CrunchFundとArringtonの編集長離任に関して―われわれの倫理基準に裏表はない

次の記事

TechCrunchが根本的に(悪い方向へ)変わるかもしれない

arringtonarmstrong

〔日本版注:TechCrunchのファウンダー、Micheal ArringtonはAOLの出資するベンチャーファンドの運営にあたるため編集長を辞任すると報じられている。〕

昨日(米国時間9/1)、Mike ArringtonとAOLのCEO、Tim ArmstrongはCrunchFundというベンチャーファンドを発足させることを発表した。New York Timesの記事によると、このファンドは「ArringtonやTechCrunchの記者が書く対象を含むスタートアップに投資する」のだそうだ。

これはまずい。

さらにまずいことに、TechCrunchが取材対象に投資することはジャーナリズム上の倫理を疑わせることになるのではないかという批判に対してCEOのArmstrongは火に油を注ぐような発言をした。

彼はこう言うべきだった。

「CrunchFundという名前―後知恵で考えれば最悪の命名だったが―ではあるものの、このファンドはMike Arringtonが今まで継続してきたエンジェル投資活動の延長にすぎない。TechCrunchの編集者もライターも、このファンドに対して一切影響を与えることはなく、利害関係も持たない。TechCrunchの日々の編集業務には何の影響もなく、編集の独立は完全に維持されることは申すまでもない」

そう言ってくれればよかったのだが、彼が実際に言ったのはこうだった

「TechCrunchは別の組織だし、別の倫理基準がある。… われわれは通常のジャーナリズムとしての倫理基準を守っているが、TechCrunchは例外だ」

バカなことを言ってくれるな!

Armstrongは愚か者ではない。しかし彼はジャーナリストではないためこういう愚かなことを言ったのだと思う。ジャーナリズムでは「どう見えるか」がすべてなのだ。TechCrunchはZyngaの詐欺まがいのソーシャルゲーム・エコシステムや、最近ではAirbnbの愚行など他社の倫理違反を厳しく指摘してきた。そうすることができるためには、われわれ自身にいささかでも外部から倫理上疑わしく見えるところがあってはならない。

TechCrunchのサンフランシスコ本社にいるライター(特にメディア出身者)の多くがArmstrongの発言に驚き、また怒りを感じたのはそのためだ。

ともかくこれだけは絶対にはっきりさせておこう。CrunchFundはMikeとTimだけ間で生まれたプロジェクトだ。Mike以外のTechCrunchの誰とも一切関係はない。編集者、ライターの多くはNew York Timesの記事で初めてこのプロジェクトの存在を知ったくらいだ。私を含めて事前に情報を得ていたものは、〔疑わしく見えることを避けるためにCrunchFundという〕名前を変えるべきだと強く主張した。Mikeのために言っておけば、彼はわれわれの懸念を受け止め、Tim Armstrongを含めてファンドの関係者と長時間にわたって議論した。しかし結局名前は変更されなかった。

〔略〕

いずれにせよ覆水盆に返らず、だ。Ariana Huffingtonはコンテンツの総責任者としての権限を行使して「Mikeは今後TechCrunchの編集面に関与しない。AOLが後任を決めるまでの間、Erick Schonfeldが編集長代行を務める」と発表してしまった。これに引き続いてMikeの今後の立場、役割に関してHuffington Post内部から互いに矛盾するコメントが次々に出ている。〔Arringtonはメディア部門を離れるが事業開発部門の社員として引き続きAOLに留まるもよう〕

いずれにせよ、私の立場はこうだ。TechCrunchのライターのほぼ全員は、誇りをもって自らをジャーナリストと考えている。われわれははジャーナリストとして一点の曇りもない倫理基準に則って行動している。取材対象と金銭的利害関係を結ぶことはない。CrunchFundの発足はこの点をいささかも変えるものではない。Tim
Armstrongのバカげた発言もこれを変えはしない。しかし、昨日で多くのことが永久に変わってしまったのは事実だ。そもそもこの問題がTechCrunch上で個々のライターによってばらばらに論じられるという不体裁な状況そのものが、Mike
ArringtonがTechCrunchの責任者ではなくなったことを物語っている。TechCrunchには、批判に反論し、編集の独立を確保し、困難な状況の中で確固たるビジョンをもってチームを導くリーダーが以前にも増して必要とされるのは間違いない。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 @namekawa01 Google+