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シリコンバレーでMEGA Startup Weekendが開催: ゲーム、医療、教育の3カテゴリーで勝者が決定

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編集部:この記事はサンフランシスコでウェブサイトのデザインやマーケティング、ブランディングなどを手がけるビートラックスCEOのBrandon K. HIllによるものだ。彼は札幌市出身の日米のハーフで、高校卒業時までほぼ日本で育ち、1997年アメリカサンフランシスコに移住している。SF New TechのJapan Nightなどを企画して、日本から米国進出を希望する企業などの相談を受けている。Startup Weekendは日本でも開催されているが、彼がメンターとして参加したサンフランシスコでの雰囲気を伝えてもらった。

TechCrunch DISRUPT直前の9月9日から11日までの週末にMega Startup Weekendが開催された。Startup Weekendは、起業家、エンジニア、デザイナーなど、スタートアップを構成する人たちが1つの場所に集まり、54時間でサービスを作り上げるイベントである。金曜日の夜に起業家志望の人が自分のアイデアを発表し、それに共感した技術者が同じグループに参加し、プロジェクトを進める。そして、日曜日の夜に完成したサービスをプレゼンし、最終審査を行う。このイベントシリーズで生まれた企業の代表例としては、Food Spottingがある。

シリコンバレーのマイクロソフトのオフィスで開催された今回のイベントは、日本を含めた世界各地で行われるStartup Weekendシリーズの中でも、かなり大規模なものとなった。MEGAと呼ばれる所以は2つ。まずは出場者がゲーム、医療、教育の3つのカテゴリーに分かれ、それぞれから10のチーム、合計30チームが一斉にサービスを作る点。そして、それぞれのカテゴリーで合格したチームは9月12日から14日に開催されたDEMOへの参加権が得られた点だった。

ある程度実績のある企業が完成されたサービスを発表するDISRUPTとは対照的に、このイベントは、まったくのスクラッチから54時間以内にプロトタイプを完成させる草の根的ブートキャンプ型合宿といっていいだろう。イベントへの参加人数は約500人で、本場シリコンバレーの起業家層の厚さを感じた。多くの参加者が平日は企業の社員だったり、先生だったり、医療関係者だったりするために、週末に行われる理由もうなずける。彼らが日頃感じている不便や不満を起業アイデアに転換させ、ビジネスプランを1分で説明する。それを聞いている技術者が「これだったら賭けてもいい」と思えるチームにジョインし、即席スタートアップが編成される。ちなみに参加者のうちゲームは青、医療は赤、教育は緑のTシャツにて識別された。

筆者はこのイベントにデザインメンターとして参加し、それぞれのチームが造り出すサービスのUI/UXやプレゼンテーション、そしてロゴに対するアドバイスを提供するのが役割だった。それ以外にも著名なコンサルタントやエキスパートがスタートアップ支援側として参加していた。最終プレゼンに対する審査員がそれぞれのカテゴリーに詳しい投資家やVC関係者であるのもシリコンバレーのエコシステムの縮図と言える。会場全体は起業家とスタートアップをサポートする雰囲気で包まれ、多くの成功企業を生み出した地域の膝下で行われるイベントにふさわしい空気が流れていた。

金曜日の午後7時にオフィス建物内の講堂にてのReid Hoffmanのスピーチでイベントが正式スタート。スピーチ内容は主にイベントの趣旨である、「起業するか、起業家を助けるか、目的はその2つのみである。」そして、「アメリカという国は、起業家によって支えられており、スタートアップを始めるということ、そしてスタートアップを支援することは国家の経済を助けることになり、最終的に社会貢献になる」とのこと。そして彼の起業家への一番のアドバイスは“小さく攻めるのも、大きく攻めるのも大して労力に違いはない。それであれば大きな夢を見てみよう”ということである。

スピーチ後はそれぞれのカテゴリーごとの部屋に移り、起業家志望の人々がそれぞれのプロジェクトに対して、1.問題提起、2.考えられるソリューション, 3.マネタイズ方法、4. 必要な技術的リソースを1分で説明した。その後来場者による投票によって各10チームが選出された。

土曜日より実際のプロダクト作成に入ると、多くのチームがアイデアのある起業家と、それをコードに書き出すディベロッパーは充実しているが、ページレイアウトやモックアップを造り出すデザイナー不足に見舞われた。実際に、デザインメンターとして、ワイアーフレーム制作段階よりかなりアドバイスが求められ、サービスにおける使い易さと見せ方の部分で、複数のチームと関わる事になった。具体的にはモバイル端末でのロードスピードの軽減を達成するためのUIや、ゲーミフィケーション要素の実装方法、より少ないステップでのアカウント登録ステップ方法など、主にスムーズなUXの実現に関するリクエストが多かった。

