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悲観的時代に楽天家でいるために

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ピーター・ティール:「消費者より中小企業に強いプラットフォームが有望」

編集部注:ゲストライターのDavid Kirkpatrickは、『フェイスブック 若き天才の野望』の著者であり、11月13~15日にアリゾナで開催されるTechonomyカンファレンスの主催者である。

殆どのTechCrunch読者にとって、テクノロジーが世界を変えつつあることは衆知の事実だ。不幸にも、世の中にはそれを理解していない人が驚くほどたくさんいる。さらに不幸なのは、その多くが企業や影響力の強い団体、さらには殆どの政府のリーダーたちであることだ。組織のリーダーとして、国のリーダーとして、あるいは共通の課題に対処する国際社会として、直面する課題を受けて立つためには、テクノロジーとイノベーションを、重要なツールとして素直に受け入れることが、成功するための唯一の方法である。

テクノロジーの持つ膨大な問題解決能力を信じる者にとって、今はワクワクすると同時にイライラする時だ。世界中の人々が携帯電話を受け入れている。20億人以上がインターネットを使っている。Facebookはユーザーに力を与え続け、Weibosは同様の役割を中国で果たしている。世界中の先進企業が、平坦化、テクノロジー化された新たなビジネス環境に適応すべく、システムと経営を再設計している。世界中の人々が、テクノロジーが自分たちの生活を変え、改善できることを認識している。

こうしたテクノロジーの力を得た数十億の途上国の人々が、二流状態に満足することはない。彼らは先進国が何を持っているかを知っていて、自分たちももっと欲しいと考える。当然である。しかし、どうやって手に入れるのか? どうやって食料、住まい、輸送手段、医療、教育を、世界の人々の正当な要求を満たすに十分な速度で拡大していくのか。どうやって世界的に高度化している生活水準に必要なエネルギーを、煙にむせることなく作り出せるのか。そしてもし失敗した時、世界の安定はどうなるのか。富の尺度がバランスを保ち始めなかった時、世界に何が起きるのか。現在われわれは、全地球人のためにその資源を、十分に速くも効率的にも活用できていない。

さらに悪いことに、世界には、国際問題に対する新しいテクノロジー主導の解決法を理解できるリーダーが十分に存在していない。そんなリーダーシップがあるとすれば、ビジネス業界に集中している。そこでもなお、テクノロジーの潜在能力の理解には、心配なほどのばらつきがある。マーケティングや経営、製品開発に新しい手法を取り入れ、社会との触れ合いに力を入れる会社もある。一方では、断固として旧式の経営を続ける会社もある。

複雑さに輪をかけているのは、地理的不均衡の増大だ。米国、西欧諸国、そして日本は、それぞれの深刻な経済問題への対処にためらいを見せ、しばしば政治的停帯に悩まされている。対照的に世界の5分の1近い人口を持つ中国は、高速列車、高性能発電所、計画都市の導入など、前進を続けている。とにかく中国はやる。民主主義など知ったことではない。残された国々にとって、中国の経済が、インド、ブラジル他わずかな国と共に、自分たちと同じ経済不安に耐えていないのを見ることは、気力をくじかれる。

こうした状況にも関わらず、大きな楽観材料がある。テクノロジー ― ITやインターネットだけでなく、エネルギー技術、バイオ、市民工学、その他科学的進歩全般 ― が大々的に成長を活性化させ、より公正で、興味深く、豊かな世界を作る手助けをするのである。


事実上世界で最も成長の速い資源は、計算能力とストレージである。資源の消費速度に生産速度が追いつかない時代にあって、テクノロジーが提供するこの資源の活用をはかることは、あらゆるリーダーに課せられた義務である。これを理解している国々は、テクノロジーの研究開発や教育、特に科学、数学、工学に積極的に投資している。

現在世界をとりまく根強い悲観論の主たる原因は、既存の資源が人間の要求を満たすことができないこてへの恐怖である。ギリシャ人は、早期に引退して社会福祉の恩恵を受けながら生活を楽しむことが、もはや不可能だ。なぜならそれを回していくのに必要な富がないからだ。イタリアも後を追うかもしれないし、次はフランスだと言う者もある。もしわれわれが、文字通りあらゆる効率を改善できるとわかっているテクノロジーに関す知識に関して、格差を縮めることができたらどうだろう。どんな世界が作れるだろうか。

テクノロジー駆動の発展により、国際経済格差は急速に縮まりつつある。もし疑うなら、gapminder.orgに行ってデータを見てほしい。(Gapminder Worldを読み込んで”Wealth and Health of Nations”(各国の所得と寿命)のアニメーションを見ると、進歩に驚かされる)。

テクノロジー楽天家なら、気候変動、文化的誤解、食糧不足、住宅不足、旧式の輸送手段、持続不可能なエネルギー源への依存等、われわれの持つ深刻な課題に対して、テクノロジーが貢献する方法を数多く見出すことができる。

これからの変革は、ボトムアップ主導になる可能性が高い。iPhone、Androidや、Facebook、Apple、Amazon、そしてGoogleの力を得た人々による力だ。それは、ビジネスにとっても政治にとっても新しい環境であり、そこへの遷移は気まぐれで不完全で時には恐ろしくさえある。しかし、人々が古い答えを受けれることはない。それは桁外れにエキサイティングな時代だ。チュニジアはエキサイティングだった。イスラエルの生活費に関する抗議運動はエキサイティングだった。そして、ティーパーティーもウォール街を占拠せよもエキサイティングだった。これらすべての出来事が、一般の人たちが世界で今起きていることに注目し、うわべだけのリーダーたちにより多くを要求し始めていることを示している。もはや人々は無力を感じることなく、行動を起こし始めている。

テクノロジーに基づく発展で、最も心を躍らされるのは、それがゼロサムでないことだ。他の国々で起きている急成長は、先進国の下降を意味しない。もっとも、現在は多少なりともそれが起きているが。われわれは、テクノロジーの指数的な進歩速度の恩恵に預かっており、それはおなじみのムーアの法則によって裏付けられている。そしてハードウェア改善によるスピードとパワーによって、より多くのことがソフトウェアで可能になった。ソフトウェアが良くなれば良い設計が可能になり、乗り物、建物、都市、医療システム、化学工場の効率を高めることができる。

いくら楽観論があるとはいえ、テクノロジーは万能薬ではない。現実に厄介な問題が世界中で起きつつあり、雇用へのテクノロジーの影響はその一つだ。テクノロジーの進歩が生産性、世界総生産、そして社会的富全体を向上させる可能性は高いが、それが奪う雇用の方が生み出される雇用よりも多い。それとは別に、セキュリティー問題は新しいテクノロジーの能力とほぼ同じ速さで高まっている。われわれは効率的で繋がれた新しい世界がやってくることを予見している。しかし、犯罪者であれテロリストであれ反乱政府であれ、世界的繁栄を望まない連中によって、それが弱体化され、ひいては停止させられる深刻なリスクもある。

しかし、テクノロジーの未来を信じるわれわれがより効果的に団結し、共に理解を深めてその膨大な影響力を活用すれば、世界にとって素晴らしい日々が待っている。われわれの任務は、テクノロジーというツールが十分活用されていないという事実を、広く世間に発信し続けることだ。悲観的な時代に、楽天家でいられる理由はいくらでもある。

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(翻訳:Nob Takahashi)