Googleがセマンティック検索をマスコミに売り込む理由を推察すると…

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Googleの検索エンジンは数か月後に大きなアップデートが行われる、と今日のWSJ(米国時間3/15)が報じている。Googleの検索担当SVP Amit Singhalによると、主な変化はセマンティック検索とインスタントアンサーの導入だ。これは二つとも、MicrosoftのBingがかなり前からやっていることだが。

でも、Google自身もそれをある程度はやっている。しかも、ことさらニュースとして報じるようなことではない。何が、背景にあるのか?

Danny SullivanがSearch Engine Landで、WSJの記事を批判している。彼も、これはニュースではない、と言っている。Googleの検索が変わるという話は、数週間前から出没しているのだから。

つまりSullivanによればWSJは、本当に新しいものと、既存技術の拡張や改良を混同している。でもWSJの読者層を考えると、そんな細かい区別はむしろ、うっとうしいかもしれない。Sullivanが平気で口にする”Google OneBox”、”Google Squared”、”Freebase”、”Metaweb”などの言葉は、WSJ紙向きではない。

むしろWSJは、セマンティック検索とは何かを説明し、その例を示すべきだった。本誌の読者はすでにご存じと思うが、簡単に言うとセマンティック検索とは、ユーザが関心を持っている場所や人や物などに基づいてその検索の本当のねらいや目的を判断し、それに基づいて検索結果のランキングを決める検索、まさに意味的(semantic)な検索だ。〔参考記事: [Wikipedia]、[本誌過去記事]。〕

さて、理論よりも事実、事実。セマンティック検索エンジンPowersetは、2008年にMicrosoftが買収し、Bingの検索機能の強化に使われた。そして今年は2012年だが、それによってBingの検索シェアは上がったか? ノーだ。Sullivanも言うように、セマンティック検索だけでその検索エンジンが他より“圧倒的にベターに”なるわけではない。

WSJの記事は、今後もGoogleのセマンティック検索とキーワード検索は併存する、と言っている。“大きなアップデート”て、それのこと? いったい、どうなってるの?

実はその記事で重要なのは、GoogleのMetawebチームについて触れている部分だ。セマンティック検索を専門的にやっていたMetawebは2010年にGoogleが買収したが、そのインデクシングの対象が買収時の5000万から今では2億項目に増えている。2億はすごい数字だし、グッジョブ!と言ってあげたいが、でもまだまだWeb全体をカバーしているわけではない。

Web全体とは言わずGoogleだけに限っても、2億項目がセマンティック検索の対象になったぐらいでは、Googleの検索が変わった!という印象にはならない。あくまでもそれは、セマンティック検索という技術の、進歩の一里塚だ。まだまだ先は長い。

[ほかのニュースでは、Googleはむしろ、ダイレクトアンサー(天候、荷物追跡、フライト時間などなどのシンプルなアンサーが結果のトップに表示される…まさにBingふう)に力を入れているらしい。]

Googleの検索はつねに変化している。結果のランクを決めるためのパラメータもしょっちゅう手直ししているし、そうやって新しくしたアルゴリズムにGoogle Pandaなどと名前を付けることすらある〔関連記事〕。だから今回のも、WSJがでかでかと扱うほどのビッグニュースではない、と私は思う。

Google検索の本当にラジカルな変化はむしろ、検索結果の通常の青いリンクのほかに、Google+の検索…”Search Plus Your World”…を加えたことだが、むしろ、それに対する批判等から読者の目をそらすために、マスコミ向けには(とくに問題等のない)セマンティック検索を持ち上げているのかもしれない。

この変化(Google+の重視)に対しては、テク界隈でも批判は多い。たとえば先日は、Google+の元エンジニアリングディレクターJames WhittakerがGoogleの文化の変わりように幻滅して船を下り、なんと、古巣のMicrosoftに戻った(ほんとよ!)。

そのときのWhittakerの、せっぱ詰まった気持はこうだ:

Googleの公式の宣言では、“共有はWeb上で壊れている”、みんなの心がGoogle+に集まれば、それを修復できる、だった。

でも実際には、共有は壊れていなかった。共有は順調かつ健全に行われていたが、Googleはその仲間はずれだった。周りを見ると、誰もが共有をして幸せそうだった。Facebookからの集団移民は、実現しなかった。私の10代の娘ですら、二度とGoogle+を見ようとしなかった。私が彼女にデモを見せたら、“ソーシャルって製品じゃないわ、ソーシャルは人間よ、人間はFacebookにいるわ”、と言った。Googleという大金持ちの子は、自分が仲間はずれなのに気づいて、自宅でパーティーを開き、やり返そうとした。でも、誰もGoogleのパーティーに来ないので、今ではGoogleはGoogle+をもてあましている。

Google+よりも前のGoogleは、実験の失敗を認めるのが早かった。“コミュニケーションの未来”とうたわれたGoogle Waveも、流行らないと見るとさっさと引っ込めた。Google+も、Waveと同じく薄幸だ…伸びてる伸びてると宣伝されたが、それは自然な伸びではなく、あの、かつては簡素だったホームページも含め、あらゆるものにGoogle+を統合した結果だ。でも、GoogleはGoogle+を閉鎖しないだろう。Googleはソーシャルに社運を賭けている。最近では、Googleにスキありと見た大胆な起業家が、Googleに勝てる検索サイトを本気で目指しているほどだ。

皮肉なことに、Googleが持っている個々の技術はソーシャルで優位に立てそうなものばかりだ。Google Voice+Google Talk+Google Hangoutsは、Skypeが課金している部分も含めて無料化されると真のSkypeキラーになるだろう。Google+には、PicasaをFlickrキラーに変身させられる技術もある。それがAndroidと、そのインスタントアップロード機能に統合されたら、なおさらだ(しかし現状では、Google+とPicasaは奇妙な形で併存している)。

しかしGoogleは、Google+をFacebookと全面対決できる巨艦にするつもりでいる。個々の優れた技術だけでは、Google+はFacebook、Twitterに次ぐ第三位のソーシャルネットワークすらなれないだろう(三位はFoursquareかな)。

そして、そう、Googleのソーシャルまっしぐら路線は、批判が多いのだ: 本誌1本誌2、AppleボーイMG SieglerThe New York Times、Sarah Lacyおねえさんの個人ブログその1その2MarketingLandfocusontheuser、そしてこの記事。

そこで、こんなニュース*が載る。セマンティック検索、インスタントアンサーの改良、GoogleはみなさんがGoogle大好きになるための、すばらしい技術開発に、毎日いそしんでおります、と。〔*: これがWSJ紙の記事のネタになった、と思われる。〕

インターネットのみなさまへ: どうか、どうか、Search Plus Your Worldが検索をだめにした、なんて言わないでください。これからも、Googleを愛してください、という次第だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))