また、元々ゲームカテゴリーでのサービス制作を行っていた10チームのうち、制作を進めて行くうちに4チームが教育カテゴリーに、2チームが医療カテゴリーに移動するといったイレギュラーも発生。短時間でサービスをカタチにする場合、ゲームだと時間がかかりすぎる事と,しっかりとしたマネタイズの方法論が提示出来ないのが理由。結果的に教育カテゴリーの競争が激化する事となった。

最終プレゼンは日曜日の午後4時から開催され、下記のそれぞれのカテゴリーから1チームずつ、合計下記の3チームがDEMOへ駒を進めた。審査員からは、サービス自体のクオリティーはもとより、マーケットリサーチ、カスタマーバリデーション(見込みユーザーへのアンケート)、マネタイズに対する精度、競合に対しての優位性、参入障壁等のかなり厳しい質問とフィードバックが提供された。得に投資家としてどれだけ有望なスケール感が見込めるかも勝負の分かれ目となった。個人的に面白いと思ったサービスよりも、よりビジネス的に発展性のあるサービスを提供したチームが優勝したのも審査基準を物語っている。

ゲームカテゴリー優勝: Gablinga

チームのファウンダーはゲーム業界に16年以上経験のあるベテラン及び2人の経験豊かなビジネスマン中心となって形成。ゲームのコンセプトはソーシャル“現実”ゲーム。スマートフォン端末にインストールしたゲームを使い、近くにいるユーザーと遊ぶタイプのゲームである。彼らがプレゼンした一例は、“ホットポテト”というゲームで、スマートフォンが提示する一定時間ポーカーフェイスを維持できれば、隣のユーザーに端末を渡す。表情を崩してしまったユーザーはブザーがなり、負けとなる。極単純なゲームであるが、ユーザー同じ場所にいることで友達とのゲームの楽しさが倍増する。プレゼンでは、前夜のパーティー会場でのテストユーザーが盛り上がっているビデオが放映された。ソーシャルゲームはバーチャルである、という概念を覆し、パーティー文化の根付いたアメリカ市場にはぴったりのサービスである。

医療カテゴリー優勝: LiveHomeFree
アメリカでも高齢者の人口が年々増え続けている事に着目し、お年寄りが1人で外出した時の家族の不安を解消するサービス。スマートフォン+GPS+センサーを活用することで、お年寄りが転んだ際にセンサーが完治し、いち早く登録してあるメールアドレスに場所と転んだ旨が報告される。単純で分かりやすいサービスであるが、携帯電話を使う事に慣れていないお年寄りにはバリューの高いサービスと言える。プレゼンの際に、派手に転ぶパフォーマンスが受け、会場も大盛り上がり。これからの高齢化社会に対応した事で、ビジネス的にも可能性の高いサービスである。

教育カテゴリー優勝: ClassParrot
教育機関に勤める多くの先生の生徒とのコミュニュケーション方法不足に着目し、開発したサービス。アメリカで最も一般的なコミュニュケーションの1つであるのがモバイルテキストメッセージ。メールの約22パーセントだけが読まれるのに対し、テキストメッセージは約98パーセントが読まれている。しかしながら、テキスメッセージトを先生が生徒向けに使うことが多くの学校では禁止されている。そしてそのことにより多くの教員が職を失っている現状を説明。そこで考えられたのが、クラスごとに電話番号を設定し、先生と生徒はそれを使ってコミュニュケーションが可能に。すべてのコミュニュケーションが一見管理され、学校側の検閲もしやすくなるので、利用価値が高い。ちなみにプレゼンでは現在、約50パーセントの先生がテキストメッセージをつかっており、98パーセントが使いたいと思っている。そして、33パーセントが月5ドルの費用を払ってでもこのサービスを使いたいと答えたアンケート結果も提示。カスタマーバリデーションがしっかりできていることが高く評価された。

また、審査員特別賞として、教育カテゴリーよりクイズ要素を含むバナー広告を作成/掲載可能なサービスである、AdGame.coが例外的に選ばれ、既に審査員の1人が投資の検討を始めている。

今回のイベントにメンターとして参加して一番強く感じたのが、スタートアップを始めたいと思っている人々の層の熱さと、その熱意の強さだ。多くの参加者がフルタイムの仕事をほかに持っているが、自分のアイデアや技術を武器に、スタートアップに参画し、世の中に役立てたいと思っている。その一方で、20人程いるメンターを始めとし、審査員やオーガナイザーといったサポート側の人々も、1つでも多くのスタートアップを世の中に出したいと考え、可能な限りの協力を惜しまない。チーム参加者の中には投資家の方もいて、シリコンバレーの土地柄の凄さを物語っていた。やはりこの辺が総合的に日本のスタートアップに対する環境との違いだろうと思う。今後は日本の技術者や起業家も己の腕を頼りにシリコンバレーでのStartup Weekendのプロジェクトチームに積極的に参加することをお勧めする。多少英語が心配で、1人では難しくてもチームのメンバーとなれば、必ず貢献できるだろう。世界中から集まった優秀なタレントが集まっているこの場所にもっと多くの日本人も自然にとけ込める日が来ることを期待する。