salesforce.com
Asana

なぜAsanaはSalesforce最大のライバルなのか―エンタープライズ・クラウドの戦い、いよいよ始まる

次の記事

データ総量制限はネットワーク混雑緩和に効果がない

Screen shot 2011-11-30 at 1.53.01 AM

編集部: この記事はDan Kaplanのゲスト投稿。 KaplanはTwilioのプロダクト・マーケティング責任者で、ときおりインターネットの将来について書いている。Twilioに参加する前は、Salesforceのプロダクト・マーケティングを受託していたことがある。Twitterは@dankaplan、こちらがQuora

Salesforceについてこれは認めねばならないだろう―このクラウドCRM〔顧客管理〕の巨艦は動きが機敏だ。 スタートアップが射ってくる魚雷を巧みにかわして即座に反撃に移る。

最初はYammerだった

2008年にフラッシュバックしよう。YammerはTechCrunch50で最優秀賞を取って 華々しくデビューした。これはTwitter式のリアルタイム・アップデートを中心に据えたエンタープライズ向けのコラボレーション・ツールだ。社内の小グループが自由に試せるよう通常の利用は無料で、ボトムアップでエンタープライズとの契約を獲得しようという戦略だった。社内にユーザーを獲得すれば、その上司の注目をひく(はずだという論理だ)。さらにサービスをプラットフォーム化することにより、自ら、あるいはサードパーティーに多様なアプリを開発させて機能の強化を図っていく。SalesforceのCEO、Marc BenioffはこのときTC50の審査員を務めていたが、Yammerのプレゼンを見て、 「このサービスが一番気に入った」と語った。

1年早送りする。SalesforceのDreamforce 2009カンファレンスでBenioffはChatterというニュースフィード・アプリを発表した。これはSalesforce CRMに統合される点を除いてはYammerに瓜二つだった。

さらに早送りして2011年のDreamforceカンファレンスを見てみよう。Yammerは会場のモスコーニ・センターの周りでStarbucksの無料ドリンク券を撒き、Salesforce.comとの連携機能を宣伝した。

Salesforceの参入でエンタープライズ版のTwitterになろうというYammerの野望にどの程度の影響があったかはこれからの問題だが、Beioffの投じたChatterがYammerという潜水艦を狙った爆雷だったことは間違いない。

そして今度はAsanaだ

今月初め、満3年近くの開発期間の後に、Asana(2009年にFacebookの共同ファウンダー、Dustin Moskovitzと同じFacebookの初期の社員、Justin Rosensteinが設立したスタートアップ)が、野心的プロダクトをローンチした。これはto-doリストとプロジェクト管理を中心としたコラボレーション・アプリだが、ほとんどの機能が無料で提供される。エンタープライズ内にユーザーを獲得した後、ボトムアップで売り込みをかけ、プラットフォーム化により機能の多様化を図るという、これも典型的なフリーミアム・マーケティング戦略だ。

すると、わずか5日後にSalesforceはDoを発表した。こちらもシンプルなコラボ・ツールで、小チーム向けのto-doリスト機能とプロジェクト管理機能を中核としている。SalesforceのCRMサービスと統合されているのも言うまでもない。そして―これまたAsanaにそっくりだ。

またしてもSalesforceのソナーに反響音があったわけだ。戦艦は急転舵して敵潜水艦に襲いかかった。しかしAsanaは今までの敵とはまったく異なり、はるかに危険性の高い脅威だということをSalesforceはすぐに悟るだろう。

「クサビの先端」

いかにFacebookのスーパースターが作ったプロダクトだからといって、たかが新しいプロジェクト管理ソフがクラウドの巨人SalesformのCRMにとっていささかでも脅威となるということは不思議に思えるかもしれない。

Salesforceが2000年にオートメーション・アプリを発表したとき、その内容は顧客とのやり取りの管理システムにすぎなかった。売り込みの天才、Marc Benioffはこのコア機能とクラウド利用の優位性を武器に、営業部門を通じてエンタープライズの世界に勢力を拡大した。

当初のサービスを橋頭堡に、自社とサードパーティーのアプリによって次々に新しい機能を付け加えていった(このプロセスChris Dixonは的確にもクサビを打ち込む戦略と名付けた。一つの小さなプロダクトで市場に参入を果たすや、クサビを叩きこむように次々と新しい機能を付加して存在を拡大し、最後には市場を支配してしまう。

