2012年のオンラインビデオはこうなる―5つの予測

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編集部:この記事はゲビデオエンコーディング専門会社のSorenson Mediaの社長、CEOのPeter Csathyの寄稿。

高機能化したモバイル・デバイスの普及にともなって2011年には「好きな場所で好きなときに好きなコンテンツを」というビデオ・オン・デマンド視聴が現実のものとなる。 今になってみれば当然の成り行きとしか見えないだろうが、遠からぬ以前(実はほんの数年前)には一般ユーザーがYouTubeの短いビデオクリップ以上のコンテンツを携帯の小さなスクリーンで見るようになるとは考えられていなかった。しかしまださほどコンテンツのラインアップが充実しているとはいえないのに、消費者は今や有料コンテンツ(テレビ番組、映画)をもっとも身近なスクリーン、つまりスマートフォンで長時間見るようになった。しかしこのビデオ革命は始まったばかりだ。今起こりつつあるのはほんの序の口にすぎない。以下に来年起こるであろう大変革をいくつか予言しておこう。

(1) テレビ体験の再創造 私は以前からAppleが全機能オールインワンの大型テレビ―つまりリビングルームの壁際に置けるような大型iPadのようなデバイス―を発表するのを心待ちにしている。現在Appleが「趣味で」作っているApple TVと区別する意味で、“iTVと名付けられるべきだろう。Appleの目標ははリビングルームでのテレビ視聴体験の再創造となるはずだ。これまでのダム・テレビに対するスマート・テレビの提供だ。他のApple製品同様、見た目に美しく魅力的なハードウェアになるはずだが、肝心なのはその美しいハードウェアが〔オンデマンドでない番組表に従って放送される〕リニアテレビだけでなくAppleの提供するさまざまなサービスにシームレスに接続する点だ。iTVはAppleがiPod/iTunesで音楽産業に与えたのと同じようなインパクトをテレビ業界に与えるに違いない。Appleの戦略はソフトウェアとサービスを「トロイの木馬」としsてハードウェアを売ることにある。この付加価値のためにApple製品はライバルよりもずっと高価でも売れ、したがって利益も大きい。AppleがiTVを作れば忠実なAppleファンがこぞって購入することは間違いない。

(2) タブレットとFire iPadがここしばらくタブレット市場のトップに立つのは間違いないだろう。しかしAmazonのKindle Fireが猛追撃を開始している。最近Best BuyでKindleがiPadを抜いたという報告も聞かれている。Kindle Fire v1.0には多少のパフォーマンス上の問題があったのは確かだが、そうした点はAmazonがすぐに修正するだろう。“Amazon
Prime”は有料オンラインビデオサービスとしてすでにNetflixの強力なライバルに成長している。Kindle Fireの発売はPrimeに消費者を誘導するために非常に効果的な作戦だった。Amazonの戦略はちょうどAppleの裏返しといってよい。Amazonはハードウェア(Kindle
Fire)を「トロイの木馬」として有料コンテンツ(特にビデオ)を提供し、(おそらくこれが最も重要だろうが)モバイルでのオンライン・ショッピングを普及させることにある。いつでも、どこでも、何でもAmazonから買えます! 他のあらゆる家電企業に対してAmazonが圧倒的な優位性を持つのはこの点だ―Amazonはハードウェアの販売で巨額の損失を出しても平気だ。その後長期にわたるデジタル・コンテンツの提供やオンラインショッピングで十分に利益を出せるからだ。実に巧妙な作戦といえるだろう。

(3) リビングルームの覇権争いではGoogleも譲らない これに対してGoogleもオンライン・ビデオの有料コンテンツの市場争いには何十億ドルでも注ぎ込む構えだ。現在のところ、この分野でGoogleは成功しているとはいい難い。しかしGoogleはまだリビングルームのオンラインビデオ化は始まったばかりだと承知している。GoogleもApple、Amazonと同様―ただしまったく異なった理由で―リビングルーム市場での大きなパイの獲得を熱望している。Googleにとって、すべては広告に帰着する。オンラインビデオ広告はGoogleが開拓を目指す次のフロンティアだ。だからGoogleはどんな犠牲を払っても前進し続ける。GoogleはESPNのスポーツ中継のようなリニアーテレビ番組をオンライン・ストリーミングすることでケーブルや衛星放送プロバイダに真っ向から勝負を挑み始めた。AppleとおそらくはAmazonも後に続くだろう。ケーブルでコンテンツを視聴する契約を解約する一般家庭の数が増え、ケーブル・プロバイダは次第に単なる通信キャリヤの地位に追い込まれるかもしれない。しかしブロードバンド接続を提供するサービスのマージンはコンテンツ・サービスのマージンよりはるかに高い(コンテンツ所有者に支払うロイヤリティが高額なため)から、この点はケーブル・プロバイダにとってさほど大きな打撃にならない可能性もある。むしろ良質なオンライン・コンテンツが増えれば高速接続を望むユーザー数が増え、好影響をもたらすかもしれない。一方、ESPNのようにきわめて良質な独自のコンテンツを保有している事業者にとってはGoogle、Apple、Amazonといった超大規模顧客が得られるので、すばらしい追い風となる(依然としてコンテンツこそキングなのだ)。リビングルームの覇権を巡ってこうした巨人たちの激闘が始まると、Rokuのような中小プレイヤーは深刻な状況を迎えることが予想される。2012年は大掛かりな業界再編の年になるだろう。

(4) パーソナル・ビデオのブレークスルー しかし 2012年に注目が集まるのはプレミアム・ビデオばかりではない。HDビデオを簡単に録画できるスマートフォンの大量普及にともない、一般ユーザーがいつでも、どこでも、何でもビデオ録画できるようになった。YouTubeなどにはアップしたくない非常にプライベートな家族や友人のビデオが、さまざまなデバイスで安全に保存・共有できるようになってきた。再生もHD画質のままでいつでもどこでも(携帯でもリビングルームの大きな画面でも)できるようになるだろう。Shutterflyのビデオ版のようなサービスがすでにこの数週間でいくつか登場している。

(5) HDビデオのエコシステムの爆発的拡大 こうした変化の結果、HDビデオをサポートする各種プロダクトへの需要が爆発的に拡大する。これと同時にビデオ編集などの処理もクラウド化が進む。ビデオ関連のレガシーハードウェアのメーカーには厳しい課題となるだろう。すべてのビデオはモバイルからリビングルームまであらゆるサイズの画面をサポートし、それぞれに対して最適化される必要が出てくる。ビデオ配信のテクノロジーはますます高度化、複雑化を余儀なくされる。これはコンテンツの制作者にとっては頭の痛い問題だ。再生されるデバイスのスペックの取得方法、、画面サイズ・解像度への対応、コーデックのライセンス取得と最適化、ネットワーク情報取得、ビットレートのダイナミックな調整など解決すべき課題は山積みだ。こうした問題についてビデオトランスコーディング・テクノロジーが重要な役割を果たすものと期待している(情報開示:私がCEOを務める会社もこうしたテクノロジーを開発している)。
デバイスや情報チャンネルの技術的差異を吸収し、コンテンツの制作者がコンテンツの制作に集中できるようにするテクノロジーは来るべきビデオ・エコシステムのカギとなるだろう。

画像 James Vaughn

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(翻訳:滑川海彦 @namekawa01 Google+