ニューヨークタイムズ有料化にソーシャルな抜け穴―FacebookとTwitterから無制限アクセスができる

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今朝(米国時間3/17)、ニューヨーク・タイムズが発表した有料化プランには興味ある側面が多々ある。今後、ニューヨーク・タイムズは、トップ記事は無料、1ユーザーあたり一定数の記事は無料、料金は閲覧するデバイスによって異なる、Appleに対しては30%の手数料を認める、等々。

しかし私がいちばん興味深く感じたのは、プレスリリースの中程でごく簡単に触れられていた部分だ。FacebookまたはTwitter経由でニューヨーク・タイムズにアクセスする場合は、回数制限なしで無料だというのだ。

有料化マニアのウォール・ストリート・ジャーナルもこれまでにこういった無料の抜け穴を用意してきた。しかしそれはGoogle検索を通じてだった。ウェブに詳しいユーザーなら全員知っているとおり、有料のWSJ記事を読みたければ、タイトルをGoogleで検索するだけでよい。検索結果のリンクをクリックすると、ほら、ご覧のとおり無料で全文が読める。ユーザー登録をする必要もない。ニューヨーク・タイムズの今回の試みはこのモデルを、いわば裏返してにしてさらに一歩進めたようなものだ。

ニューヨーク・タイムズの場合にもGoogle経由の抜け穴は存在する。しかし、前述のようにこれは1日5記事までという制限がつく。どうやってユーザーのアクセス回数を勘定しようとしているのは分からないが(クッキー? ログイン?)、仮に何らかの方法で正確に回数が判定できたとしよう。たいていの読者にとっては1日5回もアクセスできれば十分以上だろう。しかしその点は問題ではない。興味深いのはニューヨーク・タイムズが2つのメッセージを同時に伝えようとしているようにみえることだ。つまり、第一に、ニューヨーク・タイムズは、Google検索から流入するトラフィックよりも、TwitterやFacebookのようなソーシャル・プラットフォーム上に拡がるバイラルな拡散をより重視していることが分かる。ウェブ上で活発に発言し影響力の強い人々からの反発を最小限に抑えたいということなのだろう。

コンテンツの有料化というのは困難な企てだ。証拠といえば、有料化を企てたほとんどすべてのサイトが失敗していることでも明らかだ。ペイウォール(有料化という壁)を建てると必ず大きな反発を受ける。しかもコンテンツに無料でアクセスできることに慣れた情報活用能力の高い読者ほどその反発が強い。ニューヨーク・タイムズは、こうした影響力の高いユーザーはTwitterとFacebookに強く依存しているものと推定し、こうしたユーザーからの反発をできる限り和らげる作戦に出たようだ。

この賭けが成功するかどうかは分からない。Facebookは6億人ものユーザーを抱えている。Twitterのユーザーは1億5000万人だ。どちらももはやアーリーアダプターだけが使うサービスではない。
そうでなければ有料購読したかもしれない一般ユーザーのいくぶんかをこの措置で失うことになる可能性もある。しかし最低でもユーザーの反発を最小限に抑えるという目的には役立ちそうだ。

もう一つ、ウェブの旗手がGoogleからFacebookとTwitterに変わりつつあることをこの動きは象徴する。 ニューヨーク・タイムズのすべての記事を無料で読みたかったらGoogleで検索するよりTwitterで検索する方がやさしい。すくなくとも簡単ではある。しかも友達やフォロワーによるソーシャル・フィルターが働くから、検索結果は読む価値のある記事である可能性が高い。

一方で、Googleから流入するユーザーは、時折控え目に勧誘すれば、有料購読者になる可能性が高い、とニューヨーク・タイムズは予想しているのだろう。つまり、Google経由のユーザーは典型的な一般ユーザーであり、年齢も多少高く、テクノロジーに関する知識はそれほどない層だろうと推定しているに違いない。つまり、こういう人々は金を払ってくれる可能性がある。

簡単に言えば、今この記事を読んでいるような読者はニューヨーク・タイムズの有料化でほとんど影響を受けないだろう。TwitterとFacobookというソーシャルサービス経由の抜け穴を利用することになるのは間違いない。

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(翻訳:滑川海彦/namekawa01