ただし、Salesforceが取ったこの方式には、ひとつの問題があった。クサビの先端の役果たすCRMは、あまり多方面に応用が効かないのだ。いろいろなおまけ機能を付け加えることはできる(ソーシャルなニュースフィードやプロジェクト管理など)。しかし、本質はどこまで行っても顧客のデータ、そのメタデータの管理システムに過ぎない。

Salesforce CRMはブラウザ・ベースであるところが目新しいものの、その起源はWebが普及するはるか以前の顧客管理システム遡る。なるほどCRMフレームワークを拡張して伝統的な顧客管理から対話的顧客サポートに機能を拡張することはできた―しかしそのあたりで壁に当たってしまう。

もう一つの問題は、Salesforceの信者でも認めざるを得ない点だが、Salesforceサービスのユーザー体験が初期のクラウドの限界を引きずっているところだ。機能がロードされるのを待ってSaleseforceの画面とにらめっこしているユーザーは、「CRMの機能がクラウド化されたのはけっこうだが、こんなに待たされないですむようなサービスがあったらすばらしいだろう」と思わずにはいられない。”

そこで舞台下手からAsanaが登場する。間違いなくウェブで最速、最柔軟なプロジェクト管理アプリだ。一見するとシンプルなコラボ・ツールに見えるが、そのエンジンフードに下には強力なリアルタイム・インタフェースと巨大な野心的ビジョンが隠されている。コラボレーションをかくも柔軟、迅速、容易に処理できるシステムであれば、最終的にはあらゆる業務の標準的なツールとして利用されていくのではないか? Asanaの基礎には、あらゆるタスク管理に利用できる極めて柔軟に応用が効くデータモデルが存在する。

顧客データとは違って(それを言うなら手動でアップデートしなければならないソーシャル共有データとも違って)、タスク管理はわれわれがあらゆる業務を実施する場合の基礎になる(あるいはなるべき)存在だ。CRMとは異なり、適切にデザインされたタスク管理のフレームワークはチケットの販売、人事部門の応募書類処理、IT部門のバグ記録にいたるまで(営業部門のCRMは言うまでもなく)、エンタープライズのあらゆる業務分野に応用可能だ。そしてすでにこうした部門にAsanaの利用を始めた会社も出ている。

エンタープライズ市場に打ち込むべき「クサビの薄い先端」を求めるならタスク管理のためのコラボレーション・システムはまさに絶好の場所といえよう。Asanaのファウンダーたちはもちろんこの点を理解している。だからこそAsanaを現在のような形にデザインしたのだ。

そこでSalesforceのDoとの比較になる。DoははSalesforceのアプリとして初めてHerokuの上でRailsを使って開発されたHTML5ベースのアプリだ。プラットフォームの優秀さもあってDoはモバイルでも作動するし、従来のForce.com上で作動するSalesforceアプリに比べれば一般に反応は早いし処理速度も改善されている。しかしこうした改善にもかかわらず、Asanaと比べればDoのデザインはやぼったく、UIの細部の洗練もいまいちだ。そして何より依然としてリアルタイム性を欠いている。

Asanaの共同ファウンダー、Dustin MoskovitzはFacebookのオリジナル版をほぼ独力で書き上げ、Justin Rosensteinは今やあらゆるウェブサイトに見られる「いいね!」ボタンを作ったプログラマーだ。AsanaのKennyVan ZantはSolar Windsのボトムアップ・マーケティング戦略の責任者だ。彼はフリーミアム・モデルを利用してエンタープライズ市場に参入する方法を裏庭のように熟知している。

Salesforceの機敏さ、テクノロジー業界屈指のマーケティングとセールスの能力をもってしても、DoでAsanaに勝つのは難しいだろう。敵は遠大なビジョン、高度な技術力、課題への深い理解等をすべてその備えたAチームだ。Salesforceがコア・ビジネスを来るべきAsanaの攻勢から守ろうとするなら、SalesforceはCRM分野に対して一時的にカニバリズムになろうと、Do開発チームに画期的な前進を実現させる必要がある。Salesforceという戦艦についに本格的な脅威、Asanaという潜水艦が現れた。そこでSalesforceの取るべき対抗策とは?

この質問には誰も簡単に答えられそうにない。われわれは腰を落ち着けてポップコーンの袋を開け、成り行きを注視することにしよう。エンタープライズ市場を巡る大戦争の幕がいよいよ切って落とされたことは確かだ。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 @namekawa01 Google+