マーク・ザッカーバーグの投資家向け公開状―「私たちは金もうけのためにサービスを作っているのではなく、よいサービスを作るために収益を上げている」

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ご承知のように昨日(米国時間2/1)、Facebookは株式上場のためにS-1申請書を提出した。下に紹介するのはその中に含まれたファウンダー、CEOのマーク・ザッカーバーグから投資家への公開状だ。この中でザッカーバーグはFacebookは「世界をよりオープンにして人びとの結びつきを強めるというソーシャルな使命をなし遂げるために作られたもの」であり、「Facebookに投資しようとするならば、この使命の意義を十分に理解することが重要だ」と述べた。

ザッカーバーグはまた 「オープンで結びつきの強い社会になることで、伝統的な企業がよりよい製品やサービスを作ることが可能になり、経済をより強いものにすることに貢献できる。より多くを共有することで、製品やサービスを信頼している人びとから多くの情報を得ることができるようになる。このことにより、最良の製品を見つけたり、生活の質や効率を高めたりすることが可能になる」と企業にとってのソーシャル・コミュンケーションの重要性を強調した。

ザッカーバーグはFacebookを印刷やテレビのような「社会を変える力をもったテクノロジー」であるとし、人々が情報を共有し、既存の制度や産業を大きく変えるためのサービスを作りたいと述べた。

ザッカーバーグによれば、Facebookの社内のモットーは「ハッカー・ウェイ」であるという。「ハッカー」という言葉は不当にもコンピュータへの侵入者などを指して使われることがあるが、「しかし本当は、ハッキングは単に何かを素早く作ったり、可能な範囲を試したりといった意味だ」という。「こうした考え方に基づき、私たちはフェイスブックを試すことができる何千通りもの仕組みを作った。Facebook社の壁には<素早い実行は完璧に勝る>と書き記し、このことを肝に銘じている」という。

公開状の後半では、Facebookの核心をなす5つの原則として、「インパクトに焦点を充てよ」、「速く動け」、「大胆であれ」、「オープンであれ」、「ソーシャルバリューを作れ」を挙げ、それぞれについて説明を加えている。

全体としてザッカーバーグのメッセージは投資家に「世界をよりよい場所にし、人々の距離を近づける」という目標を実現することがFacebookの根本的な目的であることを理解させようとするものだ。Facebokの株を取得しようと考えるなら、まずこの目的を理解し、これに賛同することが重要だというのがザッカーバーグの信念だ。

〔日本版編集部〕 上場申請書中のマーク・ザッカーバーグの投資家向け公開状は日本経済新聞電子版の奥平和行記者が記事中で全訳している。同電子版のご好意により、その前半部分を下記に転載するので参考にしていただきたい。

マーク・ザッカーバーグからの手紙

フェイスブックはもともと、会社を作るために始めたサービスではありません。「世界をよりオープン(開かれたもの)にして人びとの結びつきを強める」というソーシャル(社会的)な使命をなし遂げるために、作られたものです。

「このミッションが私たちにとってどういう意味を持っているか」「どのように意思決定をしているか」「なぜ私たちがこのようなやり方をしているか」を当社に投資する皆さんに理解してもらうことが、非常に重要と考えています。この手紙で、私たちのやり方について説明しようと思います。

フェイスブックにおいて、私たちは人びとが情報を共有したり消費したりすることに大変革を起こした技術から刺激を受けています。具体的には、効率的なコミュニケーションを実現して社会を大きく変えた印刷機やテレビなどがこれにあたります。こうした技術は多くの人に発言の機会を提供し、進歩を促し、社会の組織の作られ方を変えました。さらに人と人の間の距離を縮めたのです。

今日、私たちの社会は新たな転換点を迎えています。世界の人びとの過半がインターネットや携帯電話を使えるようになり、こうした素晴らしい道具は、考えていること、感じていること、行っていることに関する情報を誰とでも共有するために不可欠なものとなりました。フェイスブックは情報を共有し、既存の制度や産業を大きく変えるためのサービスを作りたいと考えています。

世界中の人びとをつなぎ、発言の機会を提供し、未来に向かって社会を変えることには、巨大なニーズと機会があります。そのために必要な技術やインフラの規模はこれまでにないものであり、これこそが私たちが注力すべき最も重要な課題と考えています。

■人びとの関係を強固にするために

私たちのミッションは大きいものに聞こえるかもしれませんが、起点は「2人の人の関係」という小さいものです。

個人的な関係は、社会の基礎をなすものです。こうした関係によって、新しい考え方を知ったり、世界について理解を深めたり、究極的には長期的な幸福を得ているのです。

フェイスブックにおいて、私たちは人びとが必要としている人とつながり、必要なことを共有するための道具を作っており、こうした活動を通じて人びとが関係を構築したり維持したりする能力を高めようとしています。

多くを共有する人は――例え親友や家族とだけでも――よりオープンな文化を生み、他人の人生や考え方についてよりよく理解できるはずです。このことにより非常に多くの強いつながりを生み出し、人びとが多様な考え方に触れる機会を作ると信じています。

人びとがこうした関係を構築することを手助けすることにより、情報の共有や消費の方法を書き換えたいと私たちは考えています。世界の情報のインフラは、これまでのように巨大で一体となったトップダウンの構造よりも、ボトムアップもしくは(個人が様々なルートでつながる)ピアツーピアな構造が好ましいはずです。また、人びとが共有する情報を自らコントロールできることが、この「書き換え作業」の基本的な指針であることも申し添えておきます。

