人工知能は今コンピューティング〜ネットワーキング全般の中でどうなっているか

次の記事

NVIDIAおよびAsus、$249の7インチタブレットを発表。Transformer Primeレベルの性能にICS搭載

Vinod Khosla

編集者注記: このゲスト記事は、シリコンバレーの伝説的投資家Vinod KhoslaKhosla Venturesのファウンダ)からの、三部から成る寄稿の第一部だ。第二部では、ソフトウェアとモバイル技術が医師たちの力を増幅し、場合によっては医師に取って代わることもある、と説く。第三部では、テクノロジが教育を全面的に改革する過程について語る。

昨年、Googleの研究部長Peter Norvigが、New York Postにこんな記事を書いていた:

今から40年前の12月に、ニクソン大統領は癌に対する宣戦布告を発し、この疾病の撲滅のために”国のすべての力を総動員する”と誓った。50年前にはケネディ大統領が宇宙開発競争を宣言し、その年代(1960年代)の終わりまでには人間を安全に月に着陸させると約束した。そして54年前には、人工知能のパイオニアHerbert Simonが、“現在の世界には思考する機械がある”と宣言し、10年後にはコンピュータがチェスの世界チャンピオンになる、と予言した。

月への上陸には成功したが、癌と人工知能における取り組みは、その大望を達成していない。しかし、ある程度の進歩は実現した。癌では:

単一の“治療法”を望む者たちは幻滅した。癌は単一の問題ではなく、複数の問題が互いに絡み合っている症状だからだ。しかしそれら複数の問題に対しても、少しずつ研究の進歩は続いている。

人工知能も、月上陸より癌の研究に近い性質を持つことが明らかになった。映画の中で想像されたHAL 9000やC-3PO、Commander Dataといったアンドロイドは実在しないが、A.I.の技術は、今ではわれわれの生活の多くの局面に関与している。

たとえばA.I.は、ほとんどの人間よりも強いチェスコンピュータを実現し、Jeopardyでは人間名人を負かした。そのほかA.I.は、広告のターゲティングを支援し、Microsoft Kinectの人間の動きの認識能力を支え、もっとすごいのでは、Googleの自己運転自動車がサンフランシスコからロサンゼルスまでドライブするのを助けた。このようなインテリジェントなシステムは、ウォール街においては投資などの判断を伴う取引を行い(そのおかげで元MITの数学者が今では投資ファンドを経営して、このような判断を要する分野で最高の業績を上げ、ウォール街のヒーローになっている)、またもちろんそれは、Siriの会話インタフェイスとして人の求めに…その多くに…応じている(その第一世代のIQは三歳の子ども並みと言えるが、世代を重ねるごとにより賢くなっている)。Jeopardyのコンピュータチャンピオンや自己運転カー、Siriのような会話インタフェイスなどは、いずれも、数年前にはきわめて実現が困難と考えられていた技術だ。

Commander Dataの時代に考えられていた人工知能は、コンピュータの論理回路の超高速な馬鹿力に頼る、というものだったが、しかし成功したシステムはロジックのルールよりもむしろ、実例を利用した。過去の大量の問題とその(論理的というより確率的な)解をコンピュータに与え、それらの実例から、目の前の問題の解を”見つけ出させる”のだ。とくに、人工知能の最近の主な進歩は。そのようにして、不確かな条件下での推論を行わせる分野で顕著だ。

コンピューティングにおけるこのような前進は、次の10年においてどのような姿になるのか? それを探るためには、次のようなことも考えに入れておくべきだろう:

i) 生物系と機械系を組み合わせることにより、それぞれの単独よりも強力なシステムを作るという、いわゆるバイオニックソフトウェアの分野。人工知能の分野では、人間とコンピュータが相互作用し、あるいは単純に互いを補うことによって、互いのアクションや理解力を増大する、というものだ。

ii) 最近Forresterが行った評価によると、iPad 2は、1993年には世界最強のコンピュータ30機種の一つに入り、1986年にはCrayのスーパーコンピュータと互角である。

iii) Nvidiaが主にビデオゲーム用に設計したグラフィクスチップを使うと、5テラフロップのマシンを25000ドル未満で製作でき、最新の強力なプログラム、たとえば”課題”を与えられるとその”解”を編み出す“自己組織化マシン”(self organizing machines) を動かすことができる。課題とはたとえば、正しい(あるいは間違った)診断はどれか、詐欺的な取引はどれか、異常な行動パターンや症例はどれか、などだ。自己組織化マシンは、それを判断するためのアルゴリズムを自分で編み出す。

iv) さらに、ベンチャーキャピタル業界におけるビッグデータの流行により、大量の起業エネルギーと研究開発努力が、エキスパートシステムの応用、確率および統計、機械学習、自己組織化マシン、そして多くの、まだ無名に近い、公表もされてないシステムに注ぎ込まれている。株のトレーダーたちは自分たちが使っているコンピュータ化されたトレーディングシステムについて多くを語らないし、CIAやGoogleの連中はスパムフィルタのアルゴリズムを詳しく語ろうとしない。しかしデータ、とりわけビッグデータは、平均的な人間医師が持つ偏りを大きく超えた”真実と相関性の可能性”を探るための基盤として優れている。しかもそれらは、医薬品業界のマーケティングや選択によって狭められる医学の研究報告、あるいは単純な金銭欲によって、ゆがめられていない。また、そのほかの、意図的、あるいは偶然の、人間的エラーにも汚されない。

これらは、それ自体が重要な成果であるが、しかし今のわれわれにとっての課題は、アイデアの市場におけるそれらの論理的な統合と、時間の流れの中でのそれらの収束先を見つけることである。言い換えるとそれは、「だからどうしたの?!」というレベル/段階の問題だ。この連載記事において私は、「だからこうなるんだよ」という部分を、いくつか取り上げていきたい。

こんなことを書いている人もいる:

人間の判断が機械によって改良される、あるいは置き換えられる、という考えを嫌う人は多い。しかしそれは、台風や地震が嫌いな人が多いのと同じで、当たり前のことだ。機械の勃興は単なる不可避ないしは必然であり、人の好き嫌いとは無関係である。

あと二つほど: 機械は医療と教育を改良する。これまでその恩恵から遠かった人たちに恩恵をもたらす。そして世界を、より人間的な場所にする。そして人間医師と人間教師は、良き指導者、友人、アドバイザーとしての、より人間的な役割を当面は引き受ける。彼らが、患者や生徒たちのために割ける時間が増大する。

次回からは、この二つについて詳説したい。

[原文へ]
[jpTechCrunch最新記事サムネイル集]
[米TechCrunch最新記事サムネイル集]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))