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ジョブズがそう思わなくても、Appleの定期購読戦略が出版社を潰す

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モバイルアプリの時代、これは1996年の再来だ

編集部注:本稿の執筆者、Tien Tzuoは、定期購読料金請求会社、Zuoraのファウンダーである。同氏はSalesforce.comの元最高戦略責任者で、第11番目の従業員だった。

出版社は何年もの間もがき続けている。今地方新聞や雑誌、New York Timesにいたるまでが、固定収入を維持しようとしている間に、Appleには財布を盗まれ老いぼれ扱いされている。

先週Appleは、出版業界が熱望していた定期購読サービスを発表したが、その見返りは30%もの手数料だった。印刷版と連携するか否かによらず、有料定期購読があらゆるオンラインメディアの将来を担うことは明らかだ。The Dailyがまさしくそれであり、AOLでさえいずれ同じ道をたどる可能性がある(Tim ArmstrongがCNNでそのことを認める発言をした)。これは今、メディアに限らずソフトウェア、クラウドコンピューティング、通信、消費者向けサービス、エンターテイメント等広く起こり始めている、定期購読経済への移行の一環である。ちなみに私の会社であるZuoraは、昨年だけで$1B(10億ドル)以上の定期購読収益を上げた。

しかし、非常に危険なことが起ころうとしている。今Appleは、出版業界全体のデジタル戦略を支配しようとしている。このことを少し考えてみよう。Appleは先進的で優れた製品を作るが、決して出版のエキスパートではない。しかしAppleは、出版業界全体を屈服させるかもしれない新ルールを設定しようとしている。まるで、まだその地位にいないかのように。

Appleが出版社を救えないとは言っていない ― 今の金銭条件ではそう思わないが。問題は、そのモデルが出版ビジネスの現実を完全に無視していることだ。

  • App StoreとiTunesが提示している料金モデルは一種類だけだ。一つのモデルがSan Jose Mercury NewsWichita EagleRunners Worldにあてはまるのか。現実は、出版物によっても購読者によっても大きく異なる可能性が高い。
  • Appleは、リアルな物品とデジタル製品を組み合わせる方法を持っていない。宅配は永久にやめたいのか。それとも、毎週の日曜版や、付録の月刊紙をデジタル版と一緒にもらいたいのか。ほとんどの消費者が、この中間のどこかを希望すると私は確信している。
  • <liAppleのモデルでは、タブレット版の雑誌や新聞から十分な広告収益を上げることができない。特に、日曜の配達をやめることによって、地方紙は膨大な広告手段を失う。

  • 消費者は、1つのデバイスを通じての購読だけでは満足しない。その時持っているどのデバイスの上でもニュースを読みたい。BlackberryであれiPadであれAndroid電話であれ。Amazonは、「Kindleリーダーをどこにでも」戦略を全面展開しているし(しおりの同期まで)、GoogleはSports Illustratedの定期購読に関するTime Inc.との契約で、厳しい基準を設定している。出版社は、コンテンツ普及のためにはプラットホーム無依存が必要であることも知っている。
  • Time Inc.の前EVP、John Squiresによる先週の記事が指摘するように、顧客情報の利用は、出版社のビジネスモデルにとって不可欠である。Appleの世界ではこのデータをAppleが制御する。

Steve Jobs本人の言葉を借りれば「機能的なメディアは機能的民主主義に不可欠である」。同感であり、出版社が自らの運命をもっと支配できる ― かつ誰もが経済的恩恵を受ける ― iPad等のデバイスの特質を生かしたもっとうまい方法があると私は思う。

では、出版社がすべきことは何か。

  • 物事は自らの手で動かせ:ジューシーな赤いリンゴ、その名もiPadに誘惑されてはいけない。自分のコンテンツをさまざまな方法でパッケージ化して売れるよう、自前のオンライン購読戦略を作る必要がある。
  • 父親の時代の定期購読とは違う:この業界は未だに「定期購読」を単純化しすぎている。そう、消費者は完全な「定期購読のみ」のシステムには切り替えない。だから、コンテンツを毎月、記事毎、配達日、オンラインなどに切り分けてパッケージ化できる柔軟な課金システムが必要だ。
  • わかりやすくせよ:顧客にはワンクリックの利便性と、PCIセキュリティー標準準拠の支払いおよび課金方式を提供する。バンドル販売、クロスセル、迅速なプロモーションなどによって、従来のコールセンター以上の読者獲得を可能にする必要がある。

そしてAppleに名誉を回復する方法はあるのか?

  • 顧客に利益を:もし30%の手数料を取るなら、出版社に購読ユーザーの顧客情報を所有させるべきだ。情報を共有すればどちらにも得になる。ユーザーに「オプション」ボタンで選ばせれば済む。
  • 選択の自由:消費者は印刷版もデジタル版も欲しい。これは音楽ではない。CDにはこだわりがない。殆どの消費者は宅配も続けてほしいし、出版社はプラットホームやデバイスを自由に横断してビジネスがしたい。「コントロール」と「クローズド」は、アンチ独裁ブランドとは全く相容れない。
  • 互いに助け合う:出版物の販売は、ブラック・アイド・ピーズの新曲を売るのとは違う。iTunesモデルでは、いずれ新聞や雑誌のタイトルが消えてしまう。App Storeの一部になるだけでは十分ではない。30%を取るからには、もっと高い商品価値を届ける必要がある。

結論。 購読経済は始まっており、購読方式によってコンテンツを提供することでAppleは称賛されるべきだ。残念なことにAppleのモデルは、上っ面をなでているだけだ。出版社はこのリンゴをかじる前に、よく考えてみる必要がある。現在の仕組みは、出版社のオンライン世界への移行を助ける以上に、困らせることになるだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi)