撮った後で焦点を変えられる革命的カメラLytroの実写レビュー:可能性は巨大だが…

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まったく新しいテクノロジーに基づいたLytroのような製品について現時点でレビューを書くのは本当は時期尚早だ。しかし製品としてすでに出荷が開始されている以上、その内容を公平に紹介することはやはり必要だろう。数多くの重要な改良が予告されており、この記事は数カ月にはまったく古くなっているかもしれない。

現状ではLytroはソフトウェアでいうなら公開ベータの段階にあることをお断りしておく。

メリット:

  • カメラとしての作りはよくできており、非常に操作しやすい
  • まったく新しいテクノロジーに触れて写真に対するコンセプトが変わる
  • 子供は喜ぶだろう

デメリット

  • 画質は平凡
  • 撮影上のオプションはほとんど何も用意されていない
  • 表示は専用ソフト(現在はMac版のみ)以外ではできず、表示方法のオプションも限られている

このカメラについてはまず簡単な概要紹介が必要だろう。Lytro Light Fieldカメラは写真を撮った後で望みのポイントに焦点をあわせることができる画像を生成する。このカメラには ズームだけがマニュアルで操作できる通常モードと操作範囲が増えるクリエーティブ・モードが用意されている。しかしクリエーティブ・モードでは合焦ポイントをマニュアルで指示しなかればならないので、ある意味このカメラのもっとも大きなセールスポイントからの退歩ともいえる。

Lytroで撮影された写真(リビング・フォトと呼ばれる)はコンピュータ経由でLytroのウェブサイトにアップロードされる。生成された画像は他のサイトのページにエンベッド可能だ。

われわれは最近サンフランシスコでLytroのファウンダー、Ren Ngと映像責任者のEric Chengに会ってLytroの将来計画などについて取材することができた。ビデオを下にエンベッドしておく。

ハードウェア

Lytroカメラのデザインはユニークだが同時に機能的で使いやすい。直方体の外観は従来のカメラに比べて全く異質だが、望遠鏡の一種と考えて手にすれば自然に操作できる。

シャッターボタンの位置は自然で切れもよい。ズームはタッチセンサー方式だが、これもきちんと反応する。ボディーもよく手になじむ。かなり頑丈で通常の落下にも耐え、コーヒーがかかったぐらいでは故障しないようだ。

ただし、いくつか注文もある。最大の問題はモニタのサイズだ。おそろしく小さく、解像度も非常に低い。タッチスクリーンになっているが、クリエーティブ・モードで焦点を合わせる位置を指示するのは難儀だ。再生モードにしても何が写っているかどうにか確認できる程度だ。このモニタでは合焦点の移動効果もあまりよく判別できない。

Lytroでの実写

注:以下の写真上でクリックするとその位置に焦点が移動する。

多焦点写真の撮影は興味深く、まったく新しい体験だ。これにいちばん近いものというとCasio Exilim FC100スーパースローモーション動画を撮影したときだろうか。高速度(スローモーション)撮影と他焦点撮影は一見なんの関係もなさそうに見えるが、日常の世界を思いがけない見え方で切り取るという点で奇妙に共通点があるのだ。

問題は、DP Reviewが適切に評したとおり、この種の写真には非常に慎重に計算された構図が必要だが、現在のLytroカメラにはそれを可能にする機能がほとんど装備されていない。そのためにセールスポイントとなるべきところが逆に弱点となっている。

第一にこのカメラのレンズは画角があまり広くない。Lytroでは36mm相当と発表しているが、36mmセンサーのデジタル一眼カメラの35mmレンズの1.6分だと判明した。つまり45mm相当という計算になる。これは広角レンズではなく標準レンズの部類に入る。多焦点機能を生かすにはできるだけ多くの対象を画面に入れることが必要だ。どうしてもできるだけ広角のレンズが必要だ。標準レンズでは距離が大きく違う2つ以上の対象を同一画面に入れるのひどく苦労するか、あるいは不可能になってしまう。画面が正方形なのも構図をいっそう難しくする。横長のフォーマットが欲しい。そうすれば中央と端に距離の異
る対象を配置するのが楽になる。

