ニューヨークの空を人が飛ぶ?―ミステリー現象はSF映画「クロニクル」のクチコミ・プロモーションだった
20世紀フォックスは新しいSF映画、Chronicleのプロモーションをバイラル・マーケティングを専門とする代理店Thinkmodoに依頼した。このユニークなキャンペーンはニューヨークの空にちょっとした驚きをもたらしている。
ここ数週間、ニューヨーク市あるいはニュージャージーの上空を人がふわふわと飛んでいるのを見る人々が報告されているが、彼らは決して頭がどうかしていたのではない。これはあら手の前衛的マーケティングの一例だ。ThinkmodoはYouTubeで評判になったiPad頭の女性のビデオを作った会社だ。
ThinkmodoのMichael Krivickaはこう説明する。
「クロニクル」の3人の高校生の主人公は空が飛べるという設定だ。そこでニューヨークの空に人を飛ばしてみたら面白いんじゃないかと思いついた。われわれは人間の形をしたカスタムメイドのラジコン飛行機を3機製作してニューヨークとニュージャージーの有名な場所の上空を飛ばせた。
その模様を収めたHDビデオ。
愉快なアイディアだが、この人型リモコン機を見た人々がすぐに映画と結びつけて考えるのは難しいのではないか?
すでに映画の予告編を見た観客には「ははあ、あれだな」と分かったかもしれない。予告編を見たことがなく、「クロニクル」という映画のことを何も知らない人は、警察を呼ぶか、地元の空飛ぶ円盤団体に電話しただろう。
効果のほどがどうであれ、私自身はこうした面白くてユニークなマーケティング手法は応援したい。こうしたイベントで引き起されるクチコミ(WOM)マーケティングの力は侮れない。
空飛ぶ人を見た人たちが後になって映画の宣伝だったと気づけばたいへんユニークなメッセージを送るのに成功したことになる。たとえ対象となる消費者の数がさほど多くはなくても、「ああ、あれはそういことだったのか!」というのは強烈な印象を残す体験だ。20世紀フォックスにはブラボー!と言いたい。
〔日本版〕
本来の意味での「ステルス・マーケティング」というのはこういうのをいうのかもしれない。オリジナル記事には「20世紀フォックスはあちこちで記事に取り上げさせようとしてこうして成功しているわけだが」というもっともなコメントが寄せられている。
ちなみに「クロニクル」はふとしたことから強烈なサイコキネシス能力を得た高校生たちが破滅していくというテーマのSF映画で、日本のアニメファンの一部から大友克洋のAkiraにヒントを得たのではないかという声が上がっている。訳者としては予告編を見た限りではむしろ同じ大友マンガでも童夢に近いものを感じた。いずれにせよ人体型ラジコン機の飛行ぶりは秀逸。ぜひビデオをごらんいただきたい。
[原文へ]
(翻訳:滑川海彦 @namekawa01 Google+)