Red HatのCEOがLinuxConでキーノート: Linuxは世界を変える大規模コラボレーションの要(かなめ)

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今年のLinuxCon North Americaカンファレンスでは、Red HatのCEO Jim Whitehurstがすばらしいキーノートを述べた。Whitehurstは、ビジネスマンであるだけでなく、彼自身がギークだ。彼はRed Hatに入る前から、Linuxとオープンソースを使っていた。そんな彼が世界でもっとも成功したオープンソース企業のCEOになったことは、彼にとってはまさに夢の実現だ。彼は過去20年にLinuxが達成した重要な成果を簡単に振り返ったあと、キーノートの核心部分を述べた: 次は何か? Whitehurstは、間を置くことなくこの問いに答えた: “私には分からない”。

CEOがキーノートで述べる言葉としては、尋常ではないが、でもLinuxをすこしでも知っている人なら誰もが、納得しただろう。これまでLinuxは、とても多くの市場で成長してきたから、Linuxの今後について単純な予言をする試み自体が、ほとんど愚かしいことだ(たとえばLinux FoundationのJim Zemlinは、過去4年間毎年、”今年はLinuxデスクトップの年だ”と言い続けている!)。

とはいえ彼は、今後このOSとそのエコシステムによって可能になるものについて、いくつかの考えを持っている。以下に彼のプレゼンテーションの中から、注目すべき部分を引用しよう:

Linuxは変化を誘引するテクノロジである。”Linuxというテクノロジは、そのテクノロジとはまったく関係のない分野の進歩に火を着ける”。すなわちLinuxは、新しいテクノロジだけでなく、新しいビジネスモデルの誕生と生育を支える。

Linuxは、無料でどんな目的にも利用できる。Linuxのこの性質が、今ではみんなが、あって当たり前と思っている多くのものを、生み出してきた: Amazon、Facebook、Google、…。もしも、これらの製品の展開のために、高価な私企業製品のソフトウェアが必要だったとしたら、彼らの今日の成功はありえただろうか?

さらに、Linuxを使うことによって、迅速でローコストなプロトタイピングが可能である。アイデアの有効性を素早く検証できるから、イノベーションを容易化し、加速する。Whitehurstは曰く: “今どこでどんなイノベーションが起きているかを知りたかったら、オープンソースの世界で今起きていることを見るべきだ”。

Linuxは最初、既存のイノベーションの自由化とオープン化からスタートして、今ではイノベーションを引っ張る役を担っている。今日の先進的なイノベーションは最初にオープンソースの世界で生まれ、それをあとから大企業が製品化していく。Hadoop、Cassandra、などなどはすべて、その後大企業が積極的に取り入れた、オープンソースのイノベーションの好例だ。

今日の最大の流行語である’クラウド’も、まさにこのタイプのイノベーションだ。クラウドに、単一のしっかりとした定義がないのはなぜか? それは、今ではいろいろな企業が、自分なりの応用製品をクラウドと呼び、お互いのあいだに脈絡がないからだ。Infrastructure as a Service(IaaS)があり、Platform as a Service(PaaS)があり、まだ呼び名も決まっていないような複雑で大規模な技術もある。しかしそれらはすべて、オープンソースの世界の、より大きな技術者集団の協力努力から生まれた技術だ。

Linuxのようなオープンソースの開発モデルは、部分的には皮肉とも言えるほどの、優れたコラボレーションの成果だ。たとえば合衆国海軍は、艦隊のミサイル対抗技術を開発するために、パフォーマンスの予期せぬ変動が絶対に生ずることのない、リアルタイムカーネルを必要とした。当時のLinuxカーネルは、そのような決定論的な(deterministic)な性格を持っていなかったので、海軍がそれを提供した。それが、ウォールストリートに直接利益をもたらし、今では株取引の80%が、Linuxとそのリアルタイムカーネルに依存している。

国家安全保障局(National Security Agency, NSA)が書いたSecurity Enhanced Linux(SE Linux)は、今ではRed HatやそのほかのLinuxディストリビューションの基本部分だ。NSAが行った仕事がきわめてセキュアであったため、Linuxは今ではロシア政府が認定するもっともセキュアなオペレーティングシステムだ。

オープンソースという価値観は、今ではとても深く根を張っている。Whitehurstは最近、FacebookのCTOとの会話で、こう質問された: “みなさんが、インフラストラクチャの開発努力とその成果の多くを、無料で提供しておられるのはなぜですか? 御社の競合企業も、それを使いますよね?”。答えは: それはモラルの問題である。Red Hatという私企業としての経営努力にとどまらず、Linuxを扱うことには必然的に、社会的な責任意識が伴う*。つまり、Red Hatという企業のためだけでなく、世界のために良い製品を作らなければならない。それに関しては、協力者も競争者も同じだ。自分の技術によって他社のデータセンターがより効率的になるとしても、でもそれを実現することが、オープンソース世界における自己責任なのだ。〔*: GPLという制約(コミュニティ義務)もある。〕

Whitehurstは最後に、大規模コラボレーションの精神が、世界を変えつつある、と締めくくった。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))