撮影の際に通常モードでは極端に近かったり距離が違ったりする対象に後から焦点を移動するのが難しい。クリーエティブ・モードを利用すると、これらの能力が改善される。ズームレンズ(焦点距離にかかわらずF2.0というスグレもの)にはスーパーマクロモードがある。

このスーパーマクロの能力には仰天した。Lytroによれば、このカメラはレンズに文字通り接触している対象にまで焦点を合わせることができるという。実際、作例にみるような超接写がごく簡単にできた。

ただしクリエーティブ・モードの欠点は「ただシャッターを押すだけ」ではすまないことだ。小さく見難いスクリーンをタップして焦点を合わせる場所を指示しなければならない。しかもシステムがその場所に合焦するまでひどく時間がかかる。だからクリーティブ・モードで動く対象をスナップするのは不可能だ。

いちいちピントを合わせる必要がないというセールスポイントはその通りだが、解像度と全体の画質は平凡だ。引き伸ばしてプリントするにはまったく向いていない。Lytroでは大型センサーの開発に取り組んでいるということだが、現状のセンサーはわずか1080×1080ピクセルでノイズもかなりひどい。Lytroは従来のコンパクト・デジカメとは全くコンセプトの違う製品だということは確かだが、今の性能ではコンパクト・デジカメに取って代わることは無理だろう。

画像を調整するための機能を全く欠いているのも不満が残る。Lytroのソフトは単純な表示に加えて回転とサイトへのアップロード機能しかない。各種フィルタ機能は言うまでもなく、ホワイトバランス、明るさ、コントラスト、などの調整も一切できない。将来はこうした機能も加わるだろうが、現状では撮った写真は基本的にまったく編集できない。

操作が簡単とはいっても、やはり新しいコンセプトに慣れるには練習が必要だ。作例を見て分かるように私も機能の一部しか活用できていない。

ソフトと共有

Lytroのソフトにできることは写真の表示とグループ化、Lytroウェブサイトへのアップロードだけだ(それ以外のサーバにはアップロードできない)。ユーザーとしてはLytroのウェブサイトが未来永劫継続して運用されることを願うしかない。

しかもユーザーは撮った写真をローカルでは半分の解像度でしか見ることができない。いったんLytroサイトにアップロードした後でないとフルサイズで見ることができない。まったく奇妙な仕組みだ。

さらに撮影した画像に付属する情報もほとんどゼロだ。簡単な露出情報以外、圧縮されたウェブ版には何種類の焦点距離が記録されているのかを含め、焦点情報などは一切記録されない。

将来の可能性

ここまで書いてきて、やはり厳しすぎる評価になってしまったかもしれないと反省している。これは私がこの記事ではテクノロジーではなく製品そのものを評価の対象としたためだ。テクノロジー自体は圧倒的興味深いもので、発明者のRen Ngを始め関係者が確言するとおり、単レンズによる3D動画の撮影など将来の応用の可能性は圧倒的だ。ただ問題そうした可能性のどれ一つとしてこの製品に実装されていないことだ。上に述べたような数々の制限のせいで、一般のコンパクトカメラユーザーはすぐ飽きてしまうだろう。

今年後半にも発表される予定の次の製品では焦点距離、ホワイトバランス、露出などが調整可能になり、ソフトウェアの機能も強化される(Windows版もリリースされる)。3D化や視点の自由な移動なども将来は可能になるだろう。

しかしこうした機能がいつ実現するかは誰にも予測がつかない。現在のところ、以上に紹介したような限られた能力で価格は400ドルとなっている。実験的な意味を別にすると広い範囲のユーザーに受け入られる可能性は低いだろう。

私はフォトグラファーでもあり、ガジェット評価の専門家でもあるが、市場性には疑念が拭えない。Lytroのエンジニアは天才クラスだし、そのテクノロジーは革命的だ。将来の可能性も巨大だ。しかし最初のプロダクトは非常に限界のあるものとなっていると言わざるを得ない。1年後にはまったく状況が変わっていることを期待したい。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+