私たちはこれまでに、8億人以上の人が、1000億以上のつながりを作る手助けをしてきました。そして私たちのゴールはこの「書き換え」を加速させることです。

■人びとと企業・経済との関係を良好に

オープンで結びつきの強い社会になることで、伝統的な企業がよりよい製品やサービスを作ることが可能になり、経済をより強いものにすることに貢献できると考えています。

より多くを共有することで、製品やサービスを信頼している人びとから多くの情報を得ることができるようになります。このことにより、最良の製品を見つけたり、生活の質や効率を高めたりすることが可能になるのです
共有する力を提供することで、人びとは以前とは比較にならないほどの大きな規模で、自らの声を届けることが可能になっています。こうした声はこれからも増えていき、無視されなくなるはずです。時間がたてば、少数の仲介者を経なくても、政府は国民から直接提起された問題や懸念に、より素早く対応するようになることを期待しています。

こうした過程を経て、あらゆる国でインターネットに肯定的で、国民の権利のために戦う指導者が出てくることを期待しています。ここでいう権利とは、必要とする情報を共有したり、共有したいと思う情報にアクセスする権利を含みます。

この項の最後になりますが、個人に対応した良い品質の製品が増えることにより、雇用創出や教育やヘルスケアといった私たちが直面する世界的な課題に対応する新しいサービスが出現するという効果にも付言しておきます。こうした進歩を後押しすることを楽しみにしています。

■使命とビジネス

既に申し上げたとおり、フェイスブックはもともと、会社を作るために始めたサービスではありません。私たちは常に、ソーシャルな使命や創出したサービス、利用者を最優先に考えています。これは通常の株式公開会社の採る手法とは異なっており、なぜそれがうまくいくと考えているかを説明します。

私は最初のフェイスブックを自分自身で作りはじめましたが、それは自分が欲しいものだったからです。それ以来、フェイスブックに取り込んだアイデアやコードは、私たちのチームに集った優秀な人材から生まれています。

多くの優秀な人は、素晴らしい物事を組み立てたりその一部になることに主眼を置きますが、一方で収益を上げることにも興味を持つものです。チームを作ったり、開発者のコミュニティーや広告市場や投資家の基盤を作ったりする過程において、経済的な強い推進力を備えた成長企業を作ることが、多くの人にとって重要な問題を解決するうえで最良の方法だということを学びました。

簡単に申し上げるなら、私たちは金もうけのためにサービスを作っているのではなく、よいサービスを作るために収益を上げているのです。

そしてこうした方法が、もの作りに役立つということも知りました。最近は多くの人が、単なる収益極大化にとどまらない目標を掲げる企業のサービスを好んでいるように思います
我々の使命と優れたサービスの創造に焦点を合わせることで、私たちは長期的に株主価値を最大化できると考えています。このことで今度は私たちも最良の人材を集め、素晴らしいサービスを作ることができるはずです。朝一番に金もうけを考えるのではなく、使命を達成するためには強く価値のある会社を作ることが最良の方法だと考えています。

私たちはIPOについても同じように考えています。我々は従業員と投資家のために、株式を公開します。私たちが従業員や投資家に株式を譲渡した時、価値があり、流動性があるものにするために懸命に努力することを約束しました。そしてこのIPOは、私たちの約束を実現させるものとなります。上場企業となったとき、新しい投資家に同じような約束をし、それを実現するために、これまでと同じように懸命に努力します。

■ハッカーウエー

強い会社を作る一環として、私たちはフェイスブックを、優秀な人材が世界に大きなインパクトを与え、他の優秀な人材から学ぶための最良の場所にしようと懸命に努力しています。私たちは「ハッカーウエー」と呼ぶ独自の文化と経営手法を育んできました。

「ハッカー」という言葉はメディアでは、コンピューターに侵入する人びととして不当に否定的な意味でとらえられています。しかし本当は、ハッキングは単に何かを素早く作ったり、可能な範囲を試したりといった意味しかありません。他の多くのことと同様に、よい意味でも悪い意味でも使われますが、これまでに私が会ったハッカーの圧倒的多数は、世界に前向きなインパクトを与えたいと考えている、理想主義者でした。

ハッカーウエーとは、継続的な改善や繰り返しに近づくための方法なのです。ハッカーは常に改善が可能で、あらゆるものは未完成だと考えています。彼らはしばしば、「不可能だ」と言って現状に満足している人びとの壁に阻まれますが、それでも問題があればそれを直したいと考えるものなのです。

ハッカーは長期にわたって最良とされるサービスを作るために、一度にすべてを完成させるのではなく、サービスを機敏に世に出し学びながら改良することを繰り返します。こうした考え方に基づき、私たちはフェイスブックを試すことができる何千通りもの仕組みを作りました。壁には「素早い実行は完璧に勝る」と書き記し、このことを肝に銘じています。

以下、「ハッカー・ウェイ」の詳細とFacebook5原則が説明されるが、その部分は日本経済新聞電子版記事でお読みいただきたい。なお、奥平記者が最近Facebookのメンローパークの新本社を訪問して詳しく取材した記事も非常に参考になる。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+