クラウド上のスペースはユーザの(借りている)ハードディスクだ–レコード会社の貪欲とは無縁

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音楽をクラウドに保存してストリーミングするサービスへのAmazonの進出は、既存の業界を慌てふためかせる点が最大の魅力だ。Amazonの連中はどうやら、AppleやGoogleが、ここ数年というよりここ数か月やってることをじっと見ていて、ついに、”なんだよ!、ぐずぐずせずにやればいいじゃん!”となったのだ。

いい度胸だ。立派だ。すばらしい。

もちろん、サービスそのものに斬新な点は何もないが、しかし何よりも重要なのは、「無」が「有」になったことだ。Googleなどほかの大型選手たちがわれわれにくれたものは、「無」だ。単なる空約束(Google)であり、果てしない噂の山(Apple)だ。Amazonは、実際にやった。それだけで、十分に偉い。

そして、これから、法廷のゲームが始まる。

CNETのGreg Sandovalの優れた記事が、Amazonの戦術が今後もたらすものについて、解説している。MediaMemoのPeter Kafkaの良質な続報記事も、これからどうなるかを分析している。それらの要点は、著作隣接権–コピーコンテンツの作成/配布送信権など–の保有者である大手レコード会社等が、彼らに一言のあいさつもなくあんなことを始めてしまったAmazonに対してどう出るべきか、今考え中である、ということ。著作隣接権者として最大手のSonyが、いちばん困惑していて、行動の先頭に立つだろうが、しかし、実際に彼らにできることはあるのだろうか?

Amazonの公式の立場としては、”そんなものは何もない”だ。Amazonの基本的な言い分は、顧客が一片のコンテンツ(音楽、ムービー、そのほか)を買ったら、顧客はそれを所有する(所有権が発生する)。所有権者が所有物を自分のコンピュータのハードディスクに置こうが、クラウドからリースしたスペースに置こうが、それは所有権者が行いうる裁量であり、何も問題はない。

ぼくも、これには全面的に賛成だ。

もちろん、実際の状況には曖昧な部分も多い。とくに、かねてからグレーゾーンだったのは、音楽を買ったらその人はその音楽の”所有者”に果たしてなるのか?、という点だ。大手レコード会社などは何年もかけて漫画チックな使用約定を作り上げ、消費者は知らない間にそれに合意している。その使用約定に、消費者が音楽をリモートのサービスに保存してそれをストリーミングすることが、含まれているかどうか? 結局のところ、問題は、ただこの一点に絞られる。

しかししかし、SandovalとKafkaが二人とも指摘していることだが、Amazonの本当のねらいは、とりあえず騒ぎを起こすことにあったのかもしれない。そして、その騒ぎを通じて、世の中を変えていく、と。今回のはAmazonのクラウドサービスのバージョン1で、次のバージョン2でレコード会社等との、何らかのライセンス合意を盛り込むのかもしれない。だとしたら、Amazonのやり方はきわめて巧妙だ。

しかし、根本的な問題が残っている: 料金を払って使っているクラウド上のストレージと、ローカルなハードディスクとは、本当に違うものなのか? 考えてみよう。実際のところ、違う、という見方は、相当に馬鹿げているな。

現在は、iTunesやAmazonなどで曲を買ったら、それを自分のマシンの上で何度でも無料で再生できる。それをCDに焼いてもいいし、MP3プレーヤーに転送してもいい。これらの行為と、クラウドに置くことの、どこがどう違うのか、まったく理解できない。

ストリーミングをする、ということに関して、別途ライセンスが必要、という理屈なのかもしれない。でも、会員制のサイトで会員の一人として音楽のストリーミングを聴く、という状況とは全く違う。このAmazonのサービスの場合は、ユーザがその音楽を”所有”しているはずなのだ。

それに、今後のことを考えると、自分のコンテンツをクラウドに置くことはますます増えるだろう。Gmailでは自分のメールがクラウドにあるし、Google Docsでは自分の文書が…。それに、Dropbox、MobileMe、Chrome OSなどなども、われわれをその世界に連れて行く。それが、未来だ。

もちろん、レコード会社等がクラウドはユーザ個人のハードディスクとは違うと考えるのはなぜか?、という疑問への簡単な答えはある。欲だ。連中は、至る所に、自分が金銭的に得になりそうな機会を見つけ出す。悲しいことだが、それが業界の現状だ。

希望は、Amazonが銃口を下げないこと、音楽をクラウドに置くことに関する馬鹿げたこけおどかしに関して、レコード会社を責め続けることだ。今の彼らの使用約定に書いてあることなんて、どうでもいい。曲を買ったら、それをどこに置いて再生しようが、買った人の自由であるはず。

レコード会社は、消費者は音楽を”買う”(所有権者になる)のではない、と言い出すかもしれないが…。

[画像: flickr/kevindooley]

〔訳注: 日本の過去の判例を適用すると、サービス提供者であるAmazonがレコード会社等の著作隣接権を侵犯している、となる。[東京地裁 イメージシティ]でググってみよう。日本の古いタイプの裁判官には、「消費者の権利」という視点が皆無なので、被告(場合によっては原告)=サービス提供業者、原告(場合によっては被告)=JASRACという図式内では、完全に絶望的。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))