForce.comへの売却($6M[600万ドル]との噂)を発表したことは驚くにあたらない。しかし、買収した会社がこれらの会社とRapleafとの依存関係を正しく理解しているのかどうかは疑問だ(予言:Rapportiveも近々身売りせざるを得なくなるだろう)。

プラットホームの寄生的アクセスには代替手段もあるが高くつくこともある。どうしてもビジネスにとって必要なら、自らデータをゼロから作るか、提携契約の手間をかけてデータを利用すればよい。寄生と比べて成長は遅くなるかもしれないが、少なくとも自分の運命は自分で決められる。Zyngaのように、一プラットホーム内でのビジネスに成功しているスタートアップでさえ、その成長にとって最も重要なのは、プラットホームへの依存度を軽減することだ。

しかしながら、スタートアップと投資家にとって、他人のプラットホーム上で開発することの誘惑と恩恵は、先方の了解を得るにせよ得ないにせよ、見過ごすにはあまりにも大きい。決定的に重要な初期ユーザー獲得において、Facebookのようなプラットホームからの誘惑の言葉を無視するためには、恐ろしいほどの狡猾さ(あるいは愚かさ)を必要とする。Facebookの上でアプリを構築することによって、開発費用を削減できると共に、膨大なユーザーベースを直接アクセスすることが可能になる。他にどんな選択肢があるというのだろうか。単独で行うことによるコストを別にしても、大部分のスタートアップは成功のためにただならぬ依存性と直面することになる。モバイルOSはいくつ存在できるのだろうか。スタートアップは論外として、iOSとAndroidの後、Microsoft、Nokia、Palmといった大物プレーヤーでさえ、モバイルOSの空間では不確かに見える。

というわけで、今後最も成功するスタートップは、プラットホーム依存という地雷原を渡り歩くことに最も長けた者たちになるだろう。そして、iOS、Facebook、Twitterなどのプラットホームから受ける恩恵が、開発コスト削減と顧客獲得にとってどれほど重要であるとしても、私たちが最初のプラウザーとした約束 ― スタートアップと業界の巨人がそれなりに同条件で戦った世界 ― が粉粋される悲しみを禁じえない。しかし、今また世界はプラットホーム時代になりつつある。そして、プラットホームを支配する企業は、利益も支配する。

写真提供:Flickr/uub

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(翻訳:Nob Takahashi)