モバイル・デバイスに革命か―リチム・イオン電池の容量が10倍、充電時間が10分の1になる?

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電池がモバイル・テクノロジーのさらなる発達を妨げていることは明らかだ。別に電池のメーカーが悪いわけではない。どのメーカーも充電式であろうと使い捨てタイプであろうと、画期的に改良された電池を最初に開発しようと多大な研究開発の努力を続けていることは間違いない。

しかしこの数年間の電池のエネルギー密度の向上のペースは遅々としていた。デバイスの駆動時間の延長は主としてプロセッサやディスプレイの改良による消費電力の削減のたまものだった。

ところが最近、ノースウェスタン大学の研究チームがリチウム・イオン電池の大幅な改良に成功したという論文を発表した。新しい電池は従来に比べて10倍のエネルギーを10倍速く充電できるという。

これが事実ならブレークスルーと呼んでも過言ではないだろう。

リチウム・イオン電池の内部には無数のグラフェン(単原子炭素層)が積み重なっている。リチウム・イオンはこのグラフェンの間の薄い層に蓄積される。充電の際にはこのイオンが一つの層から次の層へ順次ゆっくりと移動していく。空いた場所にさらにイオンが蓄積されるわけだ。充電の速度はイオンが層の間を移動する速度によって規定される。以前、炭素の代わりにケイ素の薄膜を用いるというアイディアが試されたことがあった。これはある化学的理由でケイ素は炭素の何倍ものリチウム・イオンを保持できるからだったが、ケイ素薄膜は充電/放電のサイクルの間に伸縮し、たちまち破れてしまうため、失敗に終わった。

ノースウェスタン大学のHarold Kung教授が筆頭著者となっている論文(Advanced Energy Materials掲載)によれば、充電過程を改良するために新しい技術が2つ適用されたという。まず、グラフェンの間ケイ素のナノクラスターを充填することにより、炭素とケイ素のそれぞれの長所を組み合わせた。この微小クラスターはイオンの蓄積能力を大幅に向上させると同時に、柔軟なグラフェンの間に挟まれた微小物体であるため、充電サイクルによる収縮への耐性が向上した。Kung教授によれば、これによって充電容量が約10倍になったという。

これと同時に、Kung教授の研究室では、グラフェンに無数の微小な穴を空けることに成功した。これによりイオンが隣の層へ移動する速度が向上した。一種の酸化作用により、10-20nmという細孔を「意図的な欠陥」としてグラフェンに設けることができた。その結果充電速度が10倍になったという。

ただし、この方法には電池の劣化の進行も早いという副作用がある。150回の充電/放電の繰り返しで電池は5倍の容量、5倍の充電速度にまで劣化した。しかしもちろん、この電池の場合、150回の充電で従来の電池の1500回分のエネルギーを蓄えたわけだが。

これほどの改良が一夜にして市場に出回るということは期待しない方がよい。研究チームでは実用化には3年から5年はかかると見ている。残念ながら、7時間くらいで電池が切れてしまうiPhone 4Sのユーザーにとってはあまり慰めになる話ではない。しかし新技術によって電池製造プロセスが近く一変することになるかもしれない。

論文はこちら。In-Plane Vacancy-Enabled High-Power Si-Graphene Composite Electrode for Lithium-Ion Batteries閲覧には購読契約が必要

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(翻訳:滑川海彦 @namekawa01 Google+