マイクロソフト、$8.5BでSkypeを買収合意。買収の成否および今後のサービス展開やいかに?!
超大型な買収案件が合意に達した。Microsoftが$8.5Bのキャッシュ(85億ドル)でSkypeを買収するという話だ。2008年8月にGreenfield Onlineを$486M(4億8600万ドル)で買収して以来の大型案件ということになる。
M&Aの金額としては、Microsoftの史上最大の出費となる。これまでの最高額は、2007年5月にaQuantiveを買収した際の$6B(60億ドル)だった。
ちなみに買収金額にはSkypeの債務を引き受ける金額も含まれている。
この買収案件は、既にMicrosoftおよびSkypeの双方の取締役会にて合意にいたっている。
Skypeは今後、Microsoftの新たな部門として運営されることになる。現在チーフエグゼクティブの職にあるTony Batesが引き続きMicrosoftのSkype部門におけるプレジデントに就任する見通しだ。尚、この部門はMicrosoftのCEOであるSteve Ballmer直属の部門となる予定だ。
このニュースを最初に取り上げたのはGigaOMのOm Malikだ(彼はしばしばビッグニュースをすっぱ抜く)。続いて事情通からのニュースとしてWall Street Journalにも取り上げられていた。
85億ドルという金額についてはさまざまな意見もある。
買いかぶり過ぎだという意見もあるし、妥当だとする意見もみられる。この点については時を待つしかなかろう。産業評論家やアナリストがさまざまな観点からいろいろな意見を口にするが、数年を経てみないと正確なことというのはわからないというのが一般的なところだ。
但し、金額の妥当性ということを抜きにしても、この買収がさまざまな影響をもたらすことには間違いはない。
毎日数千万人の人がSkypeを使って連絡を取り合っている。音声通話、チャット、ビデオ会議にも対応しているSkypeの利用者は膨大な数にのぼっている。
SkypeがWeb上のビッグブランドであることに疑問の余地はなく(世界中で、個人および企業の双方に多くの利用者を抱えている)、今後十年以上に渡った影響力を持ち続けることになるだろう。
尚Skypeは、2010年の8月に上場して$1B(10億ドル)を調達する準備を行っていた。しかしCiscoのSVPであったTony BatesをCEOに迎えることとなって、サービスから収益をあげる方向に方針転換し、上場プランは凍結されていた。
Skypeの2010年の収入は$860M(8億6000万ドル)で償却前営業利益(adjusted EBITDA)は$264M(2億6400万ドル)だった。但し、原因はさまざまだが純損失が$7M(700万ドル)という状態ではある。
しかし将来をみれば、ビジネスチャンスは今後も一層拡大していくように思われる。潜在的なビジネスチャンスは非常に大きなものと言えるだろう。そういう意味では、今Skypeを傘下におさめておくのは正着だとも言えそうだ(他に渡さないという意味もある)。
今回の買収話は細かな調整を経て正式に成立ということになる。
MicrosoftおよびSkypeは「今年中に諸問題を整理して正式に新体制でスタートしたい」と述べている。
また、Microsoftは「今後も必要な投資を行い、Microsoft環境以外の動作についてもサポートを続ける」と述べている。
SkypeはもともとeBay傘下のサービスで、2009年9月に投資家連合に売却された。投資家連合のメンバーにはSilver Lake Partners、Joltid(Skypeのオリジナルの創設者であるNiklas ZennstromおよびJanus Friisが創立した)、Canada Pension Plan Investment BoardおよびAndreessen Horowitzなどが名を連ねていた。Skypeは利用シーンの拡大戦略を積極的に進め、企業での利用にも、個人ユーザの拡大にも力を注いできた。また教育部門への進出も行い、スマートフォン対応にも力を入れている。
Microsoftの方も、Qikを買収したSkype同様にユビキタス環境の実現を狙っている。たとえばWindows Phone(Nokiaとの提携による)、Xbox及びKinect、Bing、Office 365、Windows Live MessengerなどのLive製品、Lync、Outlook、SharePoint、Internet Explorer、Azureなどを世に出して利用シーンの拡大を狙っている。
また今回の買収により、P2Pやコラボレーション技術のエキスパートや知的資産を獲得できるのも大きい。こうした技術的知識の価値は、最近になってますます重要なものとなってきている。
またリーチの拡大という側面でも今回の買収はMicrosoftにとっての利益となる。Skypeの利用者数はFacebookの利用者数にも比肩するものだ(6億人以上がアカウントを持っている)。さらにFacebookがSkypeとのある種の連携を行っているのも注目に値するところだ。
この買収がうまくいくのかどうかはわからない。しかし理屈から言えば十分に機能しえる買収だということが言えると思う。
ちなみにFacebookもSkypeに興味を持っていたということが伝えられている。しかしVoIPサービスにそれほどの旨みはないと結論づけたらしい。すなわちMicrosoftのSkype買収によって、Facebookが何か具体的な損失を被ったわけではないということもお伝えしておこう(MicrosoftはFacebookに投資もしている)。
先にも述べたがMicrosoftのSkype買収にはさまざまな意見がある。しかしGoogle、Cisco、およびAppleなどが、この件を好意的に見ているということはなさそうだ。直接的にSkypeを傘下にいれたがっていたかどうかはともかく、eBayや独立サービスとして存在していたときと比較して、Microsoft傘下となった今や大きな驚異として成長していく可能性もあるわけだ。
繰り返しになるが、買収の成否は時が経たないとわからない面もある。他社に対する大きな脅威となることもありそうではあるし、また大失敗に終わる可能性もあるだろう。
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(翻訳:Maeda, H)