ブリタニカ大百科事典、ついに印刷版を終了

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1768年、啓蒙主義の絶頂期、印刷機は(まだ比較的少なかった)字の読める人や知識人の間で知識を広める方法として数多く利用された。しかし多目的な参考書は殆ど存在せず(最初に登場したのがその数年前)、重要な知識の殆どが数多くの専門化された書籍に分かれていた。光学について、ヒルの使用法について、新世界の蛮人を巡る旅、等といったものだ。その年、Encyclopaedia Britannica[ブリタニカ大百科事典]の初版が印刷された。全3巻からなるその内容は、簡潔にして有用な人知のほぼ全てから成っていた。

辞書や参考書と共に成長したわれわれにはもちろん、インターネットと共に育ち事実上すべての知識を瞬時に利用できる新世代にとって想像することは難しい。だから、2010年のブリタニカ大百科事典が最後の印刷版になるという事実を筋道立てて話そうとすることも同じく奇妙なことかもしれない。顎をなでる人も、うめき声をあげて髪をかきむしる人も、歓声を上げる人もいるだろう。しかし殆どの人は、はっきり言ってしまえば、気にしないだろう ― というより気付くことがないだろう。

これほど古い物の消失となれば、たとえそれが完全に消えるわけではなくても(購読方式の参照サイトとして前向きに続けられる)、振り返ってみるべき時だろう。印刷と知識が激変を迎える今こそ。

この印刷対オンラインの問題は、安いペーパーバック対電子本や、ニュース雑誌対ブログの話とは異なる。この大事典の価格は1395ドルで全32巻から成り、最も広大な図書館以外には馴じまない。2010年版はわずか8000セットしか売れていない。倉庫には4000セットある。ウェブ夜明け前の1990年には、12万部が販売された。

会社に考える余地はなかった。売上の99%は別のビジネスによる。そしてKodakやPolaroidのような企業が証明したように、象徴的製品と成功した製品は同じではない。

何かほかに印刷版を擁護する言葉はあるだろうか。データのハードコピーを維持する価値に関しては高度な議論があり、またインターネットよりも書籍の方が都合のよい層の人々がいることも確かだ。しかし、実際の製品となると、大百科事典は孤独に近い。古風な大学教授の中には価値を見出す人もいるかもしれないが、もしあなたの目標が価値ある知識を流通させることならば、分厚く高価な全32巻セットがその手段でないことは隠す必要がない。

彼らは「事実が重要」であるという仮定に基づいて2世紀半続いた企業を設立した。244年前に作ったものと同じ〈製品〉を作り続けるか、244年前に開始した〈ミッション〉を続けるかの選択を迫られ、Encyclopaedia Britannicaは後者を選んだ。それは多くの会社が誇りを持つであろう選択だが、その機会を得る者はめったにいない。誰かが四半千年紀続く何かを作るなど、よくあることではない。

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(翻訳:Nob Takahashi)