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[jp] エンジェルとVCが語る「日本のスタートアップ投資の現実」

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先週の金曜日に開催されたTECLOSION 2011 Spring主催:DESIGN IT!, LLC.)ではスタートアップに関する幅広い話題が提供された。主催者の篠原稔和氏がオープニングで「日本のテクノロジーが問われている。もう一度日本から、アジアからスタートアップを生み出したい」とメッセージを送った通り、いまこそ「世界を変える」使命を担った起業家に期待されることは大きい。

読者のみなさんはご存知の通り、TechCrunch Japanは4月1日からAOLジャパンの運営になった。今回開催されたイベントTECLOSIONの主催は前運営のDESIGN IT!だ。東京CampStartup Meetingなど、これまでもスタートアップの育成やデビューを、このようなイベントやメディア活動を通して支援してきた。今後についても「インキュベーション的な位置づけでイベントを開催」(篠原氏)していくそうだ。

さて、イベントやメディアといった「お披露目」の活動がスタートアップにとって重要であると同時に、大きな課題となるのが「資金調達」だ。特に日本ではシリコンバレーのように調達した額やそのものの事実、誰がどこにいくら投資したか、といった情報をあまり開示する傾向にない。

今回のイベントではその点で興味深い「日本のベンチャーキャピタリスト/エンジェルのビジョン」と題したキーノートセッションがもたれた。グロービス・キャピタル・パートナーズの今野穣氏、小澤総合研究所の小澤隆生氏、インフィニティ・ベンチャー・パートナーズの小林雅氏、クロノスファンドの松山大河氏といった、タイプの違う投資家がどのようにスタートアップ市場を見ているのかーそれぞれの経験と視点で語られる内容は大変勉強になった。

日本のスタートアップに対する投資環境

エンジェルファンドという位置づけのクロノスファンドを主宰する松山氏は「いけいけどんどんという雰囲気はない」と語る。日本のエンジェル投資には「(投資家の)自社の株価の状況に応じてそれらのマネーを投資に回すというサイクルがある」そうで、日本の現在の市況を考えると低調になるのは仕方がない。

小林氏も「マクロ的には最悪」としつつ、でも「やり方次第でなんとかなる」と、市況に左右されるのではなく同ファンドが進める「起業家っぽい投資」のような方法であれば可能であるとした。

一方で小澤氏は「個人の立場でお金を出す。金額も大したことがないし、小さな会社の共同創業者として参加することがある」といういわゆるエンジェルだ。「去年が多くて、今年も4件やってるので個人的には投資環境がいい」と、nanapiを運営するロケットスタートやKAUPONを運営するキラメックスなど伸び盛りの若手を支援する同氏にとって今の時期はチャンスのようだ。ちなみに「思わず自分で作ってしまった」と自身も新たにクロコスをスタートアップしている。

一方グロービス・キャピタル・パートナーズの今野氏は「1996年からの運用総額は400億(円)。最近では美人時計、ロケットスタートなど投資が加速している」とスタートアップ方面への支援の方向性について語った。

投資をしたくなるスタートアップとは

皆さんが投資したいと思う観点は?という質問に対して今野氏は「2つ。1つは産業であるとかセクターそのものを変えるもの。もう1つは雇用を沢山生み出せる会社に投資したい」と、同社が支援したグリーのように数年に一回大きく成長する企業を支援したいという考えだそうだ。

小澤氏は「当然ビジネスもみるが、こじんまりしてないものがいい。ほとんどの場合、ビジネスプランを見ないので面白い人かどうかが重要。人間的に魅力があるといい」といい、「もう一点がビジネスプランがよくて経営者もいい場合に自分がいるのか、といったことはみる」と、経営者に欠けている部分を自分が支援できるのか、といった視点があると語った。

小林氏は「戦略やビジョンを持つことが需要。単に儲かるというよりはみんなが使うネットサービスで主要なところを支援したい」と同ファンドが支援したUSTREAMを引き合いに「USTREAMに投資したときは5人位のサービス。でも気がついたらこういった会場での中継に使われている。このようなサービスに投資したい」と語る。「常に事業のネタと人を探している。自分たちが100パーセント持ってやる場合もある。案件を探すよりも自分たちで作り出すということをメインに考えている」とインフィニティ・ベンチャー・パートナーズの独特な路線を紹介した。

松山氏は「まず今までどういう会社に投資をしてきたか振り返ると人間関係で信頼している人、この人は仕事ができるなと思う方に投資している。(旧ウノウ、現Zynga Japanの)山田(進太郎)氏に投資したのも学生時代から知っていて有能だと感じたから」と同氏が支援した元ブレイナーで現在はフリークアウトの本田謙氏やミクシィのCTOだった衛藤バタラ氏など、人のつながりを重視する姿勢をみせた。同様に「自分が信頼している人がこの人いいよと強く進められた場合は真剣に話を聞いている」そうだ。

そして重要な指摘として「サービスがイケてれば。逆にサービスがイケてない場合は全くダメ」と、人であると同時に当然ながら最終のアウトプットのレベルも重要な判断の対象になるとした。

日本のシードラウンドでの調達額は?

本誌でもシリコンバレーの資金調達の話題は毎日のように報じているが、実際日本という環境でどの程度の資金調達がシードラウンドで可能なのか三者に見解を求めた。

まず小澤氏は「時代によって変わってきていて段々小さくなっている」とこれまでの投資経験を振り返って語る。「ビジネスプランは(見なくて)いいよということになっているので、まず最初は投資しない。給料だったり、できればサラリーマンの間に来てくれと。軽くサービスをやってみてその分ぐらいはだすよ」というスタイルで、いきなりポンと「1,000万(円)出すことはない」そうだ。

松山氏は「アーリーステージが多くてこれまで27社ほど支援しているが、ファーストラウンドに資金をいれていこうという想いがある。(自分達が参加していることで)次のラウンドでも信用がつくとか、そういうことを期待している」といい、投資額的には「半年なり1年なりやっていける額を渡している。自分がどの程度関わるかも大切」だそうだ。

小林氏は「いくつかオプションがある。自分たちで作れないと思ったらその価値を判断して投資する。例えばグルーポンであれば営業力が勝負になるのでクーポッドと協力して実施した。一緒にやってくれるチームに対して私たちがお金のリスクを引き受ける、というスタイル」と、事業規模によって調達できる金額には差があるという意見だ。同時に「1,000万(円)程度ではなかなかうまくいかない」と事業投資にはある程度の規模感が必要であることも指摘した。

今野氏「アーリーかレイターかはあまり関係ない。例えばnanapiであれば彼らのやりたい壮大な計画に必要な資金を用意している」とこちらもあくまで事業規模によるようだ。「平均で3億(円)程度をいれている。覚悟をもって外部資金をいれてほしい」と語った。

過去スタートアップの取材をするなかで、こういった話題は語られることはあってもなかなか記事にすることはできなかった。特に個人投資家は松山氏が語るように、人間関係を重視する傾向が強く、一人だけ表にでて強い主張をするということは(少なくとも私の取材活動のなかでは)難しかった。それだけに、個人投資家、パートナー、ファンドといった少しずつスタンスの違う投資家の話を短時間で聞けたことは有意義だったと思う。

スタートアップを支援する役割を担うのはこのような投資家であったり、今回のイベントのようなステージ、メディア、Open Network Labのようなインキュベーションプログラムなど大変多岐にわたる。そして同時にそれらの情報はあまりまとまっていることはない。

冒頭でもかいた通り、起業家の重要性がますます高まるなか、シリコンバレーのような起業家が生まれやすい環境をどのように作るのか、多方面に問いかけられているのではないだろうか。