「SaaSは対象でない」とジョブズ―では新講読ルールによる「出版アプリ」とは?

次の記事

去年の今日は何してた? 昨年のチェックイン情報を毎日メールで通知してくれる4SquareAnd7YearsAgoが登場

われわれの講読モデルは出版アプリを対象としている。SaaSは対象ではない。

スティーブ・ジョブズのものとされるメール

Appleのアプリ内講読の条件をめぐる騒動が収まらない。とうとうスティーブ・ジョブズも彼のお気に入りの方法―個人的メール―で上記のような神託を告げる必要を感じたようだ。Appleの新モデルの条件は明確に「App Storeを利用したあらゆるコンテンツ、機能、サービスの販売」が対象になると述べている。しかしJobsは出版(パブリッシング)アプリとSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)アプリを区別していく考えのようだ。たとえばSalesforceやEvernoteアプリはSaaSとしてのサービス提供であり、iPhone/iPad以外の他のデバイスやウェブを通じたユーザーに対するのと同じサービスを提供している。

Appleはここで一歩後退を図っているようだ。私が金曜日にTechCrunchのFly or DieシリーズのビデオでRhapsody(iPhoneに音楽ストリーミング・アプリを販売している)の社長、Jon irwinと話したが、彼はあらゆるアプリを対象とした当初の条件は観測気球だったのではないかという意見だった。新しいアプリ内講読/決済システムは明らかにメディア・アプリ、特に電子出版を念頭に置いてデザインされている。Appleは結局、他のタイプの講読に対しては新ルールを適用しないことに決めるかもしれない。ジョブズのメールはAppleが市場が示した拒否反応に対応しようとしていることを示しているのではないだろうか。

この問題に賭けられているものは非常に大きい。Appleは既存、将来を問わず、講読モデルのアプリのデベロッパーの重要な部分を敵に回したくはないはずだ。Instapaperのファウンダー、MarcoArmentは憤慨してこう書いている

包括的で曖昧、気まぐれに適用され、正当化しがたい強欲なルールが存在しては、デベロッパーがそのプラットフォームに惹きつけられることはない。

そこでAppleは出版アプリとそれ以外の講読モデルのアプリの間に線を引くことにしたようだ。これによってある程度曖昧さが取り除かれることになるだろう。おそらくSalesforceはアプリをiPhoneから引っ込めることを考えなくてもよい。

しかし、ここで次の疑問が生じる。 正確に言って、「出版アプリ」とはどんなものを指すのか? 伝統的な印刷出版物に似たコンテンツ、たとえばThe Dailyだとか、雑誌アプリ、New York Timesアプリなどが有料定期購読を始めれば新ルールの範疇に入ることになるのは明らかだ。最近登録を拒絶されたReadabilityは、ウェブページから広告を抜いてユーザーに再配信する有料アプリだったが、Appleはこれも新ルールの適用対象とした。しかし、その論理でいくと、あらゆる有料講読モデルのニュースリーダー・アプリに新ルールが適用されることになりそうだ。

しかしニュース・アプリは? ニュース・アプリとは明らかにニュース閲覧ソフトウェアである。もしTwitterないしTwitterクライアントが有料化したらどうなるのだろうか? こうしたアプリは出版アプリなのかコミュニケーション・アプリなのか? たとえば、FlipboardやPulseのようなアプリを考えてみよう。これらはTwitterその他のサービスからのフィードをリアルタイムで自動的に個別ユーザー向けに編集してカスタム版のコンテンツを作ってくれるサービスだ。こうしたアプリが(どちらも現在は無料だが)、将来仮に課金を始めたら、Readability同様、Appleの新しい講読モデルを受諾しなければならないことになるはずだ。

それではニュースを読むためのアプリはすべて出版アプリなのか? おそらくそうなのだろう。では他のメディアを対象とする講読モデルのアプリ、音楽ならRhapsody、Rdio、MOG等、映画ならsNetflixなどのアプリはどうだろう? Rhapsodyは新しい音楽コンテンツを発表しているわけではない、既存の楽曲をストリーミングしているだけだ。Netflixも自前でコンテンツを製作しているわけではない。単に配信しているだけだ。Appleはこうした講読型のメディア・アプリに対する取り扱いを依然はっきりさせていない。こうしたアプリは「出版」を行っているわけではないから、新ルールを適用するべきではないというのが私の考えだ。

最後に、サービスとして提供される個人向けパブリッシング・アプリの問題を考えてみよう。無料版と有料版の双方を提供している人気アプリとしてはEvernoteなどがある。 こうしたサービスは個人出版アプリと考えられないこともない。Evernoteを利用してユーザーは、写真やノート、ウェブ・クリップその他のデジタルコンテンツをウェブに公開することができる(非公開にもできる)。これらのサービスの有料版はアップロード容量、サポートするファイルの種類などが拡大されるなど無料版より優れた機能が提供されている。有料版は無料版より機能の高いソフトウェアを提供しているだけだが、結果としてはある種の個人パブリッシングと考えられないこともない。しかし有料版は、コンテンツを販売しているわけではなく、ソフトウェアの機能の差に課金しているに過ぎない。

いずれにせよ、ジョブズが新たに引いた線がこのまま長期にわたって維持できるとは考えにくい。最近、出版アプリは、いろいろな面で一般アプリと区別が付きにくくなっているからだ。出版アプリは単なる多機能PDFリーダーといった存在から脱しつつある。優秀な出版アプリは単にコンテンツを販売するだけでなく、3D写真、ソーシャルニュースフィルタ、拡張現実といった高度な機能に課金するようになりつつある。

< div class="cbw_footer">Information provided by CrunchBase

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦/namekawa01