昨日のiPadイベントは、物語の前編にすぎない

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Appleの重大発表の手順 ― 第1四半期にiPad、夏にWWDCとiPhone、そして秋がやってくる ― を考えると、昨日のiPadイベントは、実はイベントの半分にすぎない。前半が昨日起きたこと ― 新iPadの発表。Retinaディスプレイ。A5X。新iSight。LTE。Retinaディスプレイはそれだけでも買う理由になるが、他にAppleが自慢したスペックは? 単なるスペックだ。ムーアの法則通り。Appleがスペックの話をする時はいつもあまり面白くない。メガヘルツの話をしたり、Pentiumチップがダメだと消費者に信じさせようとしていた頃を思い出す。

Appleが披露したいくつかのソフトウェアでさえどこか変だった。iPhotoのデモはすばらしかった ― しかしiPad 2でも使えるし、新iPadに500ドル費やす必要はない。そして、その製品サイクルが何かのヒントになるのなら、来年の新新iPadは完璧な外見のためのアップデートになるだろう。iPad 2がiPad 1に対してそうだったように。

しかし、イベントには後半があり、それは前半よりずっと面白い。

それは、6月にサンフランシスコのモスコーニセンターで起きる。

WWDC。

歴史が導くところによれば、それはiOS 6.0リリースされる時だ。そして、これも歴史に習うならば、それはRetinaディスプレイよりもA5Xよりも、われわれが想像できるどんなハードウェア機能よりも、ずっと重要なものになる。

過去のWWDCで起きてきたことを見てみよう。

2008 ― iPhone OS 2.0:App Storeの導入。以降の5年でAppleはデベロッパーに何十億ドルもの金を配り何十方という新しい職の供給に役立った。彼らはソフソウェアのパッケージ、流通、そして開発のやり方を変えた。App StoreはiOSコンセプトで唯一最重要な部分であると言ってもよい。今Appleがやっているすべてを束ねるくさびだ。

2009 ― iOS 3.0:洗練の年。コピー&ペースト。カーナビ。MMS。SafariのHTML5サポート。今になってみれば、Appleが2010年のiPad発売のためにOSの整備に注力した年もあったことは明らかだ。

2010 ― iOS 4.0:マルチタスクとサードパーティーアプリのバックグラウンド動作。これらの多くによって今後何が起きるかを予測するにはまだ早すぎるが、バックグラウンドのサポートによって、HighlightGlassmapといった奇妙で楽しい新スタートアップの誕生が可能になった。Highlightのような持続系ソーシャルネットワークは、バックグラウンド動作によって新しいタイプのビジネスやアプリが可能になることを示す一例である。後にiOS 4.2で導入されたAirPlayは、未だに完成されていないアイディアだが、今後 ― Apple TV、iCloudと共に ― Appleがリビングルームのコンテンツを再発明する試みへと繋がっていくだろう。

2011 ― iOS 5.0:iCloud。これも大物だ。Appleがその将来を賭け、何百万という人々にとっての、古くからあるもの、例えばファイルシステムの扱い方を変えようとしている。「AppleはポストPCの未来にしっかりと足場を固めた」と昨日Tim Cookは言った。そしてそれはiCloudがあって初めて可能になる。そうだ、iMessageもあった。これは、テキストメッセージで不当に高い料金を課してきた通信業者達を少々心配させている。おっと、Newsstandも。これは印刷ジャーナリズムを救うかもしれない。ああ、その日はAppleがTwitterの最恵国待遇を決めた日でもあり、みんなのお気に入りのソーシャルネットワークにはちょっとした恐怖を与えたかもしれない。

2012 ― iOS 6.0:ここが予想の始まりだ。

顕微鏡で液晶パネルの細かいピクセルを確認しているところの写真に匹適するようなiOSのリークは存在しない。しかし、わずかな手がかりがある。AppleはiPhotoアプリの中でGoogle Mapsのデータを使っていない。これは、iOSの地図アプリでもGoogle Mapsデータを使わなくなることを意味しているのだろうか。それは十分にありうることであり、Phil SchillerがLTEのデモに、YouTubeではなくVimeoを使ったのも、Googleに対する挑戦の一つだろう。

しかし私は、iOS 6.0の大部分はiCloudの強化と洗練になることに賭ける。2009年型の年だ。その一端はMountain Lionのプレビューで目にしている。AppleがOS Xを、iOSと同じ年1回のリリースに合わせようとしていることも、証拠の一つだ。iCloudは未だに完成にはほど遠いが、これはAppleが今やっていることすべてを支える要だ。

人々がiPadに対して感じている失望は驚くに当たらない。理解できると言ってもいい。噂される触覚フィードバックシステムはかなり良さそうだ。もちろんわれわれは毎年驚きを求めている。しかし、革命はすでに起きてしまった。それはiPadが発売される何年も前から推し進められていた。それはAppleが画面サイズを、またポストPCデバイスの重要コンセプトであるOSをいじった時。最初の一撃は、スティーブ・ジョブズがル・コルビュジエの椅子に座って脚を組み、スライドしてロックを解除した時に放たれた。そして、当時は誰も知らなかったが、2010年4月3日に最初のiPadが発売になった時、それが引き継がれた。

今われわれはAppleがiPadを完成させようとしているところを見ている。それはまだ彼らが思い描く観念的理想形に近づいてすらいない。そして、App StoreとiCloudという大地を揺がすであろう代物。それは、iPadの外観がどうであるか、CPUコアがいくつあるかとは何の関係もない。

スペックが重要でないとは言わない。どんな消費者向けデバイスでも、全体は部分の総和に勝る。しかしスペックは、より大きな戦略を実行するための戦術的決断である。ではこう質問してみよう。あなたが最初にウェブブラウザーを立ち上げた時のコンピューターのスペックはどうだったか? その体験で最終的に重要だったのは何か?

「われわれが話しているのは、PCがデジタル世界の中心ではなく、単なるデバイスの一つになった世界についてだ」とCookは言う。そして、その世界がどう作られていくかに関する重要な詳細は、3ヵ月もすれば見ることができる。

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(翻訳:Nob Takahashi)