GoogleがH.264に関する同社の立場を説明, Webビデオの未来の鍵をFlashに渡す気だ

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今週初めにGoogleは、あまり目立たないChromiumのブログの、しかもとても短い記事で、重要な変更事項を発表した: ChromeからH.264コーデックのサポートを外すというのだ。淡々と簡潔に実務的に発表するつもりだったのだろうが、この記事は、その意に反して天をも揺るがす大騒動を巻き起こした。まるで、人間なら誰もが、一人残らず、その決定に賛否を投じなければならない、的な騒ぎだ(本誌なんか、二回も賛否しちゃった)。

意外な結果に驚いたGoogleは今日(米国時間1/14)、最初の3段落の記事を補足する10段落の記事を書いて、今回の決定の意図を説明している。それは、たしかに最初の記事よりは分かりやすいが、それでもまだ、読後感は全然すっきりしない。

Googleも言ってるように、話題の主人公はあくまでもHTMLの<video>タグだ。この検索巨人は、HTML5によるWebビデオにどのコーデックを使うかで悩んだ。SafariとIEはH.264で行く。しかしMozillaとOperaはそれを拒否し、Ogg Theoraを選んだ。そこでGoogleはWebMを構想し、MozillaとOperaの参加を求めた。でも残念ながら、それで問題は解決しなかった。SafariとIEがWebM同盟に参加するかどうかが、まったく不透明だからだ。

H.264とWebMをめぐって複数のメジャー勢力のあいだに分裂があることが、今回の問題の核心だ。Googleは今日の新しい記事で自分たちのビジョンは明快に説明しているが、そんなものは問題解決の助けにならない。厳しい現実としてGoogleは、H.264から一抜けたことにより、今後数年間はHTML5ではなくFlashを、ビデオのデファクトスタンダードとして護持することになる。

どうしてそうなるのか? Googleの主張はこうだ:

まず第一に、H.264にはライセンス要件があるためにFirefoxとOperaはサポートしていない。両者は、WebMとOgg Theoraをサポートしている。したがって、HTMLの<video>タグを使うパブリッシャーやデベロッパは、この二つのブラウザを使っているデスクトップやモバイルWebという相当大きなユーザ人口を、サポートしないと決断しないかぎり、いずれにせよH.264以外のフォーマットをサポートせざるをえない。

でも、これとまったく同じ理屈をIE/Safari勢力も言える。IEとSafariはWebMをサポートしない。それにIEとSafariのデスクトップとモバイルWebにおけるユーザ人口は、Googleが挙げているFirefox/Opera人口よりずっと多い。だから要するにGoogleは、メジャーな勢力ではなくマイナーな勢力の側についているのだ。

それはそれでもよいが、でも分からないのは、今回の決定によって何かが変わると、なぜGoogleには信じられるのか? それはまるで、Googleは大穴の馬券を買ったけれど、それを的中させる方法がない、という状況に似ている。Googleのこのような根性は、言うまでもなく、過去に何度も失敗に終わっている。今回も、ぼくなら、また失敗するほうに賭けるね。

良くない副作用として、WebビデオにおけるFlashの支配が続いてしまう。Googleはその理由も、おおむね述べている:

H.264はビデオにおいて重要な役割を担っており、今日のWeb上のH.264によるビデオのほとんどが、 FlashやSilverlightなどのプラグインをを使って視られている。Chromeはそういうプラグインを、今後もサポートする。ただし弊社の今回の発表はあくまでも、<video>タグに関連しており、それは今後のHTMLプラットホームの一部だ。HTMLによるビデオ、というプラットホームには大きな将来性があるが、今現在はほとんどのサイトがそれを使っていないので、Chromeの<video>タグサポートに関する今回の弊社の決定によってただちに影響を受けるユーザもほとんど存在しない。

この”ただちに”は、”今後とも”であるべきではないのか。

Appleの製品は、個人の好き嫌いとは関係なく、とくにそのモバイル製品は無視できない巨大なユーザ人口を有している。そしてAppleがWebMをサポートしないのなら、パブリッシャーはサイトのH.264バージョンとWebMバージョンの両方を毎回作るか、またはH.264だけに対応してGoogle製品やFirefox、Operaの上ではFlashを使わせるという選択になる。

でも、この綱引きにWebMが勝つというシナリオは、どう考えても見えてこない。それに、Google抜きではH.264にも勝機はない。HTML5のビデオは落としどころを失い、結局Flashが勝者になる。

H.264に関しては、ライセンスが問題になっている。でもGoogleは、買収によって得たWebMコーデックに、既存のパテントに触れる部分がない、そのことを精査により確認した、とはまだ言っていない。ただ、”ないと信ずる”と言っているだけだ。信ずる、ではお話にならない。WebMが大きく普及したら、大量のパテントトロルたちの餌食になるだけだ。そしてその危機を切り抜けることが、難事業になる。

Googleは、H.264のライセンス料金はGoogle自身にとってはたいした額ではなくても、これからのビデオスタートアップたちにとっては障害になる、と言っている。それはごもっともだけど、実際にどの程度の障害なのか。つまり現時点では、分かっていないことが多すぎるのだ。

しかし今は、こういったことはすべて、本題ではない。より大きな問題は、H.264のサポートを外すことによってGoogleは、Webビデオの未来の鍵をFlashの手に渡して(戻して)いることだ。唯一の打開策は、YouTubeにWebMの使用を義務づけることではないだろうか。そして、YouTubeがAppleとの協定に基づいてサポートしているH.264のサポートを取り下げれば、Appleも譲歩してモバイルのSafariでWebMをサポートするかもしれない。でも、Appleは頑固だから、そういう事態になっても折れないかもしれない。しかもそんなことをしたら、”悪を為すなかれ”というGoogleの社是にも反してしまうだろう。

元々、Googleのこの動きは、”オープン(な)イノベーションの推進”という同社の目標に向けての動きだった。でも今日明らかになったのは、同社の言う”オープンイノベーション”が包括的でないことだ。たとえば同社は、Flashのような私企業規格の製品にブラウザ内の普遍的な位置づけを与えて平気でいる。HTMLに関しても、MP3やAACのサポートは外していないから、”オープンイノベーション”とは言えない。HTML5のビデオに関してのみ、”オープンイノベーション”なのだ。とても心の狭い”オープン”だね。

そこで、要点をひと言で言えば、「オエーッ」だ。

これも読んで: So Much For Standards, Google Says WebM Plugins Coming Soon For Safari And IE9(スタンダードが泣くよ,GoogleはSafariとIE9にWebMプラグインを提供)(未訳)

[写真: flickr/Bohman]

〔訳注: この記事自体はHTMLと従来からのWebビデオ(やWeb上のオーディオフォーマット等)との混同によって全体的に破綻しているので、原文のすぐれたコメントをいくつか読むことをおすすめします。〕
〔参考記事。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))