シリコンバレーの起業家、日本のY/Cスタイルのインキュベータ、Onlabを訪問

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編集部注:本稿は起業家でOnesheetの開発者、Brenden Mulliganによる寄稿。彼は現在妻で IDEO のデザイナーElle Lunaと共に世界を旅行して各地のスタートアップを視察している。Twitterアカウントは@bmull

日本に行く前に、大勢の知人に東京のスタートアップ・コミュニティーと交流したい場合、どこにコンタクすればよいかと尋ねてみた。すると期せずして全員の答えが一致した―Open Network Labがよいというのだ。

Open Network Lab(Onlab)はY CombinatorやTechStarsタイプの日本のスタートアップ・インキュベータだ。インキュベータはスタートアップに対して助言、オフィス・スペース、少額の資金などの援助を提供し、引換えに株式の一部を受け取る。アメリカではしばらく前から普及しているが、Digital Garage(Twitter、Pathその他への投資家)など日本の有力インターネット企業はこのモデルを当地に移植しようと努力している。Onlabは運営開始から2年目になり、3期にわたってスタートアップを送り出してきた。まだOnlabの歴史は浅いものの、日本のスタートアップ界にすでに大きなインパクトを与えている。

われわれはまずインキュベータ運営の責任者Hiro Maeda(前田紘典)と1時間ほど話しあった。ヒロは日本育ちで日本のインターナショナル・スクールに通った後、ペンシルバニア州のBucknell大学に留学してコンピュータ科学を学び、自身のスタートアップを起業した。数年後、Onlabの創立、運営を助けるよう依頼されて日本に帰った。

しかし、日本でスタートアップ・コミュニティーを作るにはそれなりの文化的ハードルがあった。「スタートアップの起業には多くの不安定性、不確実性がつきものですが、これは調和と安定を重視する伝統的な日本文化にとって異質なのです。しかし若い世代には、日本という国そのものに不確実性が内在していることを自覚するようになっています。大卒者の就職率は過去10年で最低に下がっています。大震災以後、日本人全体が将来に不安を感じています。将来に確実なものはないという自覚とシリコンバレーにおける数多くの成功例への関心の増大によって、日本の若い世代は依然より積極的にリスクを取ろうとしています」とヒロは語った。

こうした環境の変化によって、Onlabに対しては、起業家志望者だけでなく一般公衆の興味も増大した。 しかし起業家精神の理解に関して日本はまだ遅れている部分があるとヒロは言う。リスクを取る意欲は増してきたが、事業の透明性の確保に関してはまだ世界水準に達していないというのだ。

日本の起業家の多くはまだ透明性と情報の共有によるメリットを十分に理解しているとはいえません。アイディアや体験を自分の競争力の根源のように考えて共有を恐れる人が多いのです。」とヒロは説明する。

シリコンバレーのように成熟したスタートアップ・コミュニティーでは、メンバー同士でアイディアや体験を頻繁に共する。また失敗してもそれを隠そうとはせず、他のメンバーが同じ失敗をしないための実例として提供する。ヒロはもちろんこうした実情をよく知っており、Onlabのスタートアップの間にもそのような文化を根付かせようと努力している。「われわれは起業家が失敗の後、次のアイディアに前進することを助けようとしています。起業家の皆さんには失敗は次の事業のための糧となる有益な体験となるものと考えて欲しいのです

ヒロはまた支援するスタートアップの関係者が少なくとも週一回集まって、どんなアイディアがうまくいったか、開発がどこまで進んでいるか、どんな困難に遭遇しているかなどの情報を交換するよう勧めている。これには当初は違和感を抱くメンバーもいたようだが、すでに成果が上がっているそうだ。起業家もこうしたセッションを通じたオープンな情報交換の有効性を時とともに認めるようになっているという。

日本のメインストリーム・メディアもこうした動きの重要性に気づき始めた。

われわれが訪問している最中、テレビ東京が取材に入り、オフィスを撮影し、スタートアップのメンバーに話を聞いていた。テレビ東京の取材班はシリコンバレーからの訪問者が居合わせていると知り、われわれにもインタビューした。「日本にはシリコンバレーに対抗できるような能力があるのか? Onlabはうまくいくと思うか?」というのが主な質問だった。私は「その試みはすでにさまざま場所でうまくいっている」と答えた。シリコンバレーをモデルにしたスタートアップ・コミュニティーは世界中で生まれており、Onlabはその日本版だ。

われわれはその後数時間かけて傘下のスタートアップのメンバーと話をした。全体として、それらの会社のタイプと質はサンフランシスコのベイエリアのインキュベータが支援するスタートアップと同等だと思えた。デザイン、ユーザー体験、ビジネスモデルなどの要素にも十分な注意が払われていた。いくつか見たプロトタイプの質も高かった。

Giftee
GifteeはTwitter、Facebook、メールを通じて「小さなありがとう」をギフトとして送ることができるサービスだ。

FindJPN
FindJPNはAirBnBの日本版を目指している。また日本文化に関するイベントやレッスンの紹介にも力を入れている。

ABCLoop
ABCLoopは英語や日本語を勉強しているユーザーがお互いに勉強中の言語を練習することができる言語学習コミュニティーを提供するサイトだ。

Pirka
Pirka、ユーザーが捨てられたゴミの写真を携帯電話どで撮り、それを拾って適正に処分することを奨励するモバイル・アプリと、「世界をきれいにする」ことをテーマにしたソーシャル・ネットワークを提供する。

Dressful
Dressfulは働く女性向けのソーシャル・ショッピング・サービスで、携帯ネットワークを通じて、ユーザーの趣味や生活環境にマッチするファッション・アイテムの推薦が受けられる。

Mieple
Miepleはソーシャルグラフを通じて新しい友人づくりに貢献する。LinkedInの紹介を全ウェブに広げたような仕組みを目指している。

結論: Onlabからは新しい世代の日本のスタートアップと起業家が次々に生み出されるだろう。今後の動きに注目する価値がある。

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(翻訳:滑川海彦 @namekawa01 Google+